鯖(さば)
鯖(さば)
丹波但馬、紀州熊野より出す。其ほか能登を名品とす。釣捕る法、何国も異なることなし。春夏秋の夜の空曇り湖水立上り海上霞たるを鯖日和と称して、漁舩数百艘打並ぶこと一理許。又、一里許を隔て並ぶこと前のごとし。舩ごとに二つの篝を照らし、万火惚々として天を焦す。漁子十尋許の糸を苧にて巻き、琴の緒のごとき物に五文目位の鉛の重玉を付、鰯 鰕 などを飼とし竿に付ることなし。
又、但馬の国にては釣針もなく、只松明を振立 其影 波浪 を穿がごときに、魚随て踊りておのずと舩中に入れり。是又一奇術なり。舩は常の漁舩に少し大にして縁低し。越前尚大なり。
鯖の字、和名抄にアヲサバと訓ず。本草に青魚、又、鯖とあるは、カドといひてニシンのことなり。其子をカズノコ、又、カトノコと云。
サハの正字 未詳。
サハといふ義は、大和本草に此魚牙小なり。故に|狭歯と云。狭は小なり云々。東雅に云、古語に物の多く聚りたるをサバと云へば、若其義にもやと云々。いずれが是なりとも知ず。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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