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2023年4月の記事一覧

地図と風景、昔と今とこれから

少し前に書いた「近所の古本屋が閉店(一時休み?)」フェアで大量買いしたうちの1冊、なんだか気になって手に取った本がよかった。 『京都みちくさの景色』(文・中村勝 写真・甲斐扶佐義 京都新聞社 1999年) 〝何十年もひとつの町に住みつづければ、人は何枚もの地図をもつことになる〟 それぞれの場所とまつわる人々、記者の目と写真家の写真でつづった50景。 ガイド本じゃない。能書きっぽくもない。変に「どや!顔」も滲んでいない。 ノスタルジーに浸りすぎることはない。 そんな文で(写真

小さき者たちの

〝世界をうごかしてきたのは、いつも、小さき者たちだった〟 〝自分たちの目の前にはいない世界の片隅に生きる者たちへの想像力が、いま試されている〟 『小さき者たちの』(松村圭一郎・ミシマ社)に、うーむ、と唸る。 あらためてこう言葉というか文字にされることで、しずかにも、どかっ、と肚に響く。   最近気に入っている書店(の、ひとつ)にて 先日読んだ『断片的なものの社会学』(先日のつぶやきはコチラ)の隣に置かれていた。 なんだか気になり思わず手に取ったのは、 このシンプルだけれど考え

なゆかとサトラピ

ここ最近2冊のコミックエッセイを読んだ。 コミックエッセイというのはおかしいかな。 でも間違ってはないかなあ、とも思う。 ひとつは、峰なゆかの『AV女優ちゃん』。 それまでの人生からデビューから業界のいろいろを描いたエッセイ漫画。 もうひとつは、フランスのイラストレーターで漫画家マルジャン・サトラピの『ペルセポリス』。 イランで生まれ、イラン革命そしてイラン・イラク戦争を体験し、大人になってゆく自伝的グラフィックノベル。 生まれた国も、育った時代や環境も違う2人が描いた作品は

イワシの頭 川上未映子『ヘヴン』

のっけから嫌な話をするがここ最近いやがらせにあった。 ちいさなものが重なったりした。 「でもこう感じるのもわたしの主観やもんなあ」とも頭の中で考えてしまっていた。 そもそも慣れている、とも思ってしまっていた。 ちいさいころは容姿というか体のことや他のいろんなことを理由に除者にされることが少なくなかった。 そうしていろいろ自分を守るためやつくるためにやってきたいろいろの結果、それでも嫌な目に遭ったり「いろんなこと知ってる人」という風にしか見られなかったりもして悔しさを感じたりも