恋愛はまるでジグソーパズルみたいだ
ふとある同級生のことを思い出した。
幼稚園が一緒だったけれど、クラスは離れていたから特に関わりはなかった。
でもたまにすれ違った時、顔立ちが整っていた子だったからか、顔は覚えていた。
アルバムを見て、あ、この子だったのかと初めて知った程度だった。
小学校は別々になって、中学校でまた出会うとは思っていなかった。そもそも忘れていたから、廊下ですれ違った時、え?もしかしてあの子?と二度見してしまった。
もうすらっと背が高くなっていて、目がキリッとしていて、顔立ちもほとんど変わらなかったけど、女の子たちが興味を惹かれるような、率直に言うとモテそうな顔立ちをしていた。
見た目に反して声は全然声変わりしていなくて、女の子のような高い声だったことにあ、声は全然変わってないと思って、クスッとしてしまった。
接点を持つようになったのは一緒の委員会になったこと(生活委員だったのか何だったのか忘れた)。
その時幼稚園以来のすごく仲良かった友達と一緒になれてすごく嬉しくて、でも急に話しかけるのもなあとドギマギと考えていたから、彼のことはまったく興味がなかった。
委員会の仕事で彼とたまに話す程度になって、まず思ったこと。ずいぶん誰とでもよく話すなあと思った。
女子でも男子でも全然話しかけていて、女子と話していてもまあ距離が近い。
これは誤解される女の子いっぱいいるだろうなと思っていた。
当時の中学の私は思春期特有のものなのか、当時の父親や自分をいじめてた男子たちを重ねてなのか、まわりの同級生に対して、特に男子に対してずいぶん冷たい対応をしていた。
そんな私に対してでも話しかけてくるもんだから、一体何を考えているんだかと思って彼にも話しかけられたら適当に返していた。
彼が何を考えているのか、まったく分からなかった。なんというか読めない。
あのキリッとした目と合うと、何か見透かされているみたいで嫌だった。
話す機会があったのはそれくらいで、神様の良いイタズラか悪いイタズラか、クラスは一緒になることはなかった。
でもなんとなく彼に対して既視感を感じていた。
それが分かったのは高校生になってから。
彼が自分と同じ高校になったことにまずびっくりした。彼は頭が良かったから、違う高校に行ったとばかり思っていた。
ただ科が違っていたから、また同じクラスになることは3年間なかった。
彼と同じクラスに小学校から仲良い友達がいて、休み時間やお昼になったら友達に会いに教室に顔を出していた(自分のクラスは居心地悪かったからね…)。
友達と休み時間やお昼過ごす時は、なぜか彼も一緒にいるようになった。友達と付き合っているのかなと一瞬思ったけど、そうじゃないのはすぐ気づいた。
友達は女子でも男子でも1人でいる人がいるとほっとけない人で(私も1人でいて友達が誘ってくれたから、ほんとに救われた…)、彼が1人でご飯食べてる所を見て声をかけるようになったらしい。
意外だなと思った。休み時間とか見た限り、男子たちに混ざって話していたから、その人たちとはお昼食べないのかと思った。
高2、高3になってもそれが続き、お昼の休み時間は友達と、友達と仲が良い後輩と、彼と時間を潰すようになった。
何という異色な光景。
修学旅行の時。
自由行動があった時は同じクラスで話せるようになった子と、友達と、彼とまわることになった。
普段と変わらずに4人で話していたけれど、
同クラの子と私と2人きりの時があって、その時その子が
「ねえ、なんか○○くんってなんか怖くない?」
と言った。
何でそう思う?って聞いたら、
「だってあの人、目が笑ってないんだよ」
その言葉を聞いて私ははっとした。
そうか、彼に対してなんか既視感があったのは、そういうことだったんだ。
男子たちの中にいても、女子たちの中にいても、彼は笑っているようで、目が笑っていなかった。
修学旅行でUSJに行った時。この時も4人で一緒にまわった。
丁度その日がハロウィンシーズンで、夜になるとゾンビが現れる体験があった。
私がゾンビに怖がっていると、彼が私の手に持っていた荷物をぐいっと引っ張って、どんどん前へ人混みをすり抜けた。
前へ進まされてる私はすっかりゾンビを忘れてえ、え、何この状況と思った。
一緒にいた友達は私たちより前にいてそのことに気づいていなかった。
お土産屋さんに無事たどり着いて、いつの間にか彼は荷物から手を離していた。
そして、彼はゾンビたちと楽しそうに大声をあげながら踊っている人たちを見て
「あんなとこいないほういいよ。」
と冷たい眼差しを向こうに向けながら言った。
その言葉を聞いて、ああ、そうか、彼はそういうタイプの人かと分かった。
群れているように見せかけて、群れるのが嫌い。
嫌なものは嫌とスパッと言う。
その姿が怖くもあり、自分にはなくて何故か羨ましく感じた。
修学旅行が終わった後も私たちは普段通り接していた。
ただ私の気持ちに、なんらかの変化があった。
なんとなく私は彼に好意を持つようになった。
でもこれが本当の恋なのか分からなかった。
胸がときめくとか、一緒にいてドキドキするとかじゃなくて、もっと話したいという気持ちだった。
もっと話したら彼のことがもっと分かるんじゃないかと思った。
ただ、私の心の声が警告を発していた。
これ以上距離を近づけようとしたらダメだ、振り回されるだけだと。
確かにもし好きになって付き合ったとしても、彼と合うかどうかが読めなかった。
たまに女子たちと話してる所を見て、彼と付き合ったとして私はただ彼に振り回されるだけじゃないかと思ったから。
彼のどっちつかずな所は、恋愛においてみると私にとっては合わないと踏んだ(女の勘我ながら恐るべし)。
進路のことで忙しく、彼と会って話すことが減るようになった。
高校卒業で最後に友達の教室に行ったけれど、彼の姿はなかった。
その後は彼が今どこで何をしているか分からない。まあ彼のことだから元気にやっているだろう。
結局、彼も彼で私に対してどう思っていたのかは分からなかった。最後まで私の名前呼ばなかったし。たぶん彼も彼なりに、私の何かを感じ取っていたのかもしれない。それは彼でしか分からない。
今振り返ってみると、まあ彼のことは好きだっただろうなと思う。そう冷静に思う程度。未練はまったくない。
まだ高校生だったし、自分にないものを持っている所に、惹かれたんだろうな。最後教室にいなくて今までありがとうと言えなかったのは残念に思ったけれど。
あるふとした出会いが恋愛に発展する時もあれば、分からないままとりあえず付き合ってみるという場合もあるし、まったく発展しない時もある。まったく発展しないと思いきや、後から付き合う場合だってある。
恋愛はまるでジグソーパズルみたいだ。
でもそれはそれで面白いじゃないか。
人間として恋愛できるなんて幸せ。
今は大好きな恋人と出会えて幸せ。
すごく長く書いて読みづらかったと思いますが、
最後まで読んで下さりありがとうございました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?