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ねずみの嫁入り(5)嫁入り行列

今日は晴れやかな嫁入り行列の日です。肩衣をつけた宰領ねずみ、提灯ねずみ、長持を担ぐやっこねずみたち。長持唄の歌声とともに、花嫁ねずみをのせた御駕籠が、壻方の待つ受け渡し場所へと進みます。
前回のお話はこちら ⇒「婚礼の準備(台所仕事)

🐭

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『鼠よめ入2巻


長持を担ぐ 奴(やっこ)ねずみ
家紋は鶴の丸

なにがあるやら
ちいさいはこじやが おもたひ
(何があるやら)
(小さい箱じゃが重たい)

もうちつとだ
(もうちっとだ)

てうちんを まわして もらおう
(提灯をまわしてもらおう)

こんどの出物いり● おびたゞしい
(今度の出物入り● おびただしい)

ずいぶん ●● /\しの ●●

※ 文意を汲み取れないので、誤読しているかもしれません。

提灯をもつねずみ

こんやは のんだり もらつたりだ
(今夜は呑んだり貰ったりだ)

あたまから しるわんでのむぞ
(あたまから汁椀で呑むぞ)

むだ口きくでない
(無駄口利くでない)

みなの取つぎませうぞ
(皆の取次ぎましょうぞ)


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『鼠よめ入2巻


挟箱(はさみばこ)を担ぐ奴ねずみ

つう/\と まいりましよ
あとがつかへる
(つうつうと参りましょ)
(後がつかえる)

それうたをかへるぞ
(それ唄を変えるぞ)

※ 「つうつう」は、意志や気心などが互いによく通じ合っていること。
※ 「唄」は、嫁入り行列で歌われる「長持唄」。youtubeなどで聞くことができるので、興味があったら検索してみてくださいね。👂

らうそくの しんを きりたいわ
(蝋燭の芯を切りたいわ)

ゆるがぬ ようにかつげ
(揺るがぬようにかつげ)

大きな ぶげんで ござります
(大きな分限ぶげんで御座ります)

□□□□□□□ ござりますの
(□□□□□□□ 御座りますの)

※ 「分限ぶげん」は、持っている身分、財力があること。分限ぶんげん

うしろが つれるは
(後ろがれるは)

がつてんだ
(合点だ)

●●●● てんきがよくて しあわせ
(●●●● 天気が良くて幸せ)


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『鼠よめ入2巻


次々と嫁入り道具が運ばれます

こんやの こしうぎは
大かた またぎづくれる どこかな
(今夜の御祝儀は)
(大かた 叉木またぎづくれる どこかな)

※ 「|叉木《またぎ」は、長提灯をひっかける腕木のこと。
※ 文意がくみ取れないので、誤読しているかもしれません…。

そんなに きくなよ
(そんなに聞くなよ)

もらう事ばかりいふな
もらう事ばかり言うな)

よをふかしたる
あすはねむたかろう
かしたる)
明日あすは眠たかろう)

衝立を運ぶねずみも見えます

これほどの どうぐの ●●●●は
さき□□ 大きな□□□□□□
(これ程の道具●●●●はさき□□大きな□□□□□□)

御駕籠(おかご)のなかは花嫁でしょうか

おみをくりで あとがにぎやかな
(お見送りで 後がにぎやかな)

あなたの内は さぞ 御にぎやかだろう
(あなたの内はさぞ御賑おにぎやかだろう)

ほうぐみ いつたら のもふぞ
棒組ぼうぐみ行ったら呑もうぞ)

※ 「内」は、ここではうちのことと思われます。
※ 「棒組ぼうぐみ」は、ひとつの駕籠をいっしょに担ぐ相手のこと。

ばんには さけを ひかへさっしやい
(晩には酒を控えさつしやい)

いや此ごろに あたります
(いや此ごろに あたります)

有て恵の作事
(有て恵の作事)
ばんには たはいに しつほりとた
(晩にはたわいにしっぽりとだ)

※ 「有て恵の作事」は、誤読しているかもしれません。
※ 「たわい」は、「酒たわい」の略と思われます。酩酊すること。
※ 「しつほり」は、しっぽりで、しみじみという意味でしょうか。

嫁方の一行が
受け取り渡しの場所に到着しました

みな/\ むかい □ まいりました
(皆々 むかい □ 参りました)

いづれも ごたいぎ様にござります
(いずれも 御大儀様に御座ります)

すなはち 是にて おうけ取申しませう
(すなわち是にてお受け取り申しましょう)

ここからは
壻方が本宿(新郎宅)まで運びます

さやうならば わたくし共ゝに
是よりひらきませう
(左様ならば私共々に 是よりひらきましょう)


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『鼠よめ入 2巻


さきのやつこをみよ よろ/\しをるは
(先のやっこを見よ ヨロヨロしるは)

挟箱をかつぐ壻方の奴ねずみ

わいらもさけをひかへろ
わいらも酒を控えろ)

こゝろへました
(心得ました)

となるゝ ●●い といふ事は あるまい
よいき □□ だ

※ 文意を汲み取れないので、誤読しているかもしれません。

これ/\ ぶれひのないように
(これこれ 無礼ぶれいのないように)

「俺は酒に酔わぬ」という武士ねずみ

おれはさけにはよわぬ
(俺は酒には酔わぬ)

なんのぶれひ
(何の無礼)

こんれいのどうぐも 三とかつぐものだ
(婚礼の道具も三かつぐものだ)

ごもんさきだ 何もいわるゝな
(御門先だ 何も言わるるな)

※ 「三と」は、三斗と思われます。斗は尺貫法における体積の単位で、一斗は約18リットル。三斗で54リットル。

あの やつこが うらやましゐ
(あの奴が羨ましい)

もふ 五ツすぎで ござります
(もう五ツ過ぎで御座ります)

※ 「五ツ」は、江戸時代の時刻の数え方で、午前八時頃。

花嫁ねずみの御駕籠に寄り添う女衆ねずみ

口をきゝますまい
(口をきますまい)

もんまでかきいれやう しずかに
(門までき入れよう 静かに)

五 ● かたよ
こんやへ おられ●●●

※ 文意を読み取れないので、誤読しているかもしれません。

うけとりわたしは もはやすみました
(受け取り渡しは もはや済みました)

よめごは くわほうな人だ
よい男をもたれました
嫁御よめご果報かほうな人だ 良い男を持たれました)

ふたりのしうとたちも 心よしなり
(二人の 舅達しゅうとたちも 心良しなり)

※ 「心良し」は、気立てのよいこと。


続きのお話はこちら ⇒「婚礼の儀

筆者注 ●は解読できなかった文字、□は欠字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