安芸国 厳島揚枝の鬻図 広島牡蠣畜養之図
安芸国 厳島揚枝の鬻図
芸州 厳島 明神は、日本三景のうちにして、堂社の創建景色、目を驚す。就中、大経堂は、関白秀吉公の創建にして、桁 廿間、 梁 十間五尺余、縁幅 八尺四方、らんかんを付たり。俗に、千畳敷といふ。前面、海を望み、尤も絶景たり。堂中に商ふ楊枝は、柳にてつくり、五色の色をそめて、はなはだ美にして、島中の名産とす。又、数千の猿、鹿、群遊して、よく人になれ、人に乞ふて、餅を食す。
同 広島牡蠣畜養之図
蛎は、貝中の一等にして、人身にもつとも滋養の物なり。海中、自然に生ずるものにして、大なるものは岩の如く集合して、一、二丈に及ぶ。芸州に畜養するものは、小なりと虽も、その味ひ美なり。干潮のとき、砂上に竹木にて垣をつらね、潮のきたる毎に、ちひさき蛎のつきたるをとり、別にいけすのうちの砂中に畜養し、三年目にして取出し、食用 にそなふ。
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