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【近世流行商人狂歌絵図】(1)お駒飴

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『近世流行商人狂哥絵図

お駒飴
おぢや ぢや ぢや さんべらぼん/\
 役者 こえいろ おこのみ次第
    しほから声で じやみつつら
 いろはくろいが あめは太白
   かはぬおかたは きこゑませぬ
       才三さんでは ないかいな

※ 「じやみつつら」は、じゃみっつらのことと思われます。あばた顔のこと。
※ 「才三さん」は、『恋娘昔八丈こいむすめむかしはちじょう(お駒才三)』に登場する才三郎。お駒と才三郎にかけた売り口上になってます。
 よかったら過去noteも見てみてくださいね。
 →「江戸の花名勝会 は 一番組(坂東三津五郎)」👀


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『近世流行商人狂哥絵図

壹番 お駒飴

左持
 評判は ちさとをはしる お駒あめ
    八百八町 ひくにまかせて

 髷の先に つくる蜻蛉の 看板も
   蜘蛛のすあめに かゝるなりはひ

お駒飴売りのまげに蜻蛉(とんぼ)

左は、千里を走る評判のお駒飴。八百八町の人にひかれて一時の流行さもあるべし。さはれこは、安永のはじめつかた、昔八丈てふあやつりわざをぎのいたくおこなはれしにより思ひつきたる猿かうなれば、お駒てふ名にかなひこそすれ、此あめをのみいはんは過たり。

右も亦、髷の先より安房上総を見するといふ助六のせりふはあれど、蜻蛉は何の為につけたる。當時その意をしるものなく、評するものも亦あらで、只、異なるを笑ひしをよめる欤。左の歌にくらふれば、蒼蠅驥尾に附くに似たれど、蜘蛛のすあめの口つきの甘きにめでて、持たるへし。

※ 「昔八丈」は、人形浄瑠璃の演目のひとつ『恋娘昔八丈こいむすめむかしはちじょう』。
※ 「あやつりわざをぎ」は、ここでは人形浄瑠璃のことを指していると思われます。「わざをぎ」は、役者のこと。
 参考:『広文庫 第20冊(わざをぎ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「蒼蠅驥尾」は、蒼蠅驥尾そうようきびして千里せんりいたすの略。つまらぬ者であっても、優れた人についていけば功名を得ることができるということのたとえ。

※ 参考:『曲亭遺稿』『盲文画話:水野廬朝筆風俗絵本』(国立国会図書館デジタルコレクション)



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