【京都歳時記】十二月遊ひ 十月
神無月といふ事は、日本の神たち 出雲の国にあつまり●へば、出雲に神無月と申しすとかや。かの大社の明神は、諸神のつかさにてましませば、このところに、もろもろの神たちあつまり●ふ。
●も 出雲の海つらには、ささ舟 いくらといふ数なくかびて みゆと、いひつたへ侍り。北時雨、いくしほそむらん。青かえてもいろごとに染わたりて、にしきをさらす山々の名ところはおほけれど、ことさらに龍田の明神は、紅色をこのみ給へば、もみぢの色もことにそめわたり。
川にちりしくありさま、蜀江にひたしてすすぐ、にしきの色もかくやとぞおもほゆ。
みやこちかきところには、いなり山ももみぢも 名だかけれど、高雄のもみぢは 一きはの詠めぞかし。あたりちかき清たきの川瀬より、ちりうきてながるるもみぢの色をみざらんも、心つきなし。
たにふかきに むかひて、かはらけなけ の あそびするもさら也。
神無月 しも夜のきくの にほはずは
あきのかたみに なにをおかまし
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