シビウ

「また来ます」とすぐに決めた 《ルーマニア・シビウ国際演劇祭》

ルーマニアでは6月、“ヨーロッパ三大演劇祭”といわれる『シビウ国際演劇祭』が開催されます。日本からのアーティストも毎年5団体くらい参加していて、昨年は演出家の野田秀樹さん、建築家の隈研吾さんも、ほかにも劇団、ダンサー、能などのパフォーマーが訪れていました。過去には演出家の串田和美さんや、歌舞伎の中村勘三郎さんなども。

その『シビウ国際演劇祭』には毎年、日本からボランティアスタッフが現地に行っています。

2019年の〆切は、2月15日(金)24時。
2020年の〆切は、2月7日(金)24時です!!

▼募集要項

2019年

2020年

https://m.facebook.com/sitfvolunteers/posts/2608015925961646

シビウ国際演劇祭の雰囲気をすこしでも感じていただけたらなあ……と、簡単にですが、2018年滞在時の様子、日本人ボランティアスタッフさんについてなどご紹介します。

わたしは2018年6月に視察もかねて訪れました。

8〜17日の演劇祭開催中、街中のいたるところでストリートパフォーマンスが行われています。

いろんな楽隊が演奏して町を歩いているので、日中はだいたい賑やか。

謎の……山車?

子どもの顔にペイントしている人。海外のフェスティバルって、顔にペイントしてますよね。日本でもワールドカップとか文化祭とかパレードの時はしてるので、そんな感じです。

ホテルの窓から見下ろしたら、パフォーマンスの周りに人だかりが。

スタチュー(銅像)パフォーマンスの人。あと、町の真ん中にZARAがあるのは便利。

夜は広場でファイヤーパフォーマンスがおこなわれました。そうです。残念ながら見逃しました。残骸だけはなんとか撮影しましたが……。クライマックスにはファイヤーパフォーマーとお客さんが溢れかえっていたそうです。ううう、悔しい! 脳内妄想で補填!

右は特設ドーム。中に入れば、不思議な色の空間になっています。

レンガの街並との違和感すごい。それが刺激的。子どもに人気のドームでした。

中心街からすこし離れ、10分弱ほど歩くと、住宅街の奥にデカいマーケットがあります。食料でも日用品でも買い放題!

左の男性はこのあと「写真もっと撮って!」と笑顔で近づいてきて、撮影させられました(笑)

バラ売りもしているので、野菜や果物やナッツを買って、部屋でおつまみとしても食べられます。安いですし。

中心街から市場とは別方向へ10分ほど歩くと、駅。

ビルは見かけません。ルーマニア首都のブカレストはビルのたくさんある都会ですが、シビウの住宅は高くても3階建てかな?という住宅のオレンジの屋根が並びます。そのむこうにはずーっと山並みが続いています。落ち着いていて、綺麗な風景です。

市内にはいくつもの教会がありました。それぞれ美しく、丁寧に利用されていて、歴史や信仰や技術や思いがあります。この写真の教会、なかは撮影できませんが、こちらの絵もすべてタイルによるモザイク画でした。

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演劇祭の10日間には、世界中から選ばれたいろんな団体がパフォーマンスをします。演劇、ダンス、ミュージカル、サーカス、人形劇……もう、いろいろです。2018年は、シビウ市内73ヶ所の会場で演目数525本、73ヶ国から3300人のアーティストと1日約7万人の観客が集いました。

こちらが「国立劇場」。ラドゥ・スタンカ劇場です。もともと映画館だったのを自分たちで改築したとかなんとかで、あまり広い劇場ではありません。300席くらいです。でも居心地よくて、好きでした。1989年まで独裁政権に苦しんでいたルーマニアの愛と努力と誇りが詰まっているように感じます。

別の劇場での演劇公演のようすです。素晴らしい舞台で、鳴り止まないスタンディングオベーションでした。上演したのは、ルーマニアのシビウ以外の地域にある劇場の所属劇団。ルーマニアの侵略された歴史を風刺したコメディで、爆笑につぐ爆笑でした。演目にもよるでしょうけれど、終演後はお客さんが写真をバシバシ撮っているのも、新鮮。

こちらはルーマニア演劇の巨匠、演出家プルカレーテの野外劇『メタモルフォーゼ』。この日は途中で雨が降ってきたので、ビニール袋を被って観ました。舞台上一面に水が張っていて、出演者たちはその中を動き回ります。当然、ビショビショです。生演奏、火が噴き、野菜が飛び散り、遠くでは野犬の遠吠え。衝撃的な作品ですが、これが約1500円で観られるのが衝撃。レパートリー作品なので何度も上演しています。

これらルーマニアの演劇がとっても面白いのは、ルーマニアは『ヨーロッパ大陸の交差点』と呼ばれていることにあります。その言葉どおり、周辺のロシア、ドイツ、イタリアなどの影響を受けて、いろんな演劇のメソッドが入ってきているのです。そのため、多彩、かつ、高クオリティ、かつ、いろんな文化を融合させたうえでの独自の芸術性、なども感じられることが多くあります。

