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11年前のミラーレス機 vs 最新スマホカメラ 忖度なしのRAW現像画質比較

 スマホのカメラ性能は各社新製品発表ごとの進化ペースが速く、比較レビューサイトでもスマホカメラの優位性を訴える記事を多く目にするようになってきました。かく言う私もその手の記事に危機感を感じており、そのスマホカメラの脅威について自分自身の手でも検証してみたくなりました。


大きなセンサーサイズ、AI画像処理エンジン搭載スマホ等の台頭

 昨年あたりから1インチセンサーなど大型センサーを搭載したり、撮影時にAI処理して画質を向上させる画像処理エンジンの搭載、複眼レンズ搭載、老舗カメラメーカー監修のスマホなど、各社単純な画素数戦争から戦法を変えてくるようになりました。これにより一眼カメラとの画質の差もどんどん縮まって来ている状況です。さらに携帯性に優れお手軽に撮影できる上に通話やネットやアプリもできるスマホに対し、カメラ機能しかないレンズ交換式カメラの優位性は果たして脅かされて来ているのでしょうか。

画素数=画質ではない

 これは勘違いしている人が多いですね。画素数とはデータ量なので、1200万画素でも画質の綺麗なカメラはありますし、1億画素でデータ量だけ大きくて画質はイマイチというカメラもあります。センサーサイズや画像処理エンジンなどの要因が複合して画質は決まります。実際、私が以前使用していたOPPO Reno9aというスマホカメラはメインカメラが4800万画素でしたが、センサーサイズは1/2.0インチ(6.4×4.8mm、対角線8mm)と小さいため、画質はお世辞にも綺麗とは言えないものでした。
 
 私の前回のnote記事で"動画機"としてGoogle Pixel 9 Proを購入したと投稿しましたが、このGoogle Pixel 9 Proはスチルカメラとしての機能も優れているということなので、果たしてこの最新ハイエンドスマホカメラがレンズ交換式カメラの真の脅威となるのか検証してみることにしました。

比較をする前に

 ただし画素数勝負はともかく、いくらハイエンドスマホカメラであっても、どう比較しても現行のミラーレス機の画質には敵わないと思っておりますので、ほぼ一昔前のレンズ交換式カメラを用いて比較をしようと思います。

 しかしレンズ交換式カメラとスマホカメラとで純粋な比較というのは難しいんですよね。携帯性については圧倒的にスマホ有利ですし、お手軽さについては比較するまでもないです。一方で連写性能やレンズによる望遠性能は明らかにレンズ交換式カメラが有利です。そこで比較する対象については写し出される撮影データの画質とさせていただきます。

 比較に使用するレンズ交換式カメラは11年前のOLYMPUSエントリー機 OLYMPUS PEN E-PL7と、スマホは2024年発売のGoogle社のハイエンド機Google Pixel 9 PRO。以下に簡単なスペックを紹介します。


OLYMPUS PEN Lite E-PL7
2014年発売
約1600万画素
マイクロフォーサーズセンサー
画素ピッチ3.3μm
本体重量357g
手ぶれ補正3.5段  現代では物足りない補正量
アートフィルター

2014年発売 OLYMPUS PEN Lite E-PL7


Google Pixel 9 Pro
2024年発売
広角約5000万画素
超広角・望遠約4800万画素
Proモードで12Mか50Mを選択可能
1/1.31センサー
画素ピッチ1.2μm
本体重量199g
光学手ぶれ補正8段分以上相当?ちょっと不自然な補正のかかり方
夜景モード、長秒露光、流し撮りなども簡単に撮影できる
F値は固定され変更不可

2024年発売 Google pixel 9 Pro



11年前モデル最小センサーサイズレンズ交換式ミラーレスカメラ VS 最新ハイエンドスマホカメラ

 ちょっと長い見出しになりましたが、現在レンズ交換式のミラーレスカメラには大きく分けて4種類のセンサーサイズがあります。

 中判(48.3×32.9mm)
 フルサイズ(36×24mm)
 APS-C(23.6×15.8mm)
 マイクロフォーサーズ(17.3×13mm)

 今回使用するミラーレスカメラはレンズ交換式カメラの中では最小のマイクロフォーサーズセンサーというもので、センサーサイズは17.3×13mm、対角線21.6mm、画素数は約1600万画素です。

 対して、このスマホカメラのセンサーサイズは1/1.31インチ(9.8×7.3mm、対角線12.2mm)、メインカメラ画素数は約5000万画素となっています。このセンサーサイズは現在のスマホカメラの中では大きい部類になります。

