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読書感想文『最後のトリック』深水黎一郎著
本書は2007年4月に講談社から『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』として刊行されたものです。文庫化にあたり改題し、全面的に加筆・修正を行いました。
あらすじ
「読者が犯人」というミステリー界最後の不可能トリックのアイディアを、2億円で買ってほしいースランプ中の作家のもとに、香坂誠一(こうさか せいいち)なる人物から届いた謎の手紙。不信感を拭えない作家に男は、これは「命と引き換えにしても惜しくない」ほどのものなのだと切々と訴えるのだが・・・。
ラストに驚愕必至!この本を閉じたとき、読者のあなたは必ず「犯人は自分だ」と思うはず!?
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感想としてはまずは2つ
まぁ、そうなるか。
っていうのと
苦笑い(にがわらい)ものだな。
ってことですかね。
うん。たしかにアイディアは斬新だったし、ある程度の納得感はありました。
でも、やっぱり
素直に言っても
私は私が「犯人」だとは、読み終えても思えないし、驚愕というか、違う意味での驚愕はありましたね。
それも苦笑いものでしたが。。
まず、読書をあまりしない人にはおすすめしません。
たぶん、途中で挫折すると思います。
もし、興味を持って読もうと思うなら、183ページまでは頑張って読んでほしい。そこまで頑張って読んだら、そこからは私は一気読みしたから。
まず、良かったところは
香坂誠一についての視点で見た時は、古瀬博士の実験、研究とのつながり、関係性に納得感があって、
私は私が「犯人」だとは思わないが、トリックに関してはある程度
「なるほどね」と思える。
あと、刑事たちの登場も良かった。
何気にこの刑事たちの存在は大きい。たぶん、この刑事たちがいなかったら、私はオール酷評してたと思う。
ここは素直に評価できる。
あとは逆ですね。
それ以外は
さきほどもチラッと書いたけど、とにかく183ページまで挫折しそうなくらい、理屈っぽいし、そんな知識もいらん。ことまでツラツラと書かれてあって、退屈する。
特に、多華子と薫子の実験は、どうしてあんなオチにしてしまったんだろう?剛士と和弥との対比で、これもミステリーの驚愕の真相のひとつに入れたかったのかもしれないが、私てきに
余計なことするな!と思った。
相変わらずうまく言えないんだけど、題材は良いんだけど、話がつまらないって感じですかね。
この作者もこの作品は2007年に発表されたようだが、昨今のミステリーというジャンルに多少なりとも不満というか、自分なりの想いがあったのだろう。
そして、これは作者なりの挑戦した作品だと思う。
私は、それが悪いとは思わない。
やはり、どんなジャンルでも挑戦する試みはやるべきである。
けれど、何度も言うが
それと、作品が面白いは別である。
私も登場人物の1人有馬(ありま)と全く同じである。
だが有馬は、たとえ純文学であっても、何らかの<落とし前>があるべきだというのが持論なのだった。その<落とし前>が、破綻をきたすことなく、しかも意外性に満ちたものであれば有馬は大喜びして傑作だと叫ぶ。
有馬が最も嫌うのは、起承転結ではなく起承転転、即ちいかにも思わせぶりに展開されたプロットが回収されずに終わったり、呈示された謎が解かれないままに終わったり、さてあとは皆さんが考えてくださいと、読者に最終的な解決を委ねて終わるようなケースだ。(本文抜粋)
作者自身が、有馬を通じてこうして書いてあるのに。。
だからこそ、反発もしつつのストーリー展開になっちゃったのかなぁ?
やっぱり
もっていきかた。なんだよね。
そう。この作品は、ストーリー展開をもうちょっと工夫すれば、それこそまさに『驚愕必至』にできたんじゃないかなぁ?
あと、つかみだよね。
この作品は完全につかみに失敗してる。
そんな感想です。