薬膳空想物語『七十二候の食卓』
「春分」
雀始巣 ~すずめ、はじめてすくう~ 十皿目~
春分は太陽が真東から昇って真西に沈み、昼と夜の時間がほぼ同じ長さになる頃。
そしてその初候は、かわいい雀たちが枯れ枝を集めて巣作りを始め、家の軒下から時折顔を出しては勤しんでいる姿を見かけて、ほっこりした気持ちになる。
先祖を供養する「春の彼岸」を迎え、
その昔この世は東、あの世は西にあるとされ、彼岸の頃はあの世とこの世が通じやすくなると考えられ、
この世に生きている私たちが数々の煩悩に打ち勝ち、悟りの境地に達することができるように「仏道の修行を積む期間」の意味もあると言われている。
では具体的にその「修行」とは何ぞや。
仏語である「六波羅蜜(ろくはらみつ)」(※1)を実践すべき期間と言われている。
この六波羅蜜は簡単にいうとお釈迦様がたくさん説かれた善行を六つにまとめたもので、いわゆる幸せになるための六つの修行が詰まったものだ。
(※1)六波羅蜜の内容
波羅蜜とは悟りに至るまでの修行という意味を含みます。
お釈迦様はお経の中でこのような善行をすると幸せになれますよ、と説かれています。
お経は7000巻き余りものボリュームがあるため、6つにまとめたものが「六波羅蜜」と言われています。
1.布施(ふせ):「親切」という意味。困っている人がいたら手を差し伸べられているだろうか。
2.持戒(じかい):「言行一致」という意味。約束を守れているだろうか。
3.忍辱(にんにく):「忍耐」という意味。怒ったり、腹を立てすぎたりしていないだろうか。
4.精進(しょうじん):「努力」という意味。精を出して努力をしているだろうか。
5.禅定(ぜんじょう):「反省」という意味。自身の言動や行動を反省できているだろうか。
6.智慧(ちえ):「修養」という意味。人徳を積み、人格を磨いているだろうか。
どの項目も、人間としてふつうに生きていく上で至極当たり前で大切なこと。
それぞれ真髄をついていて、自分的にはできてない項目がほとんどである。
春のお彼岸、秋のお彼岸とその意味を調べてみると実に奥が深いものであることに気づく。
白檀の香りが流れるのどかで暖かな日。
花と線香を供え、手を合わせる。
ご先祖様に挨拶をする。
あの世からの使者として、頭上をさえずる雀たちからも
「鍛錬せよ、鍛錬せよ」と言われている違いないと心に留めておこう。
『おはぎ』(12~15個)
材料:小豆300g 砂糖300g 天然塩 適量 餅米2合 うるち米1合
・小豆はザルにあけて洗い、鍋に入れて豆の高さより3㎝くらい上まで水をいれて中火~強火で煮始める。沸騰したらコップ一杯の水を差します。
・灰汁を取りながら強火の中火にかけ2~30分して豆が膨らんできたら一旦ザルにあけ渋抜きをする。
・お湯を静かに切ったらまた豆を鍋に戻し、新しい水を入れ、豆が躍らないように静かに煮る。お湯から豆が出てこない程度に見て、少なくなったらその都度水を足す。豆の皮がむけるまで煮る。
・鍋を傾けてゆで汁を流し、蛇口からゆっくり水を注ぎ濁った水が流れて全体が透明になるまで注ぐ。
・ザルにあけて水を切り鍋に戻したら中火にし砂糖を加える。
・水分があるうちは焦げないので、ぽってりしてきたらヘラで豆をつぶしながら餡子の固さにしていく。ヘラですくってぽたっと落ちるくらいが目安。仕上げで天然塩を少し入れて味を整える。
・餅米とうるち米を合わせて研ぎ30分ほど置いてから普通モードで3合メモリで炊く。炊いたら半突きする。
・約50gほどの餡子を手のひらに伸ばして広げ、その中に突いた丸めた米を入れ包んで仕上げる。
小豆: 食味/甘・酸 食性/平 帰経/心・小腸
砂糖: 食味/甘 食性/涼 帰経/脾・胃・肺
餅米: 食味/甘 食性/温 帰経/脾・胃・肺
●食味:酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味([かんみ]塩からい味)を五つに分けたもの(五味ともいう)
●食性:熱性・温性・平性・涼性・寒性と食物の性質を五つに分類したもの(五性ともいう)
●帰経:生薬や食材が身体のどの部分に影響があるかを示したもの。ここでいう五臓は「肝・心・脾・肺・腎」の事だが、単に臓器の働きにとどまらず精神的な要素も含まれ、ひとつひとつの意味は広義にわたる。