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【人相学】『武者鑑』曽我十郎祐成/大磯虎御前/化粧坂少将/曽我五郎時宗
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曽我十郎祐成
祐成は、河津三郎 祐泰の 總領にて、幼名を 一万丸といふ。其 母、曽我祐信へ 再縁せしゆへ、隨つて 養子となる。
建久四年 五月廿八日の 夜富士の 狩場へ 忍び 入て、実父の 敵 工藤左衛門尉 祐經を 討て、本意を 達しけるが、仁田四郎 忠常の 為に 討れたり。此時 二十三才なり。
祐成は、智勇 共に 秀、殊に 温和の 若者なりしが、眼中に 父を 早く 失ふの 色ありしとかや。すでに、藤原通憲 卿 も 相は 眼中の 光りによるとの 教あれど、こと繁きゆへにこゝにいはず。
※ 「こと繁き」は、ここでは、人のうわさがやかましく、評判がうるさいさま。
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大磯虎御前
虎は、大磯の長が 娘なり。祐成と 比翼の 契り浅からざりしに、祐成 狩場にて 果しと 聞、悲哀の 涙にせきあへず、忽 剃髪なして、染衣に 姿をかへ、亡霊の 菩提の為に、欣求浄土の 所願たゆみなく、金剛堅固に 行ひすませしといへり。
今、五月廿八日に 雨ふれば、是を 虎が雨といふ。
虎は、常に 寝顔 笑ふが 如く、愛を 含みしといふ。是、果報いみじき 相なりし。しかし、良人と 頼む人の 早く 世を 去は 不幸に 似たれど、後世へ 美名を 残すは、又、果報ならずや。
※ 「比翼の契り」は、比翼連理と同じ意味と思われます。男女の情愛の深くむつまじいことのたとえ。
※ 「せきあへず」は、こらえられずという意。塞敢。
※ 「染衣」は、墨染めの僧衣のこと。
※ 「欣求浄土」は、 仏語。極楽浄土を心から願い求めること。
※ 「金剛堅固」は、 仏語。金剛石のようにきわめて堅いこと。
※ 「 虎が雨」は、陰暦五月二八日に降る雨のこと。
※ 「果報」は、よい運を授かって幸福なこと。
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化粧坂少将
少将は、化粧坂の 遊君にて、一夜流れの 浮身なれど、其 心ざし 気高く、常に 和歌を 好んで、克なすゆへに、時宗 深く 馴染て 通ひけるに、父の 仇を 報じて、其 身は 裾野の 露と 消しときゝ、嘆きのあまり 出家して、彼 虎の尼と一つ 菴に 住で、兄弟の 後世を 弔ひしとかや。
寔に、有難き 貞烈ともいふべし。少将は、額 高くして、見へ 能れど 削るが 如く、耳 圓く、前の 方へまがり、血脉 多く、眼は 圓くして 青みありし。是、遊女になりて 幸 あるの 相なれど、如斯 不幸なるはいかにと 思へど、はかなき 遊女の名、六百年の 今にいたりて 朽せざるは、幸の 甚 しきともいはん欤。
※ 「化粧坂」は、鎌倉七口(鎌倉七切通)のひとつ。
※ 「一夜流れ」は、客に買われて一夜だけ添い寝をすること。
※ 「貞烈」は、操を堅く守って気丈であるさま。
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曽我五郎 時宗
時宗は、祐成の 舎弟にて、幼名を 箱王丸といふ。後、時政の 烏帽子親となりて、首服をくわへ、余所ながら 後見して 祐經を 討しけるが、彼 御所の 五郎丸に 生捕れて、冨士の 根方にて 誅せらるゝ時に 二十才といふ。
時宗は、力膂衆 に 超て、其 天窓 虎の 頭の 如く、眼口鼻 共に大きくして、鼻の 根元に 釣針のごとき 紋疂て、視えしといふ。是、勇猛の 相に 顕然たれど、かくの 如きものは 極めて 短気にして、智はなきものなりといへり。
※ 「烏帽子親」は、元服親のこと。男子の成年に際して立てる仮親。
※ 「首服」は、元服のこと。
※ 「根方」は、ここでは麓のこと。
『武者鑑』の人物一覧はこちら
→ 【人相学】『武者鑑』人物まとめ 👀
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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