充実が重なった

「愛だの恋だの、そんなこと気にならなくなったんだ。」

今のパートナーと出かけに行った時のこと。
昔を振り返りながら、彼にそう言った。

『あぁ、私なんか変わった、成長したのかも』

愛や恋を語ることがいけないとか、そういってる人が未熟だとか、そういう話ではないけど、心の中では愛や恋と言っていた自分を幼く感じていた。

昔の自分がそう言っていたから幼いというだけではない気がして、よく考えてみることにした。

結果、「今がとても充実しているから」という結論だった。
これは世間で言われている彼氏彼女といったパートナーがいることを指す「リア充・非リア充」のリア充とはまた違うと思っている。
確かに私にはパートナーがいるけど、考えたら他にもいくつか思い当たることがあった。

まず、家族との関係が良好になったこと。
私は社会人一年目（当時20才）の1月に職場が異動になったことがきっかけで初めて実家を出て一人暮らしをすることになった。それまでの私は毎日家族の誰かにイラついて小さなことで言い合いをしたり、大きな喧嘩もしていた。本当に早く実家を出たかったし、家族のことが大好きという友人の話を聞いていてなぜそんな風に思えるのか不思議だった。
母から提示された一人暮らしの条件は「月に一度実家に帰ること」だった。
電車で30分の距離だったので可能ではあったが、当時は本当に面倒だなと思っていた。
しかし、一人暮らしをしていくうちに、今までは一切感じたことがない「家族がいない寂しさ」みたいなのを少しずつ感じるようになった。そして家族からのやさしさに触れたときにそれがやさしさだと気が付けるようになった。
今では月一の帰省も自分から帰りたいと思うようになったし、喧嘩も一切しなくなった。家族と会うと暖かい気持ちになり、そこで生まれる余裕が私の充実に繋がっている。

次に仕事とお金のバランスが良くなったこと。
新卒で入社した会社を1年半で辞めて転職をした。
私が足を踏み入れた会社は花卉業界(お花を扱う業界)のトップ企業で、クリエイティブなことが好きな私にはピッタリだと思っていた。私はブライダルフラワーの部門に配属され、最初の職場はそのエリアの中で売り上げがトップの店舗がある結婚式場だった。仕事内容は想像以上に泥臭いしとても忙しかったが、残業をよしとしない風潮もあり給料が多少低くても頑張ることができた。そんな時職場が異動になる。その異動先も同じような結婚式場だったが、そこは残業に対しての意識が低かったので繁忙期になると基本的な労働時間の170時間に毎月60～70時間を超える残業時間があった。職場に行くと胃が痛くなるようになり、食欲もわかず、毎日体力を使い切っているはずなのに家に帰ると中々寝付けない。そして短い睡眠時間でまた次の日を迎えるという日々を繰り返した。
「たかが残業で」と思う人もいると思うし世の中にはもっと悲惨な環境で仕事をしている人もいる。確かに自分が能力不足で残業することは私も納得がいくが、当時はなぜか他の人の仕事も押し付けられて「社員はみんなで終電まで」という空気感があった。
これは仕事に対する価値観の話だと思うが、給料が低いのに残業をさせられる環境にいることは私にとって限界だった。この仕事は何歳まで続けられるだろう？自分の好きだったことが嫌いになるくらいなら辞めたほうが良いと思うようになり、転職しようと決めた。
それから私は運よく価値観が合う会社に巡り合うことができたので現在は残業がほとんどない状態で前職よりも給料を貰えるようになった。これは次に説明する要因にも繋がるのだが、仕事とお金のバランスが良くなると時間の余裕が出てくる。

その時間を趣味や自分のことに集中するために使った。
その中で少しずつ成功体験を得て、自分に自信が持てるようになった。
以前までは全く自分に自信なんて持てなかったから、周りにいる自分に自信のある人が眩しくて嫌で恐怖だったし、比べてまた自信を無くしていた。
自分に集中する時間を持つということは、ある意味他人のことがどうでもよくなることなので私にとってはそのくらいのほうが丁度良かった。
それに、自信を持つことは簡単なことではないと自分に自信が持てるようになってようやく気が付いた。努力や継続したことが積み重なったから自信になるし、それには時間が必要だと分かった。
今は自分に自信がある人を見ても嫌悪感を抱いたり、私が自信を無くすことはなくなった。

ここまでのおさらいをすると、私が充実していると感じる理由は大きく分けて３つあった。家族との関係性が良くなったこと、転職をしてお金と時間のバランスが良くなったこと、そして自分に集中する時間を持って自信を持つことができたこと。
昔の自分に「充実しているか」と聞いてみたい。
答えはNOだと思う。
なぜなら昔の私は「生きるのしんどい」とか「死にたいわけじゃないけど、全部のことから一旦消えたい」とかよく思ってたし、友達との会話も「人生って大変・・」みたいな話が多かったのかもなと思う。
そんな私が今は大きな声で「充実してます」と答えられる。
しかも理由付きだ。

ここ２～３年で色々なことが変わっていく中、失敗したことや何度も思い出してしまうような後悔も沢山あるけど、それでも私が前向きに余裕と自信を持って今が充実していると言えることは成長出来ている証なのではないかと思う。