【京都歳時記】十二月遊ひ 三月
やよひの空には、咲のこる花もなし。打つづく春雨に ちりすくる えたえた 青葉まじりの花の● 人の心をぞ まよはし なやますものなる。名どころ おほき 花の匂ひ、吉野初瀬はさら也。
さがのの御寺には大念佛とて、むかしより さだまれる おこなひ ありき。せんくんしゆして、まうでぬるに、おし●ゝきて、十九日は、さがのの 如来 の 御身 をぬくひ奉る、まことに三国第一の名佛ぞかし。
廿一日は、高野大師の御影供 かの たかのの御山は、ほと遠ければ申にたらず。都ちかき、東寺のさんけい、仁和寺、高雄のまうで あるも けしからぬさま也。
わらはべの ことわざとて、みやこの町々より うへ●かたまて、庭鳥あはせのなぐさみあり。庭とりは、智 仁 勇 の 三徳 をそなへて、もののふの よきならはしなり。
また、むかしより いひならわすなる 千羽の庭鳥をかふときは、その家かならず長者となる といへり。それならでも、時をしるの徳あるもの也。
すみれさく ひばりのとこに やどかりて
野をなつかしみ くらすはるかな
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