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楽園

それはどこにあるんやろ。
どこかな、ここかな。
あの日かな。今かな、これからなんかな。
あの日に置き忘れてきたもの、今も待っているもの?
あの日があって、今があって、そしてこの先に?
あの日があるから、今ここに居て、居てしまって?
ぐるぐるぐるり、うろうろ惑い、惑いながらの日々で、
楽園の反対の場所は戦い? 日々は戦い?
孤独や喪失感を胸に、それでも生きること生きてくことを考えたり。
 
GW中のある日の午後、知らない番号から電話があった。
「おお、Momo、お前俺のこと誰かわかるか。ひさしぶりやのぉ。元気にしとんのか」
SASUKEオールスターズに居てもおかしくないような見た目のおっさんからだった。古い漫画だが『嗚呼!! 花の応援団』もしくは『ハイスクール! 奇面組』のキャラクターみたいなおっさんである。
失礼、現在は某地方で消防士をしている学生時代の劇団の先輩だ。
「すみません。わたしLine登録してへんかったっす。なんでやろ。劇団のグループLineは登録してたんすけど」「シバくぞお前(笑)」
この人当時の「座長」。
 
続いてLineがきた。
同じ劇団の同期の大好きな友人からだった。
「電話来た? Momoも行く? 会いたいな」
今も昔もダイナマイドボディと絶対的女帝感。
セクシーでありながら今は子供2人の肝っ玉母ちゃんであり某市の学校のPTA会長をしている。
 
そんなこんなで、
集まれそうな皆で寄って行こうということになったのが、
当時の劇団の後輩がオーディションに合格し「勇者たち」のひとりとなり、出演する公演だった。
 
ここにもたまに書く後輩だ。
会社勤めを辞めて演劇の道に入り、
演劇で行きたいから学校の先生になって、演劇を続けている。
さまざまな舞台に立つ彼がこの度(以前に続いて)出演を果たしたのは、
関西小劇場が誇る「南河内万歳一座」のこの度の本公演だ。(ちなみに二度目の出演)
 
「でもあいつほんと芝居へたっすよ。わし、毎回一緒に呑んでわぁわぁ言います」
「あほかお前。俺らもうおっさんおばはんやぞ。
集まってわいわいやれたらええねや。芝居をだしに皆で呑めたらええねん(笑)」
 
そんなこんなで集まった。
座長、女帝、
さらに、
座長の軍師のようなインテリ洒落男伊達男(この人ともよく呑みました)な兄さん、
ロマンチストでプレイボーイででもひたすらにやさしい宝塚歌劇を愛する兄さん。
会場でも、懐かしい顔に会った。
だいぶ下の、今はばりばり営業マンとしてやっているこちらも演劇青年だった男の子。
劇団の上の上の先輩、随分随分上のOBで神主となられたすごい親分。
随分とまあ濃いメンバーの集合である。
 
満員御礼の大千穐楽を観劇し、その熱のまま、
あれやこれや好き勝手に感想やら思い出話やらをしながら歩いて通天閣下、
どうってことのないような店に行って呑んだ。
あいかわらず、話が嚙み合っているようないないような。
お互い好き勝手しゃべっているような、
でも〝あの頃〟の人間関係の忖度や気遣いはあり、
でもでも皆、もう若くなくなり、
そこが、「うまくなって」いたりもいなかったりもして、
わたしは嬉しくておもろくて楽しくてずっとけらけらへらへら笑っていたような気がする。
当時からどちらかというと濃いメンバーが多かったからわたしは前へは出ないようにつとめていた。
せやけど舞台や芝居や演出や台本の内容に関しては「忖度できない」人だったし、今回もそうだったような気もする(笑)
 
