【イギリス映画】説きふせられて(2007年)/ジェイン・オースティン原作。バースの観光名所とロケ地。
映画化されるジェイン・オースティンの名作
Persuasionは、ジェイン・オースティンが41歳で亡くなる前に完成させた最後の作品。*¹ 日本語に翻訳されたものが文庫本になって売っているので、読んだ方もいらっしゃるのではないでしょうか?
映像化されたものは作品によって、「説きふせられて」「説得」など訳題が違いますが、原作はどれも「Persuasion」です。
ジェインが若いころに執筆をはじめ、美しい姉妹愛を描いた「高慢と偏見」や「分別と多感」とは雰囲気が違い、「説得」の主人公アン・エリオットには、ちょっと風変わりな姉と妹がいる。若かりし頃、家柄が釣り合わないという理由で大好きな人との結婚を家族や周りの人に反対(説得)されて、あきらめた主人公。お互い独身のまま8年の月日が経った頃に、その男性が現れる。というところからストーリーは始まります。
*¹資料 P137 新井潤美「ジェイン・オースティンとイギリス文化」
今日は、2007年に映画化された作品「説きふせられて(Persuasion)」を観て、私が気になったバースのロケ地についてまとめました。
バースの観光案内としても楽しめる内容にしています。(ネタバレしないように気を付けてます。)
社交界で華やぐバースが舞台
主人公のアン・エリオットは、父の散財により自宅のケリンチ邸を借家として貸し出すことになり、父と姉と三人でバースに引っ越すところから物語が始まります。物語の後半に、舞台(ロケ地)となるのが、バースです。
エリオット家の新居は、「カムデン・プレイス」
エリオット家は、サマセット州の豪邸からバースの「カムデン・プレイス」に引っ越します。この小説が書かれたとき、バース市街地のロイヤル・クレッセントから少し離れたところに1788年に建てられた三日月形の集合住宅「カムデン・プレイス」が存在しました。いまは、名前が変わりカムデン・クレッセントと呼ばれています。写真は、ギラーズ・オブ・バースのインスタグラムから。カムデン・クレッセントで撮影。三日月形の集合住宅は、街を一望できる見晴らしのいい坂の中腹にあります。
ギラーズ・オブ・バースの紅茶
余談ですが、バースの老舗紅茶専門店のギラーズ・オブ・バースから販売されている「ジェイン・オースティン・ブレンド」の箱に描かれているのが、カムデン・プレイスです!ここで売っているギフトボックスには、オーナーのニッキーさんが、古いイラストから選んだバースの名所がデザインされています。ジェイン・オースティン・ブレンドには、「説得」の物語に登場するカムデン・プレイスが選ばれました。
では、ここからは話を映画に戻しましょう!
新居のロケ地は、ロイヤル・クレッセント
新居となるエリオット家のロケ地(表側/外側)は、ロイヤル・クレッセント1番地です。この写真にある三日月形の建物の一番右手になります。(家の中のロケ地はNeston park, Corsham )映画の後半では、ロイヤル・クレッセント一番地の玄関から、ロイヤル・クレッセントの集合住宅の前をアンが走り抜けていくシーンが印象的。
Netflix「説得」では、この建物の前の柵の部分で、アンがお世話になっている夫人と立ち話しているシーンがあります。
現在、建物は No.1ロイヤル・クレッセント 博物館として一般公開されています。
館内の詳しいカイドツアーはこちらの有料記事から⇩
昼間の社交はパンプルームで
この時代のバースでは、昼間にパンプルームに出向いて、鉱泉を飲んだりいろいろな人と会話するのが楽しみの一つでした。
映画の中では、パンプルームの広いお部屋をアンと、いとこのエリオット氏がおしゃべりしながら歩く(Promenading)シーンがあります。この時代には、昼間に人が集まって広いホールの中を行進するようにぐるぐると歩きながらおしゃべりする習慣があったのだなぁと、興味深いシーンです。
ちなみに映画「高慢と偏見」(2006年)でもエリザベスとビングリー氏のお姉さんが並んで手をつなぎながら部屋の中をぐるぐる歩くシーンがあります。
パンプルームについてはこちらの記事に詳しくまとめています!⇩
アッセンブリー・ルームズのコンサート
映画「説きふせられて」でのクラッシック・コンサートの会場のロケ地は、アッセンブリー・ルームズ。ジェイン・オースティンが滞在していたころ、ここで毎週バースの舞踏会が開かれました。
当時は市街地の北と南側にアッセンブリー・ルームズがありましたが、現在残ってるのは、北側にあるアッセンブリー・ルームズだけです。近年、ナショナルトラストの運営で一般公開しています。その前にはファッション博物館でしたが、現在は移転して別の場所で再開する予定(2024年現在)
海辺の町、ライムへの休日
8年ぶりの再会を果たしたアンとウェントワース大佐は、ウェントワースの旧友を訪ねてライムにやってきます。この映画では薄暗くて寒そうな時期に撮影がされていて、そこがまたイギリスの雰囲気を漂わせています。
ドーセット州にあるライム・リージスは、ジュラシックコーストと呼ばれる白い崖が美しい、小さな町。ジョージ王朝時代になると海水浴ができる保養地として人気となり、ジェインもバースに住んでいた頃に、家族と海岸近くの家を借りてしばらく滞在しました。
ライム・リージスの海岸にあるThe Cobbへは数回行きましたが、天候が悪いと吹き飛ばされてしまいそうに風が強くて堤防の上を歩くのはけっこう勇気がいります。映画の中に出てくる階段も実際に歩けるので、現地に行ったらぜひ近くまで行ってみてください。
【まとめ】ネタバレあり
物静かで、悲しみに耐え忍ぶ主人公アン・エリオット・・。
この映画でのアンは、聡明で不満や自分の気持ちを表に出さない、おしとやかな女性に描かれています。笑顔のシーンは、数えるくらい。とにかく、耐えに耐えて、最後に親愛なるウェントワースと結ばれるハッピーエンドで終わります。2022年公開 Netflixの「説得」に不満を抱くジェイン・オースティンファンにとっては、こちらの映画版の方が好評のようです。
私は、どちらも楽しく観ましたが、いとこのエリオット氏は、Netflix版の俳優さんが演じた方が良かったと思います。財産目当てのエリオット氏を愛嬌のあるチャーミングなキャラクターで、美男子(しかもアジア系)の俳優さんが演じ、配役も台本も素晴らしいと思いました。いま、若者を中心に世界へ広がるダイバーシティをどこまで上手く古典に組み込めるのか。「説得」「ブリジャートン家」などジェイン・オースティンの時代の作品はこれからも注目していきたいと思います。
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Netflixの説得(2022年)についてはこちら!
参考文献