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【観音霊験記 秩父巡礼】第十九番飛淵山竜石寺/飛行の尊像

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
観音霊験記 秩父巡礼十九番飛淵山竜石寺 飛行の尊像

観音霊験記 秩父順禮ちゝぶじゆんれい 十九番 飛淵山ひえんざん龍石寺りうせきじ
 あめつきを うごかすほどの 竜石寺りうせきじ
   あつまる人には 利生りしやうあるべし

奉額
  いでよ さむし はなくも

飛行ひぎやう尊像そんぞう
當寺たうじ境内けいだいは、龍宮りうぐう涌出ゆしゆつ灵場れいじやうにて、堂舎だうしやおよび歩行ほこう大槩たいがい一枚いちまい盤石ばんじやくにて、さらに塵土ぢんどをふまず。本尊ほんぞん弘法大師こうぼうだいしさくにて、京洛みやこよりとんこゝうつり玉ひし尊像そんぞうにまし/\て、もつとも灵驗れいげんあらたかなり。

※ 「飛行ひぎやう」は、仏語。六神通ろくじんずうのひとつ、神足通じんそくつう。空中を自由自在にかけめぐること。

或年あるとし天下てんかおほいひでりして、萬民ばんみん飢渇きかつまのあたりなれ。
大師たいしちよくあつていのらせられしに、大師だいし 摧肝かんたんくだきいのりければ、神泉苑しんせんえんより小竜しやうりう天上てんじやうする。同時どうじ此地このち盤石ばんじやく二つにわれて、大竜たいりゆう くもおこしてはつしければ、たちま大雨たいうふりそゝぎて、人畜にんちく草木さうもく蘇生よみがへり、五穀豊饒ごこくぶにようせしは、ひとへ大師だいし丹精たんせい觀音くわんおん利益りやくなり。

※ 「摧肝かんたんくだきて」は、肝胆かんたんくだきて。懸命に物事を行うこと。



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