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『料理綱目調味抄』(9) 煮物の部
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煮物の部
羹也。大概、汁におなじ。少の差別あり。
煮物は
魚鳥菜類を加摸して、漿仕立、だし仕立に、山葵、山椒みそをも掛る。又、ねりみそ。
※ 「漿」は、醤油のこと。
笋羹は
笋に不限、菜類を専にして、ゑび、いか、あわび、いりこ、印の類を加摸し、漿仕立也。
※ 「笋羹」は、普茶料理のひとつで、季節の野菜などを盛り込んだ煮物料理。
※ 「不限」は、限らず。
煮醤は
牛蒡、大根、芹、蕗、あらめ、黒豆 等に、鳥、塩とり、串鮑、棒だら、田作り 等を煮加、漿仕立。
※ 「あらめ」は、海藻の一種。荒布。
又
杉焼き、鍋焼、貝焼、煎鳥、准麩の類、皆煮物也。三 巻 委註也。
※ 「准麩」は、麩になぞらえた物。准麩汁では茄子を麩になぞらえるようです。
参考:『大日本国語辞典(准麩汁)』『泉:日本大辞典 第3巻改修版(准麩汁)』
可 用 煮物 鳥の部
鶴 雁
生・塩共に鳥づまにて、煮物は、だしに、漿少用㕝もあり。大具、小具、山葵。吸口、柚、烹あへにも。
※ 「塩」は、塩漬けのこと。
※ 「㕝」は、こと。事。
鳬
烹物 用 㕝、所々有り。甘湯仕立は右のごとし。取合、松茸、しめじ、芹、水菜、なめ、うど、焼ふ、針牛蒡、しゐたけ。
※ 「なめ」は、なめたけ。
白鳥
葱、塩松茸の類。或は、いり鳥、山葵みそ。
蒼鷺
甘湯仕立は、鴨のごとし。濃餅は漿仕方。しめじ、なめ、やきふ、ごぼう、しゐたけ、いはたけ、わさび、葛引き。
※ 「濃餅」は、油揚げ、しいたけ、人参、里芋、大根などを煮込んで、塩、醤油などで調味して、片栗粉や葛粉でとろみをつけた汁のこと。のっぺいじる。
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雉
生はだし仕立、鴨のごとし。塩は烹あへ、牛蒡(針)、焼ふ、芹、こんぶ(たんざく)、くろまめ、なめ、しゐたけ、山葵。濃餅にも。
一書、きじの身ばかり如常うすく作り、黄色なるきもをなべにやき付、下地(だし事)を入ているべし。からみ、わさび。
※ 「如常」は、常の如く。
※ 「きも」は、肝。
※ 「いるべし」は、煎るべし。
鷭
水鶏、鷺、調味おなじ。蒼鷺におなじ。なまとりを用。
※ 「なまとり」は、生鳥。
鶏
家鴨おなじ。漿仕立、牛蒡、大根、やきふ、葱、もうれうと云。
鶉
だし仕立、漿少加ふ。大具。とり合、牛蒡(かは)、大こん、葱、せり、なめ茸類、濃餅、漿仕立、やきふ、くわへ、石たけ、山葵。鴫、うば鴫、こばと、ひばり、すゞめ、むく、ひゑとり、つぐみの類、調味皆おなじ。生鳥を用。
※ 「くわへ」は、慈姑。
※ 「石たけ」は、岩茸のこと。
※ 「ひゑとり」は、鵯のこと。
鶏卵 けいらん
浮々煮。又、塩仕立のふは/\に、熬酒の葛だまりかけて、山葵かけたるもよし。麩の焼を線に切り、烹物の取合よし。又、巾着にして、煮物、笋かんに加へ、又、黄斗を巾にてこし、煮物に掛る事もあり。
一書に云、むかしの浮々烹は、土器に下地を入、かへらかして、あかゞいをうすく作り打入て、にゑばなをそのまゝ●ね、土器をしてまいらす。あかゞいなければ、あわび、はまぐりをもすべし。こせうをかゞせてよし云々。
