江戸の花名勝会 ろ 二番組(沢村長十郎)
此車のはは ちんば
はを直せば しんば
魚かしの後 新に立し 市場なる
ゆへが しんば にて
地名して そのいさましさ落たる
魚も生るにひとし
「しんば」は、日本橋の魚河岸の発展に伴って、延宝二年(1674年)本材木町に開設された新しい魚河岸。「はを直せばしんば」は、車の歯(歯車)を直して「新歯」と「新場」をかけたしゃれになっています。
本材木町 新場の鯛
一夜千両大尽舞 文山
一○拾○○○○○ 蜀山
吹上川風
ふぐよ 川はぜ あかえゐ 真たこ
舟のいきかふ 鯉の魚 尺鯛
「大尽舞」は、江戸の新吉原遊郭で歌われた囃子舞で、郭の由来や紀伊国屋文左衛門ら大尽(吉原で豪遊する客のこと)をテーマにした二十五段から成る謡いものです。
「ふぐよ」は、川風が「吹く」と「河豚」をかけています。
「尺鯛」は、素直に読むと「み鯛」ですが、挿絵に合わせて「尺鯛」と読んでみました。「見たい」と「尺鯛」の掛詞になっているのだと思います。
桶の中に描かれているのは、ふぐと尺鯛。
尺鯛は、大きさ一尺(約30cm)サイズの鯛のことです。じろりとこちらを睨みつける目、ばたばた動くひれの様子は、躍動感にあふれています。
江戸の花、名勝会に描かれた名称「定杳(沓?)」「菊乃美御油」「纆苦虚画」については、残念ながら手掛かりがなく… 何か分かったら追記したいと思います。
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※ 参考:国立国会図書館デジタルコレクション『春の鳥 : 絵入小唄集(大正6)』『絵入都々逸集』『新版都々逸唄(大正7)』『端唄全集(昭和2)』
筆者注 ○は解読できなかった文字を意味しています。
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