……と、ルーマニアの演劇の特徴や魅力について話していたら超長文になってしまいそうなので、ここではやめておきます。“国際演劇祭”では、ルーマニアに限らずいろんな国のいろんな舞台が観られるのも魅力ですから。

ちなみに各国の参加団体のクオリティも期待できます。というのも、『シビウ国際演劇祭』の上演演目は、すべて選定されています。ほかの国には、誰でも参加できるフリンジがある演劇祭も多いです。そうすると諸外国からの参加人数も多く、多彩に盛り上がります。けれどもシビウでは選定していることによって、ある程度のクオリティがないと参加できません。すると平均的にパフォーマンスひとつとつの内容は、クオリティが高くなると考えられます。

パフォーマンスだけでなく、参加アーティストのトークやワークショップもおこなわれています。演出家・野田秀樹さんのトークでは、日本の演劇の特徴や、自身の創作、これからの演劇への思いなどについて話しました。

建築家たちのトークセッション。一番右は、隈研吾さん。近々シビウに新しい劇場が建設されるとのことです。

日本でも2017年に上演され話題作となった『リチャード三世』(佐々木蔵之介主演)のドキュメンタリープレ上映。未完成なので非公開ですが、稽古のようす、美術仕込み、各関係者インタビューなど、舞台裏のようすが盛りだくさんでした。日本ではやく公開しないかなあ!

ある日の日中には、ハリウッドを模した『ウォークオブフェイム』授与式がおこなわれました。毎年ルーマニアの文化に貢献した世界中の人々が表彰され、現在38人。どなたも世界的なアーティストやプロデューサーばかりです。

野田秀樹さんの『ウォークオブフェイム』。名前の入った盾が、シビウ街中に埋め込まれていくのです。日本からは演出家の串田和美さんと、故・中村勘三郎さんの名前も。

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参加している各国のアーティストやスタッフたちは、それぞれの演目に合わせた短い滞在期間のなかで交流します。関係者の集うスペースでは、上演を終えたアーティストたちがめいめいに過ごしています。もちろんボランティアスタッフも入れます。

ここで、各国(もちろん日本も)から来たアーティストさんやスタッフさん、ボランティアスタッフさんといろんな話をしました。そんな機会はなかなか日本では持てないので、とても貴重な、幸せな時間でした。

焼きたてお肉も最高です!

突然、大音量の音楽のなかでダンスバトルがはじまりました(笑)パフォーマーばかりなのでダンスレベルは高いし、いろんな国のダンサーさんたちがいるのでダンスの種類も多彩。贅沢すぎる時間!

その真上では……演劇祭初日と最終日には花火があがります。火の粉が振ってきて、ビールを片手に大盛り上がり。こんなに近くで花火を見たのは初めてです。

花火を見上げる彼女は、日本人ボランティアスタッフさん。着ているのは、ボランティアスタッフTシャツ。

シビウでは、日本人ボランティアスタッフさんにとてもよくしていただきました。みんなとても活き活きして見えました。彼女たち(ほぼ女性でした)の仕事は、日本人アーティストの迎え入れやアテンド、映像記録などなど、全体的に演劇祭をサポートします。

それだけでなく、ここでは、日本ではなかなかできないことができるのです。

担当するお仕事によりますが……日本では知ることのない世界のアーティストの作品に触れられる刺激。アーティストたちのプロの仕事を目の当たりにします。日本ではチケットを取るのも難しい日本人アーティストの公演が観られる、関われる、直接話せる機会がある。また、日本人とは違う文化の観客とは観劇スタンスが違います。入場から着席、笑うところ、拍手の仕方など、「え、舞台ってこんなに自由に観ていいんだ!」と目どころから心の鱗がぽろぽろと剥がれ落ちました。自分の価値観と向き合い、つきつめると、自分の生き方はこれでいいのかとまで目を洗われるような体験が、たくさんありました。(ボランティアスタッフ各自の仕事内容にもよります)

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そして、なにより大事で、なにより幸せだった、食事! 美味しい! ルーマニア料理、日本人に合う味付けかもしれません。好き嫌いの激しいわたしでもほとんど美味しくいただきました。量は多いですが(笑)

ルーマニアの定番レモネード。毎日飲んでました。甘すぎず、レモンがきいていて、店によって味がぜんぜん違うので飽きません。

ルーマニアの名物「サルマーレ」ヨーグルトソースがけロールキャベツみたいな。付け合わせはとうもろこしペースト。これもお店によって個性があって、食べ比べが楽しいです。量もたっぷり。

揚げドーナツのジャム&アイスがけ。デカイし、甘いし、うまいけど、重いし、でも美味しいんです。間違いなくすごいカロリー。

こちらもデザート。クレープにジャム&アイス。間違いなくすごいカロリー。

そう……甘いものが多すぎるんですよ。街中にも、20秒歩くごとに新しいアイスクリーム屋さんに出会えるんじゃないかというくらい、とにかく、アイス。アイス。アイス。ピスタチオアイスとショウガアイスが美味しかったです。

