【京都歳時記】十二月遊ひ 二月
すでに、睦月 もうち過て、きさらぎにうつれば、梅の花やうやうちりぬるに をしつづきて うば桜も さきいでたり。八重のこう梅はなを●をあらそふ。
やや はるふかく かすみわたりて、人の心もうきたち、山々の木のめばる●に、けしきたちて、月のなかばに成行ままに、十五日は、ほとけねはんにいらせ給ふ。
そのふるきあとをきくに、天ぢくのくしなこく ばつだいがのほとり、しやらさうじゆのもとに、八万の大衆、十六の大らかん、天人、りうじん、五十二るい、ほしのごとくつらなりて、ほとけのねはんを かなしみけん。
補足:「天ぢくのくしなこくばつだいがのほとり」は、お釈迦様が入滅された場所のこと。(天竺 倶尸那 跋提河の辺)
そのありさまを 絵にあらはして、ねはんぞう といふならし、本朝の寺々此日にいたりて、この絵を かけねはんゑをおこなふなる。ことさら、五山のうち、東福寺の絵は ちやうでんす とかやいへる 法師のかきたりけん。人々これにまいりて、おがみたてまつるも とうとし。
補足:「ちやうでんす」は、画僧 兆殿司のこと。
かざしたる みちゆき人の たもとまで
さくらににほふ きさらぎのそら
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