鯨遠見 鯨吹気図 鯨置網 鯨突舩 鯨引寄図
鯨遠見(くじらのとをみ)
古来より絵に書来るくじらは、本式にならず。今 図する所は、画工 長谷川光信、海辺にて 真 の 鯨 を見て 其形 をうつせり。尤、正とすべし。
くじら取は、山の手に小屋をつくり、とを目鏡にて塩をふくを見て、采をふり、舟手へしらする也。
くじらに五種有。ざとう、小くじら、まつこう、せみ、ながせと云。ながせは、鯨 の第一にて、三十三尋 有。此 くじらは、見つけてもとらぬが、鯨取の作法也。
鯨吹気図(くじらきをふくづ)
鯨、潮を吹をけを●●也。是を 遠見より見つけて、相図のしらせあれば、鯨つき舟を出して、もりにて突とむる也。
もりに両刃あり。一方は短く、一方は長し。上へむけてなぐる時、下へおちさまに 鯨にあたる也。鯨 驚 きて、はねまはるに随ひて、もりは深くはいると也。
鯨舟十六艘、頭舟 二そう 先に立也。舟一艘に 人数十四人づつ、●をおきやいと云。もりつきを はだしと云。舟一そうに、ともろ一丁、わきろ一丁、其外一方に三丁づつ以上、八丁一丁に二人がかり也。
鯨置網(くじらおきあみ)
くじら、鯨鯢の字を用ゆるは、誤也。海●と書が正字也。くじら大なるは、舟をものむ也。日の光に 其 鰭 をひらめかするは 旗をふるがごとく、沫を吹けば 雨のごとし。其 海上にあらわるゝ時は、あたかも山のごとし。行来の舟、これにあへば、必さいなんあり。
鯨の口の下あごに大鰭あり。椶木の皮に似て小松を植ならべたるごとくに見ゆる也。
網舟十二艘、人数十五人づゝ、是は先へまはりて 網をおろし置也。くじら、此あみにさまたげられてよはる也。舟は何れも平つくり川御座のかたち也。
鯨突舩(くじらつきふね)
くじらつき舟十六艘。舟ごとに、一のもり三本、数もり十二本、大もり五本、けん壱挺づつあり。
一のもりをつきたる舟は、のぼりの外にふきぬきを立る也。鯨手をおひて、則、動揺すること夥しく、五三里か間もはねまはるといへ共、次第によはりて死する時に至りて、はかとの手をおひたる所へ立かへりて死すると也。
鯨引寄図(くじらひきよせるづ)
つきとめたる鯨に、真綱をつけ、ろくろにて地方へ引よする也。此ろくろをかぐらさんと云。
其肉を切て油を取也。惣じて くじら皮は黒く、其内 に 白肉 有。白肉の下に赤肉あり。皮くじらとて売買するは、尾とひれとの 間 也。是を、尾はせだつぱと云也。又、くじらのひげといふは、咽下なるお●也。是、細工に用ゆ。世にくじら細工といふ。
俗説に、鯨一疋とれば 七浦にぎはふと云。浦人 大にいさみ悦ぶこと也。
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