年間150本の作品を見るわたしが第92回アカデミー賞授賞式で感じた3つのこと
2020年初のアカデミー賞が日本時間2月10日に行われました。松たか子さんが日本人初パフォーマンスをしたり、カズ・ヒロさんが二年連続で「メイクアップ&ヘアスタイリング賞」を受賞したり、話題が絶えなかったですね。
はじめて最初から最後までのアカデミー賞を見た、映画好きで年間150本の作品を見るわたしが、第92回アカデミー賞授賞式を見て感じた3つのこと(+番外編)をご紹介します。
歴史が動いた最優秀作品賞
韓国映画「パラサイト 半地下の家族」がオスカーを獲りました。なぜここまでニュースになって話題にするの?と思う人も多いですよね。なぜなら、アカデミー賞初の外国語作品が作品賞に選ばれたから。
そもそもアカデミー賞とは、全世界にいる映画制作に関わるアカデミー会員の投票で賞が決まります。アカデミー会員は主にハリウッドの映画作品に携わるおじいちゃんが多いんです(もちろん、投票券を持つ会員は全世界におり、日本でも渡辺謙さんや新海誠さんが会員です)。これまではノミネートされても、英語で作られた作品しかオスカーは獲れていませんでした。
さらに、アカデミー賞の作品賞は人気だからといって受賞できるわけではなく、ノミネート自体も完全にアカデミー会員たちの好きなものばかり(ハリー・ポッターシリーズは1作もノミネートされていませんし、アベンジャーズも昨年の「ブラック・パンサー」以外ノミネートなしです)。
しかし、今回の「パラサイト 半地下の家族」は韓国映画。アメリカでの興行収入は良かったものの、そもそも韓国の人たちに向けて作った作品で、決してハリウッド向けではありません。
それなのに作品賞を受賞したということは、英語かどうか関係なく、良いものを作れば世界に評価されるということを証明したのです。これが歴史を変えた「パラサイト 半地下の家族」の受賞でした。
「どうせ、外国の映画はどんなに良いもの作ってもアカデミー賞の最優秀作品賞は獲れない」ということは、もう今後ありません。全世界の英語で作品を作らない映画監督たちが「よし!俺たちもアカデミー賞狙うぞ!」と気合いが入った受賞だったんじゃないかなと思います。
これから、狙うかどうかは別として、素敵な作品を作る監督が増えて、映画界がもっともっと盛り上がることを願います。
(もちろん、今回の「パラサイト 半地下の家族」の受賞は簡単なものではありませんし、しっかりとした国策もあるようです。まだまだいろんな障害はありますが、いつか日本も……!という希望が見えた受賞でした)
Netflixの大躍進
今回アカデミー賞にノミネートされた作品のうち、作品賞では「アイリッシュマン」「マリッジ・ストーリー」、ドキュメンタリー賞では「アメリカン・ファクトリー(オスカー受賞)」「ブラジル ー消えゆく民主主義ー」、長編アニメ賞では「クロース」「失くした体」がNetflixの作品です。
日本でも「サブスク」と呼ばれる見放題のサービスが定着し「◯◯限定配信!」と、登録者しか見れないオリジナル作品を配信することが多くなりましたが、そのひとつであるNetflixでしか配信されていない作品が、アカデミー賞に多くノミネートされました。
Netflixで配信して映画館で上映しない理由は、そもそも映画用の予算が組めない、出資者がいないなどが挙げられますが、ネットで気軽に作品が視聴できるようになってから、映画館で上映される作品だけが良いという観念がなくなったのだと思います。
さらに、Netflixも大きく予算を立ててアカデミー賞にノミネートされるくらいの素晴らしい作品を作ってきたという証。ネット配信だから面白くない、つまらない、安そうなんてことはありません。
現に、「マリッジ・ストーリー」は役者にスター・ウォーズのカイロ・レン役アダム・ドライバーを、アベンジャーズシリーズのブラック・ウィドウ役スカーレット・ヨハンソンを起用しています(契約金高そう……)。
アカデミー賞にノミネートされた作品を、映画館に足を運ばなくても見られるって、素晴らしいですよね。「マリッジ・ストーリー」と「失くした体」はめちゃくちゃ面白いので、ぜひ。
感謝を伝えるスピーチ
アカデミー賞は「どの作品、誰が受賞する?」と盛り上がる他に、スピーチも見所のひとつ。
環境問題や社会問題などに切り込む俳優(ホアキン・フェニックスなど)もいますが、感謝を伝えるスピーチ、みんなで頑張って作ったよ!というスピーチが多かった気がします。
