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『鬼滅の刃 柱稽古編』永遠の意味 知らぬ君に
「答えを示すときだ」 この歌詞だけで泣ける。
他エントリーの記載と矛盾するが、『鬼滅の刃』のアニメを見ている人が原作未読とは思えない。私たちは原作を読んで「永遠の意味」を知っているわけだが、それを踏まえながら『鬼滅の刃』のストーリー構成について考えてみたい。
(たぶん日本中で、いや世界中で同じことを考えている人が大勢いるとは思うけど)
重要な価値要素は「生」
『鬼滅の刃』は長い連載期間をもつ作品なので、作品中で様々な価値要素が取り上げられている。愛、正義、勇気などに加えて最も重要な価値要素に位置付けられているのが「生」だと思う。
登場人物たちの「生」の価値の変転は次のようになるだろう。
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「生」の対極が「死」、死んでないが無気力にただ生きているだけが相反の状態。例えば、もし物語の冒頭で禰豆子まで死んでしまったなら、一人残された炭治郎は生きる気力を失っていたかもしれない。
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これらの価値の変転に対して、ストーリーを極限まで展開させるために必要な状態が「マイナス中のマイナス」で、『鬼滅の刃』はまさにここが出発点になっている。それは「絶望の中の生」だ。
家族は殺されてしまった
一人生き残った妹は鬼になってしまった
その妹に喰われそうになる
妹を助けたいが方法がわからない
妹が人を襲わないようにしなければならない
鬼狩りがあらわれて妹を殺そうとする
まさに絶望的な状況だ。しかし、その絶望に屈することなく、炭治郎は生きる気力を失わず前に進もうとする。こうしてストーリーが展開していく。
『鬼滅の刃』の主要キャラのほとんどが、このような絶望の中の生を経験し、死んだ方がマシだと思うような状況に陥りながらも、そこから這い上がって生きることを選択する。
生きたいと願う、愛する人を守りたいと思う、これら人間としての根源的欲求を追い求める登場人物の姿が読者・視聴者の心を深くえぐり、共感を呼ぶのが『鬼滅の刃』の特徴だ。その思いが根源的であるからこそ、この物語が未曽有の大ヒットになったのだと思う。
忌むべき生
敵として登場する鬼たちは既にマイナス中のマイナスに陥っている。それが「忌むべき生」だ。
かつては人間だったが、今ではその人間を殺し、食らうことでしか生きられない
日の下を歩くこともできない
自分よりも強い鬼に絶対的な隷属を強いられる
鬼たちはこの忌むべき生からプラス価値である通常の「生」に戻ることはできない。行きつく先は「死」のみだが、鬼たちにとっては、特に物語後半に登場する上弦の鬼たちにはこの死こそ救いであるような表現が何度か登場した。
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こうしたストーリー展開の妙で、敵である鬼たちにまで読者の共感を呼び起こす力を持っていたことも『鬼滅の刃』の魅力の1つと言える。
永遠の意味
繰り返しになるが、原作を読んだ私たちは『鬼滅の刃』で語られた永遠の意味を知っている。もし万が一、原作を読み終えてない人がいるなら急いで書店に走ってほしい。こんなブログを読んでいる場合ではない。
さて、その「永遠」を言語化・可視化するとこうなる。人間にとって生と死は不可逆だが、そうした物質的な生死を超越したところに永遠の生があるというのが『鬼滅の刃』のメッセージだ。
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わかりやすい例は無限列車編で死んだ煉獄さんだ。煉獄さんの「心を燃やせ」は炭治郎たちに受け継がれ、彼らを強く支えている。
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煉獄さんの思いは無一郎にも受け継がれている
これが永遠の意味で『鬼滅の刃 柱稽古編』OPの歌詞に書かれている通りだが、詳細な展開は原作コミックで様々に表現されているので、それとこれから映像化されるアニメをあらためて見て味わってほしい。
アニメの柱稽古編が原作のどこまでを描くのかは不明だが、鬼舞辻󠄀はついに自分の最期が来るとは思いもよらず産屋敷邸へやってくる。
永遠の意味 知らぬ君に 答えを示す時だ
最終決戦に向けた盛り上がりをひしひしと感じる。これからのアニメシリーズが楽しみである。
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