しかし衝撃的なことに、10日間の滞在で2キロ痩せました。ミステリー。

ルーマニアビール以外にワインもあって、パッケージが可愛いのでつられて飲んじゃうんですよね。

ラドゥ・スタンカ劇場近くのルーマニア料理店。天井の梁の部分に仮面のモチーフが飾ってあります。ここで、公演を終えたアーティストさん、スタッフさん、日本人ボランティアスタッフさんと食事をしたことが忘れられません。

「日本に帰ったらどんなことしよう?」と、いろんな話をしました。明るく前向きな意見が多いのは、日本から離れた東欧という地にいる高揚感か、一流のアーティストに囲まれた刺激か、多忙だけれど充実している興奮なのか……けれども日本の日常にいたら「そうしたいけどさあ……」と腰が重くなりそうなことも「やろうと思う!」とアイデアが出てくる時間を持てることは、幸せです。

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これまで、国内外の演劇祭のいくつかに行ったことがあります。けれど正直なところ「もう一度来たい!」と即決したのは『シビウ演劇祭』が初めてでした。

理由はいろいろありますが、一番は、「自分たちの手で創っている感覚」でしょうか。

ラインナップの充実した大きなフェスティバルは、世界中いろんな場所で開催されています。スタッフは専門家や訓練されている方が多く、企業やプロフェッショナルがサポートしています。
けれどもシビウ国際演劇祭は、“ヨーロッパ三大演劇祭”と言われるほど大きいけれど「地元の人」や「参加者」のためのものでした。文化祭感、と言ってもいいのかもしれません。しかし、お祭り感、ともまた違います。なんていうか……ぼんやり過ごしていても、意欲的にパフォーマンスを観に行っていても、肌で感じるのは生活と文化が混ざり合っている感覚なんです。

日本をふくめた各国の国際ボランティアスタッフや、地元の大人だけでなく、シビウの学生たちが授業の一環として何百人も演劇祭をサポートし、アーティストと地続きの場所で働いています。彼らひとりひとりの手作業が、演劇祭全体を形作っています。お客さんも、午前中はのんびりとアイスを食べながらストリートパフォーマンスを見て、広場でおしゃべりし、夜はさっさと店じまいしているので大騒ぎをしてる若者もほぼいません。
出会う人たちも「芸術が〜」「将来的に活躍するには〜」などゴリゴリした話をするよりも、ただその場所を楽しんでいる、その時間を楽しんでいる。なんだか公園のベンチでリラックスして「楽しいねえ」と言っているような……気が楽なのです。しかもそれが演劇祭期間だけ「この週末は一大イベントだ!」みたいな気合いの入った雰囲気ではなくて、続いていく日常の一コマのような印象なのです。

どうやらシビウでは、かなりの頻度でいろんなフェスティバルが開催されているそうなのです。東京でいう代々木公園みたいな感じでしょうか? つまりこの土地にとって、もちろん『シビウ国際演劇祭』は大きなイベントで、芸術文化の街のシンボルではあるんでしょうけれど、「そのために1年かけて気合い入ってます!」みたいな日々の総決算的な意気込みはないようなのです。それが、すごく良いです。そして、大切なことだと思うのです。

そこに参加することになる日本人ボランティアスタッフの方も、受け身ではなくて、ひとつひとつの手が、演劇祭を形作っているのだと感じます。

短い滞在での感想ですが、「ああ、文化やアートって、生活だよなあ」と思える空気がありました。日常と芸術が地続きである……それこそ生きることの豊かさな気がするのです。(いやぁ!その間にバリバリ準備してくださっているスタッフさんもたくさんいると思います!ありがとうございます!)

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2019年ももちろんシビウに行きます。
それはシビウ滞在中から直感で決めていたことです。
「また来たい」とこんなに強く思ったことは珍しくて、自分でもびっくりしています。でも、まだまだ知らないことがたくさんある。もっと知りたいことがたくさんある。そして、またあの町の人や空気に会いたい。

日本人ボランティアスタッフの応募もされています。2020年は2月7日(金)が〆切なので興味のある方はすでに申し込まれていると思いますが、もし迷われている方がいたら、応募だけでもしてみてはいかがでしょうか。英語力に自信がなくても、意欲や気持ちを大事にしてくれる場所ではないかなと思います。英語力によっても、いろんな仕事があるでしょうし。それに、なにより、とても魅力的な場所なので。

https://m.facebook.com/sitfvolunteers/posts/2608015925961646

ボランティアでなくても、演劇祭の観客としてでも、現地でお会いできると嬉しいです。そう……SNSで滞在を知って、現地で初めてお会いした日本人のお客さんも何人かいました。みなさん今でも「次のシビウ楽しみだね!」と連絡をとる関係に。これもまた、ルーマニアまで行ったからこその出会いでした。いくつもの奇跡のような出会いがあった10日間でした。

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最終日、クロージングをかざる花火を見上げる恋人たちと。

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