ロスト・ケア
葉真中顕氏の小説を読むのは、『絶叫』に次いで2作目。読書好きの私の中では決して多くは無いが、今のところ打率10割。なにしろ展開が面白い。構成が面白い。テーマが面白い。
面白いという言葉は、今回の作品には不謹慎なので、言い換えれば、とにかく読む手を止められない。
要介護度の高い老人を死に至らしめ、なおかつ誰にも事件と認識されることすらない。用意周到な完全犯罪によって、家族や被害者自身が救われたように、読む側にも見える。善なのか?悪なのか?
被害者遺族の視点、追う検事の視点、犯人の視点。語られてはいないが被害者である老人本人の視点。くるくると立場を乗り換えて読み進み、その都度、分かる気がする。それぞれの思いが理解できる気がする。
ミステリーに分類されているのだから、事件やら捜査やら謎解きやら、あって当然の要素は十二分に堪能できる。だから面白い。でも、重い。非常に重いのだ。こんなにも心苦しくさせられるのは、自分たち夫婦の老いた両親が存命中だからか。今すぐにでも同じ問題に直面する可能性は、10年前の自分の100倍はある。
核家族化が進んだ現代とはいえ、多くの人が避けては通れない問題なのではないだろうか。家族を持つすべての人が、一度は読むべきなのではないだろうか?