『天穂のサクナヒメ』を「1話切り」サンプルとして分析してみる
このnoteでは『SAVE THE CATの法則』を中心に、ハリウッド映画の創作論を多少強引に日本のアニメに当てはめてきたが、こうした借り物ではなく、実際に日本のアニメ制作に関わったスタッフが別の創作論に言及していたので、それを取り上げ、具体的な作品で分析をやってみたい。
(本作第1話のネタバレを含みます)
物語の創作論いろいろ
2024年夏アニメとして放映された『天穂のサクナヒメ』でシリーズ構成と脚本を担当した花田十輝氏が興味深いツイートをしていた。(オリジナルのリンクが分からなくなってしまったので、メモ用にとっておいたキャプチャを張る)
『天穂のサクナヒメ』の第1話が「この構成」になっているというのだが、それは「DKの汎用ストーリー構成」と呼ばれる序盤の部分だ。(詳細を知りたい方は末尾のリンクから探して欲しい)
第1話の構成にあたる部分の概略をあげると、
となり、ここまでをシーズン物のアニメ第1話で描くのが定番手法だと花田氏は述べている。(特にオリジナルアニメの場合)
こんなフレームワークがあったとは。これは興味深い!
実際に制作に関わったスタッフが作品名を挙げているのだから、これは信用できる。そして、私の当面の関心事である「オリジナルアニメの1話切り」実現に向けて、上記の構成が参考になるかもしれない。
※「オリジナルアニメの1話切り」については下記エントリーを参照してください。
というわけで、『天穂のサクナヒメ』の第1話を上記構成に照らし合わせて分析してみたい。
『天穂のサクナヒメ』第1話の内容
1.登場:主人公について書く
物語冒頭に登場する小柄な女の子が一目で主人公と分かる。とても元気だが、わがままで傍若無人な雰囲気がある。酔っぱらっているようで、自分が神であること、子供ではなく大人であることを主張する。
2.背景:物語の世界設定を示す
人が住む世界とは別の神が住む世界であることが示される。巨大な姿の主神を中心に複数の神々がいることが分かる。
そして、人の世界と神の世界は「天の浮橋」が現れることでつながり、現に主人公が住む世界に人が紛れ込む。
3.発端:異変、事件を起こす
紛れ込んた人が騒ぎを起こし、宝物庫に入り込み、主人公が献上した貢物をダメにしてしまう。
4.目的:問題や課題を明確にする
騒ぎの責任を問われる主人公。主神から追放を言い渡され、鬼が住む島へ行き、そこで鬼が生まれる理由を探るように命じられる。
その島はかつて主人公の両親が出会い過ごした島であり、そして消息を絶た場所でもある。その両親を探すのも主人公の目的だ。
5.初動:主人公の決意と覚悟を示す
行きたくないと泣き言を繰り返す主人公。しかし、島流しのように出発する。
さて、サクナヒメの第1話は以上の通りだ。私が不慣れなことともあり、ちと分析にしくいので、制作した花田氏の意図とずれているかもしれない。
やってみて感じたのは、このフレームワークはあくまでも物語の序盤で示すべき項目を挙げているだけで、物語の時間軸とは無関係な可能性だ。
一方で、このnoteで繰り返し取り上げてきた『SAVE THE CATの法則』に登場するBS2(ブレイク・スナイダー・ビート・シート)は、脚本のページ数付きで時間軸順に書かれている。そのため、個人的には慣れていることもあり、物語の分析はBS2の方がやりやすいと思う。
作品の評価は
今回取り上げた『天穂のサクナヒメ』については、当時惰性で見ていた多くの作品と同じく、私は途中(第4話の中盤まで)で視聴をやめてしまった。
主な理由は主人公にも、その目的にも共感が持てなかったからだ。ただし、これはあくまで私の個人的な好みに合わなかっただけで、本作の出来とは無関係だ。作品レビューの星だけみると、かなり高評価がついているので、本作を楽しんだ人は多くいるのだろう。
そして、本エントリーを書くにあたり、途中で視聴を断念した第4話を見直そうと思ったのだが、やっぱり最後までは見られずにやめてしまった。結果として、本作は私の好みに合わなかったわけで、第4話まで粘ることなく「1話切り」して問題なかったことが再確認できた。
ということで、2025年冬アニメの開始にあたり、特にオリジナル作品を視聴する場合は各作品の良否を見極める手法としてBS2(ブレイク・スナイダー・ビート・シート)フレームワークを採用し、「1話切り」を敢行しようと考えている。
※以下、参考
https://twitter.com/game_sennin/status/177208988878075911