 画像処理エンジンについては比較が難しいので名称のみで割愛します。
 OLYMPUS PEN Lite E-PL7:TruPic VII
 Google Pixel 9 Pro:Pixel Visual Core

 Google Pixl 9 Proは三眼カメラで、焦点距離はメインカメラ24mm F1.68、超広角12mm F1.7、望遠110mm F2.8と幅広くカバー。被写界深度はメイン・超広角がF6相当、望遠がF10相当(いずれも35mm判換算)
 OLYMPUS PEN E-PL7では1本でGoogle Pixel 9 Proと同等焦点距離幅&F値に対応するレンズを所有しておらず(というか無い)、Pro機にはPROレンズで対抗ということで、やや暗めのレンズですがM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROを使用。これ1本で焦点距離24〜200mmをカバー。被写界深度は開放時F8相当(いずれも35mm判換算)。スマホカメラの焦点距離に合わせて24mmと110mmと固定して撮影。
 超広角はLAOWA 6mm F2 ZERO-D MFTを使用。焦点距離12mm被写界深度は開放時F4相当(いずれも35mm判換算)

LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT
フルサイズ判換算値 12mm
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
フルサイズ判換算値 24-200mm


比較撮影条件

 よくスマホと一眼カメラの比較で「ボケ量が大きい」とか「望遠距離を遠くまで綺麗に撮れる」など優位性を訴えるものを目にしますが、今回はスマホの焦点距離やボケ量に合わせて比較しようと思いますので、一眼カメラでも焦点距離を12mm、24mm、110mmの3種類にそろえて撮影。ボケ量も合わせたかったのですが、やや一眼カメラ側が不利かもしれません。

 フルサイズセンサーカメラの画質が良いのは当たり前なので、比較に使用するカメラはレンズ交換式カメラの中でもセンサーサイズが最小のもの(マイクロフォーサーズセンサー)かつエントリー機を使用することでレンズ交換式カメラの最低ラインとしての比較ができるものとします。(世間ではレンズ交換式カメラの中ではMFTが一番画質が劣る…と言われています…。不本意ですが…)
 まあ、これ以下のスペックのミラーレス機はないという意味で、このカメラで優位性が判明すれば、この年式モデル以降のほぼ全てのレンズ交換式カメラはまだ最新ハイエンドスマホより画質は上ということになる…、ということですね。

 使いやすさもそうですが、一番の目的は「画質」を比べるものとしますので、スマホカメラできるだけ高画質設定で撮影して、私なりのRAW現像を施して、どちらかに忖度しないようにフラットに評価することを心がけます。あくまでも私の撮影&現像スタイルでの評価するため、すべての人に当てはまりませんので誤解なきようご理解の程よろしくお願いします。

―条件要約―
・焦点距離はスマホ側に合わせて12mm 24mm 110mmで検証
・ボケ量もスマホ側に極力合わせる(ボケ量変更機能は使わない)
・使用するレンズ交換式カメラは、ランクとして最低スペックのもの(語弊あり💦)
・両者RAW撮影をして、持てる力の最大限でゴリゴリ現像
・どちらかをわざと悪く現像しない

→→→11年前の最低スペックのミラーレス機の画質は、最新ハイエンドスマホの画質とどのような違いがあるのか?を検証。ぶっちゃけ、どっちの画質が良いのかを比べていくもの

三眼カメラそれぞれズームできますが画質の悪くなるデジタルズームなので、12mm 24m 110mmの3種のレンズはズームを使用せず固定して撮影します


作例紹介

 作例には番号を振っておきますが、10年前のエントリーモデルミラーレス機とハイエンドスマホとどちらで撮影したかは記載しません。どちらで撮影したか予想しながら見てください。一応答え合わせは最後に載せておきます。

001
002
003
004
005
006
007
008
009
010
011
012
013
014
015
016
017
018
019
020



(答え合わせ)
G・・・Google Pixel 9 Pro
P・・・OLYMPUS PEN Lite E-PL7

001: P  011:P
002:G  012:G
003:G  013:G
004:P  014:P
005:P  015:P
006:G  016:G
007:P   017:P
008:G  018:G
009:G  019:G
010:P   020:P

 できるだけ両者画質を合わせるように現像しましたが、RAWのクセがそれぞれ違うということもあり、見る人を困らせるほど雰囲気を合わせるのが難しかったです。次項でそれぞれのRAWデータを編集してみての感想を述べていきます。