助演俳優賞で念願のオスカーを獲得したブラッド・ピットはディカプリオ含めたクルーと家族へ(裁判沙汰でゴタゴタだったけどよかった!)、メイクアップ&ヘアスタイリング賞のカズ・ヒロさんは主演のシャーリーズ・セロンへ(感謝を伝えた瞬間、シャーリーズが涙を堪えるシーンがとてもよかったです)、そして、何より忘れてはいけないのは、「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督のスピーチ。
「最も個人的なことは、最もクリエイティブなこと」。これは、マーティン・スコセッシの言葉でした。私は彼の映画を見て、勉強したんです。
同じく監督賞でノミネートされていた「アイリッシュマン」のマーティン・スコセッシ監督を名指しで讃えました。同じ監督賞にノミネートされただけでも嬉しいと。観客はスコセッシ監督を讃えるためにスタンディング・オベーションで拍手喝采。スコセッシ監督は恥ずかしがりながらも涙ぐんでいたので、とても嬉しかっただろうと思います。
ジュノ監督はその後、タランティーノ監督をはじめ、ノミネートされていたすべての監督に感謝を伝えました。
その他にも、今年のアカデミー賞は助演女優賞ローラ・ダーン(マリッジ・ストーリー)の主演女優賞のレネー・ゼルウィガー(ジュディ 虹の彼方に)もキャストや自分の周りの人たちに感謝のスピーチをしましたが、ジュノ監督のスピーチはきっと、これからも語り継がれるはず。とにかく、素晴らしかったです。
番外編:中島健人くんの英語力
実は、「パラサイト 半地下の家族」の受賞と同じくらい驚いたのが、Sexy Zoneのメンバーでレッドカーペットのプレゼンターとして登場した中島健人くん。
驚いてツイートしたら、バズりました。
河北さんはニューヨーク出身の帰国子女なことは知っていたけれど、まさかまさか、中島健人くんがこんなに英語ができるとは思っていなくて、本当ごめんなさいだけど全然知らなくて感動しました!
わたしは短期だけど2度英語圏に留学に行ってて(4ヶ月と2ヶ月)、アウトプット鬼のようにして今は問題なく日常会話ができる程度だけれど、中島健人くんはデビューしたてから人気だし忙しそうだし、なのに(留学などで)休んでいるようには思えなくて……。
と呟いたら、ファンの方々がこんなにたくさん教えてくれました。
ほお〜……!もともと顔はめちゃくちゃかっこいいと思っていたのですが、勉強家で頭の回転が早いとは……!
英語学習者の第一歩って、まずは自分の気持ち、言いたいことを今!って時に言えるようになることだと思うんですよね。
河北さんに「You look like a Hollywood Star! So beautiful!(ハリウッドスターのように綺麗だね!)」と咄嗟に言っていたのを聞いて、びっくりしました(笑)これはすごい。なかなか日本で練習してても、パッと相手に伝えるのって本当難しいんですよ。「伝わらなかったらどうしよう……」「聞き取ってもらえなかったら……」と不安にもなるし。
レッドカーペットという超重要なお仕事でプレッシャーもあったのに、自信に満ち溢れ、見事インタビューをやり遂げた中島健人くんは、とても尊敬します。素晴らしい!
Filmarksさんに最大の感謝を伝えたい
今回ありがたいことに大好きなFilmarksさんのおかげで、パブリックビューイングの招待券をいただき、大きなスクリーンで見ることができました。
毎年一人部屋に篭りながら、小さいスマホの画面で一喜一憂していたことを思い出すと、今年は大きな劇場で主要な賞が発表される度に、おぉ!と盛り上がったり拍手をしたり、素晴らしい体験ができました(そして、めちゃくちゃTwitterで盛り上がってしまった)。
今回、こう言った機会を与えてくださって、本当にありがとうございます!本当に感謝しかないです〜〜〜!
映画は素晴らしい
今回アカデミー賞にノミネートされていない作品の中には、まだまだたくさんの名作が眠っています。
残念ながら時間が限られているため、すべての作品を見ることはできないけれど、今回アカデミー賞の授賞式を見たことで、製作者の思いや俳優たちが映画に懸ける思いがひしひしと伝わってきて、「映画っていいなあ」と改めて思いました。
とにかく、現在公開中の「パラサイト 半地下の家族」「リチャード・ジュエル」「ジョジョ・ラビット」、これから公開される「スキャンダル」など、気になる作品は全部見ます。
映画は人生を変えます。私も一本の映画に人生を変えられました。だけれど、人の感性はさまざま。人気がないから記憶に残らないなんてことはありません。ランキングに騙されることなく、少しでもいいなと思った映画は、ぜひ足を運んだり手にとってみてください。
私もこれからたくさんの映画を紹介していきたいと思います。