“持っている”人に勝つためにするたった1つこと|「キセキ -あの日のソビト-」レビュー
世の中には願った夢を叶えられる人と、叶えられない人と、偶然叶えられちゃった人がいる。
夢を叶えられる人とは、コツコツ努力をしてきた人だ。「プロサッカー選手になりたい」「パティシエとして自分の店を持ちたい」「社長になりたい」自分がなりたい夢のために、小さな努力を積み重ねてきた人だ。
世の中には夢を叶えられなかった人もいる。叶えられた人と叶えられなかった人の差に、私は努力とか実力とかは関係ない。違うのは、“持っている”か、そうでないか。
たとえば、ある人がパイロットを目指していたとする。30年前は日本でパイロットになるなら、日本航空か全日空を狙っていただろう。ただ、今はPEACHもソラシド・エアもAir Asiaもある。夢が叶えられるかどうかはタイミングも重要で、叶わなかった人は、タイミングが悪かったのだ。
ただ、そのどちらでもない人が世の中に存在する。思いがけず叶っちゃった人だ。私は、新卒入社で半年で営業成績トップになった。「会社で一位を取りたい!」と思って取ったわけではない。本当にたまたま、やっていることと私の実力が見事にマッチングして、会社で一位を取れてしまった。
もしかしたら、入社時に「会社で1番の成績をあげたい!」と思って入社した人もいるかもしれない。私は、それを簡単に叶えてしまったのだ。
世の中にはそういう人が、実は溢れている。歌う気がなかったのに偶然歌ったら絶賛されて売れた歌手や、部活で選んだスポーツで全国制覇してしまう人とか。
彼らは自分で自分を褒めない。頭にハチマキを巻いて夢に向かってコツコツ努力した記憶もないから、「あ、できちゃった」と驚いているかもしれない。陰でたくさん努力をしても叶わない人もいるのに、当の本人は「運が良かった」で終わらせる。だって彼らは“持っていた”から。
夢が叶っちゃった彼らに、同じ夢が叶えられなかった人たちの気持ちがわかるはずもないし、理解する理由もない。そして、叶えられなかった人が妬む必要もまったくないのだ。だけど、やっぱり人間だから、わたしだったら憎んでしまう。
「キセキ -あの日のソビト-」は、大人気歌手GReeeeNの実話に基づいたフィクション映画だ。主演は松坂桃李と菅田将暉。GReeeeNのメンバーには成田凌、横浜流星、杉野遥亮と、今をときめく若手俳優たちが勢揃いした。
松坂桃李はGReeeeNのプロデューサーでHIDEの兄JIN役を、菅田将暉はGReeeeNのリードボーカルHIDE役を演じた。
ここで先ほどの話と繋げると、JINは夢が叶えられなかった人で、HIDEは夢が叶っちゃった人だ。
JINはもともとメタルバンドを組んでデビューしたが売れず、弟が送ってきたデモテープを聴いて自分の音楽活動ではなくGReeeeNをプロデュースすることになる。
一方、HIDEは歯科医師兼大人気ミュージシャン。親が希望した医者にも、JINが叶えたかったミュージシャンにもなった。音楽に関しては趣味ではじめたのに、才能があって売れた。
JINは音楽で食べていきたかった。親は医者になれと言ったのに、音楽の道に進んだ。だけど、HIDEは医者にもなり親孝行しつつ、音楽も成功させた。
(もちろん、医者は努力が必要だけれど)そう、HIDEは夢が叶っちゃった側の人間なのだ。今風で言うと、いわゆる「持っていた」人間と言った方が近いかも。
「努力は人を裏切らない」は一理あるかもしれないけれど、どんなに頑張っても“持っている人”には敵わない。
もちろん、その努力は人生のどこかで必ず役立つはずだから、努力に意味はないとは言わない。けれど、やっぱり、投手になりたいと思って小さい頃からコツコツ練習をしてきたのに、同じ高校やチームメイトに大谷翔平がいたら、エース投手になれるのか。
「キセキ -あの日のソビト-」は、夢を叶える話だ。だけど、それと同時に、私たちに「どんなに頑張っても世の中には“持ってる人”と持っていない人がいて、“持っている”人には勝てない」と言うことを教えている。
では、持っていない人が持っている人に勝つにはどうしたらいいのか。答えは一つ。別のフィールドで戦うことだ。
実際に、JINはそれを実践した。JINはプロデューサーになり、今はGReeenをはじめさまざまな楽曲を手掛けて有名になった。
全員の夢が叶うわけじゃない。だけど、別のフィールドで戦えば、勝てる。同じ場所でチャレンジしたい気持ちもわかるけれど、いかに別のフィールドを見つけて、移れるかが勝負なのだ。
GReeeeNがJINのもとで、これからも素敵な音楽を生み出してくれますように。