 別日に夜景撮影もしましたが、記事編集の関係上YouTube動画の方に夜景比較作例を上げておりますので、下記リンク先の動画もぜひご覧ください⬇⬇⬇



Google Pixel 9 Pro のRAWを弄ってみた感想

ある程度現像の知識や経験がないと扱いが難しそうな印象
複数枚を合成したデータのためかHDRのような質感
レンズ交換式カメラのRAWと同じような現像はできない
書き出されるJPEGはカリカリなのだがRAWは輪郭がモワッとして不自然
12Mも50Mも画素数の違いだけで解像感はほぼ同じ
50Mはミラーレス機でいうハイレゾショット的な感じのようだが、解像感や階調が良くなったなどの効果は感じにくい
カラーノイズがひどいので、AIノイズ除去とは別に手動でカラーノイズ除去をする必要があるものがある
さらに夜景撮影時はAIノイズ除去をかけても酷いノイズが残るため、手動で輝度ノイズも除去する必要がある。
ダイナミックレンジの粘りはあまりない
今のところJPEGより少し編集がしやすいかなという印象
スマホなど画面の小さいもので鑑賞するならまだしも、RAWの質も階調もまだレンズ交換式に成り代わるものではないという印象


OLYMPUS PEN Lite E-PL7のRAWを弄ってみた感想

一番扱い慣れているのRAWなので調整はそこまで難しくない
撮影の方法は今の私のスタイルと変わらず現像前提の暗め撮影
特にハイライトが弱く、白飛びしないように常に注意しなければならない
現行のOM-1 Mark IIと比べるとシャドウもハイライトも粘りが弱い
グリーン方向に色かぶりのクセがある
1600万画素でもトリミングをあまりしなければ現在でも十分通用できる
Google Pixel 9 Proと比べると断然現像しやすい
OM-1 Mark IIの後にE-PL7のRAWを弄ると少し扱いにくいと感じたが、Google Pixel 9 Proの後にE-PL7のRAWを弄るとめちゃくちゃ扱いやすい


比較検証結果

 比較条件に則って私好みのテイストで最大限の現像をしてみました。スマホ側の設定で「ウルトラHDR」がオンになっていたのが原因か、スマホ側のRAWが非常に弄りにくかったです。慣れないRAWデータでしたがクセを見抜きながら弄るのは興味深くかったので楽しくはありました。

 以上をまとめた上で、肝心な両者画質の比較検証結果については
まだまだ11年前の最低スペックミラーレス機の方が良い
と感じました。

それを決定付けた理由が大きく3つほどあるのですが、
・SNSサイズなら僅差だが、A4以上にプリントする際に差が出る
・ダイナミックレンジなど現像では対応しきれないセンサーサイズの差
・望遠レンズに解像度の明らかな差

などが挙げられます。 

 言い換えるなら、いくらカメラ機能ハイエンド機であっても、まだ一昔前の最低スペックミラーレス機の画質には追いついていない、と言うことでもありますね。

 しかしそれはあくまで現像したRAWデータに限ります。


JPEG撮って出しならどうなのか?

 そうはいってもRAW現像はできる人できない人、好みの方向性など様々なので一律な比較としては不十分かと思われます。なので結局JPEG撮って出しでの比較が一般的になるのでしょうが、それだと他のレビューと同じになってしまいます。今回のコンセプトとは少しズレてしまいますが、しかしこれも必要な検証の一つではあります。
 OLYMPUS PEN Liteについてはあくまで最高画質を求めるために暗めにRAW撮影している関係もあり、HDRのようにAI合成させて1枚の写真として撮影しているGoogle Pixel 9 Proの方がJPEG撮って出しでは画質が良いシーンが多かったと思います。

Google Pixel 9 Pro 撮って出し
OLYMPUS PEN Lite E-PL7撮って出し


Google Pixel 9 Pro 撮って出し
OLYMPUS PEN Lite E-PL7撮って出し


Google Pixel 9 Pro 撮って出し
OLYMPUS PEN Lite E-PL7撮って出し


Google Pixel 9 Pro 撮って出し
OLYMPUS PEN Lite E-PL7撮って出し

 

まとめ

 今回検証してみて、簡単に持ち運べて気軽にきれいな写真が撮れるハイエンドスマホの脅威は確かにあるものの、多少の知識や技術やコストなどが必要になるけどさらに一歩二歩進んだ撮影や画質となると、まだ一昔前の最低スペックのミラーレス機の方が有利にあると感じました。
 
 個人的には動画機としてこのGoogle Pixel 9 Proを手に入れたわけなんですけど、高画質動画も撮れてそれなり高画質でスチル撮影もできるので実際手に入れて良かったと思います。しかしながら私が撮影するスタイルの完全な互換以上の存在にはならないので、これからも安心してレンズ交換式カメラを使用し続けられるとも思います。


それでは今回はこのへんで。


(^_^)/~


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