『全修。』第1話の舞台「2019年」の謎
ヤバい、『全修。』の物語で主人公・ナツ子に夢中だ。この物語で彼女がたどるこの先の人生が気になって気になって何も手につかない。どうやら私に40年ぶりの推しが現れたようだ。
それはさておき、『全修。』第1話には解くべき謎がある。なぜ物語の舞台が2019年なのかだ。
(本作第1話のネタバレを含みます)
※前回の内容はこちら
『初恋 ファーストラブ』
『全修。』の第1話で主人公・ナツ子が倒れるきっかけとなった弁当の日付が「2019年9月13日」だった。
そのとき制作中だった映画『初恋 ファーストラブ』のキャッチコピーは、
となっている。
この文の意味は少しわかりにくいが図示すると下記の通りだ。この映画の時間は流れているのだろうか? それとも止まっているのだろうか?
主人公の名前に含まれる「ナツ」、そして映画のキャッチコピーの「夏」、主人公・ナツ子が倒れた「2019年」、これらが『全修。』第1話のキーワードだ。
2019年の夏
2019年の夏、私たちにとって決して忘れることのできない大事件が京都で起きた。無念にも才能を出し尽くす機会を奪われ、非業に倒れたクリエイターたちの時間は止まったままだ。彼らの魂はどこへ向かうのだろう?
そこで思い出したことがある。昨年放映された『響け! ユーフォニアム3』の最終話、他ならぬ京都アニメーションの手によってつくられた作品だ。
そこでは、2019年の夏に倒れ去ったクリエイターたちが物語世界へ生まれ変わった可能性が、他ならぬ京アニ自身の手によって示されたと解釈することもできると思う。
もしそうだとすれば、生まれ変わったその世界でも彼らはきっとクリエイターを志すだろう。それを思い描いたとき、新しい世界では今度こそ創造性と才能を発揮し尽くせる人生であって欲しいと私は願わずにいられない。
クリエイターたちへの賛歌と鎮魂
奇しくも、『全修。』の主人公・ナツ子も作中の2019年の夏に倒れた。だからといって彼女が京アニのクリエイターたちの生まれ変わりを象徴しているとまでは言うつもりはない。
ただ、『全修。』の物語の中で、ナツ子は紛うことなくクリエイティビティの象徴であり、転生した新たな世界でもナツ子はクリエイターであり続ける。そして、これからもその才能を物語の世界でいかんなく発揮していくだろう。
クリエイターが存分に才能を発揮し続けられる世界は素晴らしい
『全修。』の舞台設定「2019年」には、そんな願望と祈りが込められているとみることができるのかもしれない。