皆変わっているけれど変わってへんなあ。
そりゃそうだ、人間は、変わらない。
あ、この言い方もちょっとちゃうな。
変わる、めちゃ変わる。
でもなんていうか、なんていうのかな、
いい意味でもわるい意味かもなところも含め、
「ここ」「これ」ってあって、
「だからこのひとはこのひとや(ねんなあ)」って(笑)、wじゃなく笑があって、
そんな、大きな意味で言うと愛しさ、に、近いようなもの、を思わされた。
 
正直な話。
同窓会的なものは好きでないし得意でない。付き合いもよくないほうだと思う。
(いや、現実的に予定がどうしてもとかもマジであるのを含めてだけど)
現実や俗世の話、皆の近況報告や日常の話が嫌なのではない。
好きかと言われたらわからない。けれど嫌とかは全くないし、ぐっと来もするが。
でもこうしてこんな機会に集って、集えて、
「変わったけれど、変わらない」ことに、だから、笑う。
時に煽ったり、ツッコミいれたり、振られたらボケたりツッコんだりしながら、ずっと笑っていた。
帰り、皆から次々に寄せられるグループLineでの御礼と「またね」の言葉、
大人たちはちょっと酔うてるからかちょっとエモーショナルな感じにもなったりして、そこにもなんだかぐっと来たりもして。
正直「ん?」ってことがなかったかと言われるとなかったとは言えない時間たちだったけれど、それも含めて、なんだか、ぐっと、じぃんとした。
その後はなんだかめっちゃバテて、翌日になって、つまり今日仕事中に、じぃんとした。
 
芝居は、孤独や喪失感などをモチーフにした、
万歳一座特有(これいい意味最高の賛辞)のわいわいがちゃがちゃの群集劇。尼崎JR脱線事故をモチーフにした作品だった。
明るさと孤独とガチャガチャわちゃわちゃとキラキラ。
座長である内藤裕敬さん(作・演出家)の書かれる詩的なセリフが、
役者の声で、肉体で、発されることで、きらきら光り、我々客席の者の、琴線に、触れる。
青臭いあの頃も散々皆で言っていたのだが、
「映像じゃなく、舞台の、演劇の醍醐味に触れられる幸せ」
ってのを、また、改めて、感じられる劇団で
だからやっぱり、「ああ、小劇場ってええな。小劇場の良さをぎゅっとくれるこの劇団が好きやな」って思わされた。
劇団の方々が歳をとられても、若い外のメンバーたちとの座組になっても、だ。観られてよかったなあ、と思った。

居酒屋「最後の楽園」に集う皆の、きもち、あの日と今と「これから」。

モチーフに散りばめられるあの映画、歌、あの花。
 
置いてきたもの。置き去りのまんまなもの。あの頃あの日と今。

日々。楽園。戦い。「続く」、皆の。

観終わって呑み屋への移動中、口々に好き好きに感想を言う皆。
ああ、これや、これやったなあ、って、じぃん。わたしも思わず言うてしもた。
 
「今日、これを皆で観られてよかったなあ、って思いました」
 
ほんま、ほんまの、気持ちです。

( 南河内万歳一座 「楽園」 2023.5・28@一心寺シアター倶楽 )


きのうのつぶやき。

出演した後輩のこと。

◆◆◆
以下は、すこしだけ自己紹介 。
よろしければお付き合い下さい。
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構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。

大衆芸能、
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、各種文章やキャッチコピーなども、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

演劇鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)などの鑑賞と、学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)経験などを経て、
某劇団の音楽監督、亡き関西の喜劇作家、大阪を愛するエッセイストなどに師事したり。
からの大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。

舞台と本と、やはり劇場と人間と、あ、酒も愛し、人間をひたすら書いてきて、書いています。

lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。

その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中です。
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あ、5月1日から東京・湯島の本屋「出発点」で2箱古本屋も、やってます。

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関東の出版社・旅と思索社様のウェブマガジン「tabistory」様では2種類の連載中。

酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在17話)と
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旅芝居・大衆演劇関係でも、各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、YouTubeちゃんねるで過去映像が公開中です。
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