『料理綱目調味抄』(5) 可用鱠魚の部
可 用 鱠 魚の部
■ [■は魚+舟]
子附の生盛は、鮒を糸に造りかはかし、子は茹よくかはかし、栗生が糸にして、魚と一所に子にまぶす。何も水けあれば、子つかず。酢を少鈍してかくる。又、山吹あへは、糸作りの鮒、うど、大根、子も一つにあへる也。栗生うへに可置。一書、昔はおのみを加へたりとみゆ。子のなきは、ぬたもよし。むかしは、なげ鱠といつる。
※ 「栗生が」は、栗生姜。
鮎
酢のつよきよし。魚を作り、冷水にいく度もさらし、一度あへて其酢を捨、改て酢にてあゆる。うど、くりせうが、防風、蓼酢もよし。
川魚
諸の川魚、皆鮎のごとし。おいかは、わたか、はへ、はぜ、うぐゐ、みごい、いさゞの類、蓼酢、又、ぬたもよし。
鯔
三つにをろし、首と骨をよく焼、扣て用。身はなげ造にして、からし酢よし。うど、くり生が、防風、酢の強きよし。
※ 「扣て」は、たたいて。
鰻
焼て、細く造り、蓼酢、おろし大根、芹、うど、くり生姜、ぼけの酢、大にいむべし。
鱧皮
右におなじ。酢は生もよし。
鯛
酢は、生蓼、生が酢、わさび酢、此分生盛あへて用ふに、取合、大根、芹、瓜、あかゞい、蚫、くらげ、なまこ、くりせうが、防風。
鱸
右におなじ。一書、胡椒酢を用。
鰈 鯇
調味、右におなじ。加雜にも。蓼酢よし。
鯵
芥酢、又、ぬた、加雜にも。時魚もおなじ。
鱠残魚
酢は生、又、蓼生。取合、海鼠、海月、蚶、糸蚫。□ もおなじ。加雜にも。うど、きくらげ、くりせうが。
鰮 鯖
荳たゝき、青汁わみ出し、強酢にて、鱠にわみ交てよし。からしぬた、にんにく、ねぎみそ酢。
※ 「わみ出し」は、誤読しているかもしれません。
鱆 烏賊
此外の具類、皆おなじ。ほそく造り、ゆがきても、生にても。蓼酢、からし酢。
一書 雁
厂腹身をうすく造り、うす●度にかい●して、手もりして、生が酢をそへて●いらすべし。
又、厂のもゝきをほそく作り、酒をにやし、ざつと色をとり、針生がをまぜて、能酢にてあへ、又、けし、くるみにてあへたるもよし。胡椒を少かゞせたるもよし云々。もゝきは、今云もゝけ成べし。
※ 「厂」は、雁。
※ 「もゝき」は、鳥臓。
※ 「能」は、能く。
※ 「もゝけ」は、鳥臓。鳥の五臓。むむき、ももき。(参考:『大日本国語辞典 第5巻 修訂』)
※ 「成べし」は、なるべし。
一書 鮭
鮭の焼、腹がはの方を少焼て、造るべし。針柚、針生姜を可用。
一書、かんさう腹の魚の名に、なくり、はちめ、ねはり、からくり、ひかり、など云名あり。可●考。
精進膾
大様、醤交同前なれば、あへ交の所に註。茄子膾は、茄子を䒵子を扣●●ゝけ、焚の下にて蒸焼、小く引刺て、けし、からし、生が酢、ごまをすり加てよし。
筆者注 ●は解読できなかった文字、□はパソコンで表示できない漢字を意味しています。
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