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【ももたろレビュー】映画#6『たそがれ清兵衛』
突然ですが、ももたろは”時代劇”が好きです。
これは多分おばあちゃんの影響。おばあちゃんち行くとテレビでは時代劇か相撲が流れてるんですよね。最近は韓流ドラマが多いですが。
コテコテの勧善懲悪物から渡世人物まで様々な作品を鑑賞して来ましたが…中でも当時の暮らしが垣間見えるような、落ち着いていて丁寧な作品が好き。
特にイチオシの作品を選ぶとするならば、思い付くのは山田洋次監督作品の『たそがれ清兵衛』になります。
『たそがれ清兵衛』
原作:藤沢周平
「たそがれ清兵衛」
「竹光始末」
「祝い人助八」
配給:松竹
監督:山田 洋次
出演者
◎真田 広之
◎宮沢 りえ
◯田中 泯
◯小林 稔侍
あらすじ:
幕末の庄内地方。海坂藩(うなさかはん。原作者の時代小説に登場する架空の藩)
下級藩士の井口清兵衛(いぐちせいべえ)は妻を亡くし、娘達と母の世話をしながら借金返済に追われる日々を送っていた。
そんな着の身着のままの貧乏生活で身なりが薄汚れていく清兵衛。
同僚の中には、そんな彼を陰で「たそがれ清兵衛」と呼んで小馬鹿にする者もいた。
ある日、幼なじみの朋江(ともえ)を救ったことで清兵衛の剣の腕前が藩内に知れ渡る。それはやがて清兵衛に対してある藩命が下されるきっかけとなるのであった。
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この作品を鑑賞してまず驚くのは、山田洋次監督の執念とも言えるこだわりから生み出された圧倒的にリアルな時代描写。
映画化に欠かせない当時の資料が皆無であったという幕末の庄内地方(山形県の日本海沿岸地方)を舞台にした時代劇に挑む上で、監督は構想に10年以上、時代考証に1年以上の年月をかけたと記載があります。
結果家屋や城内の様子、方言から服装、髷(まげ)や照明に至るまでこだわり抜かれた映像には”時代劇”と聞いて連想するようなちょっと不自然、またはちょっと盛った描写が一切ありません。
おかげで当時の暮らしぶりがより現実味を持って感じられるのです。
これは他の時代劇、特に近年の作品ではあまり味わえない感覚です。
そして主演の真田広之氏。
最近はディズニープラスのオリジナルドラマ『SHOGUN 将軍』に主演しアメリカテレビ業界最高の栄誉であるエミー賞を受賞したことが記憶に新しいですね。
ジョン・ウィック最終作にも出演していたし、近年海外での活躍が目覚ましい俳優さんです。ももたろは真田さんの声が好きなんですよね〜。
彼の身振り手振りそしてふとした時に見せる鋭い眼光が、純朴で心優しいしがない侍だが実は剣の使い手であるという清兵衛のキャラクターに説得力を持たせています。
そしてそんな彼に寄り添う幼馴染の女性、朋江を演じる宮沢りえさんもまた良い。両想いなのに身分の違いから踏み出せない、そんないじらしい武家の女性役を魅力たっぷりに演じています。
ももたろが劇中で特に好きな場面を2つピックアップ。
ひとつは清兵衛一家が朝食をとるシーン。おかゆを食べきった椀にお湯を注ぎ、漬物で拭って飲み干す。伝わりますかね?
なんと丁寧な食事の描写だろうと何回観てもうっとりしてしまいます。
もうひとつは朋江が清兵衛の髪を整えるシーン。この時の宮沢りえさんの手や手つきが大変美しいのです。ぜひ観てみて欲しい!
この時彼女は作業前にたすき掛け(和服の袖を紐でまとめる所作)を非常にスムーズに行います。こういった所作のひとつひとつに嘘っぽさがなくて好き。
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劇中では時代劇にありがちなカタルシスを感じるシーン(ex.暴れん坊将軍の大立ち回り)はほぼなく、平凡な下級武士の日常が淡々と描かれます。でもそれがいい!
そしてストーリーは無駄なく構築されているので退屈さは感じません。
不満に感じる点もほぼありません。
強いて挙げるなら、ここまで時代考証にこだわり抜いた作品なのにエンディングテーマがあんまり合ってないなと感じたところ。いきなりシャツなどと言った現代単語が出てくるので…。
さて本日の映画レビューはここまで。
時代劇なのに、時代劇らしからぬリアリティを求めたアプローチで作り出された本作品。普段時代劇に興味がなくても心に響くシーンは必ずあると思います。
皆さんも是非鑑賞してみては如何でしょうか?
今日も良い一日を。