舞姫
割と内容はチープだと感じた
ドイツへ留学した官僚の豊太郎は、踊り子エリスと恋に落ちる
免官されエリスと暮らし始めた豊太郎だが、友人の相沢に、出世の道に戻るためにエリスと別れるよう諭される
豊太郎は葛藤の末、妊娠したエリスを残し帰国する
もっと簡単に言うと
大体将来有望な青年が美人であまり金を持っていない女性に言い寄られいい気分でいたけど身分違いなので捨てた
時代に翻弄された青年の苦悩
これだけ短い文章に幾つもの考察を抱かせる魔力があると、思った
明らかに上流階級の眼差しでありながら、誰もが持ち得る琴線に触れてくる、だから長年読み継がれてきたと思う
ページは少ないけれど、表現が美しい
硬い文章がむしろ太田豊太郎の微妙な気持ちを滲ませる
この本は高校で読むと男女で意見が分かれるものだそうだが、共感はともかく、もっと中学生とか高校生の時とかに読むべきだった
誰かと付き合い始めたらまた読むかなあ
エリート青年豊太郎は留学先ドイツで踊り子エリスと恋に落ちるが、幸せな時間は長くは続かない
舞台が異国に変わっても、国家を背負う男と貧しき美女の構図はアンフェアで涙を誘う、決められない男が決定権を持つ関係は「私と〇〇どっちが大事」的な結末となり、いつの時代もうまくいかない
結局仕事を取ったけど、私と仕事どっちが!?と言うような女性とは離れた方がいいのかもしれないし、そんなことを言わせてしまうような男性はお付き合いなんてしない方がいいんじゃないかと思った
豊太郎は皮肉にもエリスを自らの手で救い、自らの手で壊してしまった
ただただエリスが気の毒で、けれども豊太郎はこれまで親に決められた道を歩き、
周りからの期待に応えることが生きる意味でもあり、誇りでもあり、そこから逸れる事は今までの自分の人生を否定するような大きな恐怖があったのではないかと思う、
己の保身の為にささやかながらも幸せな日々を捨ててしまった愚かさ
きっとこの先どんなに出世し、豊かな暮らしを手に入れようと、時にエリスは豊太郎の記憶の中で舞い、罪の意識が彼を苛み続けるんだろう
己の保身のために周り傷つけるなんてカスですからね、まじで
漱石と対比ができるな、と思った
特に女性の扱い、漱石の場合は「こころ」に出てくるお嬢さんみたいに、女は男を選ぶ側
対して鴎外の場合は「舞姫」も「雁」も女は男に選ばれる側で、最終的には縁を切られてしまう側
明治日本の近代化の犠牲になった女性が少なくなかったことを、文学を通して強調しようとする意図が森鴎外にあったなら納得はできる
「愛情か、功名か」の二項対立にとどまらず、「功名」の方には「職」も「金銭」も「友情」も重なってくる
「倫理観」しか上乗せでしない「愛情」は負けるべくして負けたのかもしれないわね
どうしたところで豊太郎のエゴイズムは否定できそうにないし、共感するのは難しいだろうけど、ここに内在する主題は論じる価値があると思った
この本は読むだけじゃ意味がない、考えて誰かと話し合う必要がある
いつか
ありがとう
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