※ 「浮々煮」「浮々烹」の参考:『日本料理法大成(浮々煮)(玉子浮々煮)(鳥浮々煮)(魚浮々煮)』『雅俗作文字引』
※ 「笋かん」は、笋羹。
※ 「黄斗を」は、黄ばかりを。卵黄のみという意味と思われます。
※ 「かへらかして」は、煮立たせて。かえらかす。
※ 「にゑばな」は、火にかけた汁物や煮物の煮え始め。煮え花、煮え端。
※ 「こせう」は、胡椒。
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可 用 煮物 魚の部
鯛 鱸
火取ても、又、濱焼きにして茄子(ふたつわり、くしがた)、又、茸類にても、漿仕立にて、加摸するもよし。杉焼は別に註。ねりみそ。
鯛をさしみのごとく身とり、なべに漿酒、少濃かげんしてにやし置、身三四 ● ねいりて、生にへなるに、すり山椒かけ、そのまゝ出す。
※ 「火取」は、火であぶること。
※ 「にやし置」は、誤読しているかもしれません。
※ 「生にへ」は、生煮え。
鮭
だし仕立、大具、魚皮の方を火どり、小角に切てよし。東国にて、かすがみと云あり。
鯉 鮒
粘みそ、筒切、おろしたるは造り水に晒、みそをたらせて、すに魚を入れば、はぎれしてよし。取合、石たけ、きくらげ。
煎海鼠
能 いりこのひねをよく漬、よく茹、中を取り、丸ながらも、切ても、だし、酒に砂糖を加へ、わらを入、半日斗煮。漿加へ、山葵、又、わさびみそ 掛る。又、いりこ、常のごとく漬 茹て、なかほどうすく木口に刻、やきふの糸、青まめ、黒豆、針牛蒡、焼ぐり、石茸、木くらげの類 加へ、葛引、山葵。
※ 「煎海鼠」は、干し海鼠のこと。
※ 「能」は、よく。
※ 「ひね」は、古。
※ 「半日斗」は、半日ばかり。
串蚫
能漬、よく茹、柔成をうすくへぎ切にして、だし、酒にて●る斗煮る。漿加、●干を加模し、液の多きよし。又、山葵皷をも掛る。
※ 「柔成」は、柔らかなる。
麪條
甘湯、煎塩仕立、うぶ水を用。漿少加、取合、水な、鶯な、せり、なめ、よめな、土筆、松露、海苔、ふきのとう。
蠣
煎塩仕立、だし、産水をさし、液にたてゝ、かきは煮ざるよし。産水なきには、うすく葛を加べし。漿用るなかれ。胡椒。
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摺身
はむ、又、何魚にても、すり身よくしたゝめ置、だし、漿仕立の煮物に、摺身をかさね、又、少火どりて加ふ。取合は内容次第、大様 白魚に云がごとし。濃餅には、取合、牛蒡、しゐたけ、木くらげ、石茸、やきくり、焼ふ、山葵。
※ 「はむ」は、鱧。
鰻餅
摺身同分に、薯蕷か、常の芋をろし、すり、交へ、だしを加へ、柔らかにして、煮汁、だしに、酒漿のかげんしてすくひ切にして、煮る。又、摺身に豆腐を同分すり加ふ。漿仕立の煮物に加摸す。取合、水菜、芹、葱、針牛蒡、なめ、わり山椒。
※ 「鰻餅」 参考:『日本芸林叢書 第7巻(はんべい)』
雜類
鱝、蚫、蚶、蛤、此類、粘皷。鯨、焼鮎、貝類、鰝類は漿仕立也。取合、時々物によるべし。
精進
粘皷、ふくさみそ、漿仕立、漿仕立に青皷、生姜皷、山葵皷、山椒皷、擦芋、青海苔、掛る。
煮物
豆腐、焼ても、麩(奥に委しるす)、揚麩(線に切)、蒟蒻、笋、茸類、豇豆、瓜、茄子、水菜、其外、時節の取合。
※ 「奥」は、奥書き。
※ 「委」は、くわしく。
右の外、煮物の杉焼、貝焼等、三之巻 委仕様等註なり。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