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野鳥撮影で2倍テレコンは本当に"使える"のか検証 / マイクロフォーサーズ

 野鳥撮影をするときには、できる限り野鳥にストレスを与えない、自然環境を壊さないように撮影するため、その姿を大きく写そうと思うと、離れた場所から超望遠レンズで撮影する事となってきます。

 野鳥撮影では焦点距離600mmではまだまだ広角で、800mmから"標準"とされる世界です。より遠くの被写体を撮影しようと思うともっと近寄るか、それができない場合は「テレコンバーター」を利用する方法があります。

テレコンバーターとは
 メーカーによってエクステンダーと呼んだりしますが、要はレンズ交換式カメラで焦点距離を伸ばすためのアクセサリーです。ここでは省略して「テレコン」と書かせてもらいます。

メリット
 600mmや800mmなど、ラインナップ上、これ以上長い焦点距離が無いレンズであっても、更なる焦点距離延長をすることができることや、焦点距離の違うレンズを複数購入する費用や持ち運ぶ手間を省略できることなどが挙げられます。

デメリット
 全てのレンズがテレコン対応していないことや、F値が上がることで暗くなりボケ量も減ること、画質の低下が起こること、AF速度や精度が低下することなどが挙げられ、一般的には倍率が上がるほど性能低下するとされています。

OM SYSTEMのテレコン

 OM SYSTEMには現在1.4倍テレコンと2倍テレコンと、2種類のテレコンバーターがあります。

1.4倍テレコン
M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14
2倍テレコン
M.ZUIKO DIGITAL 2x Teleconverter MC-20


 もう手放してしまったのですが、過去にM.ZD100-400mmF5-6.3を使用していた時、「個人的には」相性はあまり良くないと感じました。
 ところがM.ZD300mmF4M.ZD40-150mmF2.8とは1.4倍テレコンとの相性が良く、性能の低下もあまり感じられないので、野鳥撮影にも十分使えるものだと感じています。
 しかし2倍テレコンを使用すると性能低下が著しく、瞬発力を必要とする野鳥撮影において致命的な性能低下を及ぼす場合もある、とされています。

性能低下の基準

 性能低下と言っても、私自身は使えないと判断しても他の方には許容できる範疇だったりすることもありますので、その判断については使用者の主観によるものが大きいと思います。なのでこの場合、私自身が基準としているものは

AF速度・精度
②細部の解像感
③輪郭のシャープさ

の低下が、撮影時や現像時に致命的なものになるかを判断としています。これらが許容できる範囲内に収まるかが私の基準となっています。

以上のことを踏まえて検証してみたいと思います。


が、先に結論的なことを言うと


1.4倍テレコンについては①〜③はクリアしています。

むしろ普段はこのセットで撮影すべきとも言えるレベルです。


問題なのは今回のタイトルにもある2倍テレコンです。



2倍テレコンの問題点

 デメリットの項目でも説明しましたが、2倍テレコンを使用すると明るさは2段分暗くなります。それに付随してボケ量も減少し、解像感やコントラストや彩度も低下します。コントラストAFを採用しているOM SYSTEM機では特にコントラストが低下することがAF性能低下の原因となり動体撮影に大きな影響を与えてきます。

と、検証当初は思っていましたが、

 個人的な使用感ですが、テレコン未装着でもISO値が1000を超えるとAF精度も画質も低下します。なので前述した問題点については必ずしも単純に"2倍テレコンだから"という理由だけで片付けられないのでは?と疑問を持ち、これらの点についてもう少し検証を煮詰めてみたいと思いました。


2倍テレコン性能検証方法

 しかし何せ2倍テレコンを付けたら明るさが2段分も落ちますので、野鳥撮影、特に飛翔撮影ではシャッタースピードやISO値が稼げず均一な撮影設定での比較が困難です。特にOM SYSTEM機はISO値が上がると画質低下が大きいため、特にシャッタースピードよりもISO値をできるだけ200に揃えるように検証を試みてみました。また、作例は1.4倍テレコンと2倍テレコンと、画角に対して距離ではなく被写体の大きさをなるべく揃えて解像感を比べました

 作例は全てLightroom ClassicでAIノイズ処理とレタッチをしています。私なりのやり方でどれほど比較作例の画質を揃えられるかを試していますので、撮って出しでこの画質で撮影できるものではないことをご理解ください。

作例撮影機材:
OM SYSTEM OM-1 MARK II
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO

OM SYSTEM ドットサイト照準器 EE-1

1.4倍テレコン
SS1/800 f/5.6 ISO250 0EV 焦点距離841mm
未トリミング
1.4倍テレコン
SS1/800 f/5.6 ISO250 0EV 焦点距離841mm


2倍テレコン
SS1/1000 f/8 ISO200 -1.0EV 焦点距離1202mm
未トリミング
2倍テレコン
SS1/1000 f/8 ISO200 -1.0EV 焦点距離1202mm


・・・あれ?
 撮影条件に多少の差はあるものの、虹彩の描写や羽毛の解像感は1.4倍テレコンも2倍テレコンもそれほど変わらないように見えます。輪郭もボヤけがなくクッキリとシャープですし、少なくとも大幅な画質劣化とは言えないレベルかと思います。
 被写体となったこのタゲリという野鳥はマイクロフォーサーズ泣かせの白黒もあり光沢感ある暗緑色ですが、色階調もしっかり描写しております。1.4倍テレコンと比べて360mm焦点距離が延長されてもこの描写ならば、前述した性能低下の基準項目の②と③はクリアしていると言えます。

 では、①AF速度・精度はどうなのか?
私の感覚的なものなので異論はあると思いますが、

条件は相当限られるが、場合によってはほぼ変わらない


と思いました。
ではその条件とは何なのか。

a. 画角内に被写体以外の障害物がほぼ無い
b. 快晴
c .被写体をちゃんと画角中央に捉え続けている


ということです。
あくまでOM SYSTEM機での条件です。
以下ではその理由を説明いたします。

a. 画角内に被写体以外の障害物がほぼ無い

 これはテレコン有無に限らないですが、余計なものは無いに越したことはないです。

b. 快晴

 いくら明るいサンヨンでも2テレをつければ開放F8です。未装着で1/4000のところが2テレを付けてISO値を揃えると1/1000まで落ちるため、とにかく快晴で明るさを稼げる状態が必要になります。また明るくなることにより2テレ装着による低コントラストを抑えることにもなります。

c.被写体をちゃんと画角中央に捉え続けている

 これが一番難しいと思います。600mmの水平画角1.65°に対し1200mmでは0.826°です。1200mmの画角から外れてしまうと再度画角に入れ直すのが難しいですし、いくら手ぶれ補正が強力なOM SYSTEM機であろうと1200mmともなると僅かなブレが画質に大きく影響して解像感の低下の原因となります。できるだけ三脚やドットサイトを使用する必要があります。(検証作例は全て手持ちで撮影していますが…)


2倍テレコン
SS1/2500 f/8 ISO320 -1.3EV
撮影時の僅かなブレがピン甘の原因になるのでブレに対しては特に細心の注意を


2倍テレコン
SS1/2000 f/8 ISO160 -1.7EV
1/2000でも手ブレはなかなか抑えられない
カメラの振り方は1.4倍テレコンと同じ感覚では使えない


2倍テレコン
SS1/2000 f/8 ISO2500 -1EV
aとcの条件はクリアしたが、曇りISO2500が解像感低下の原因に


2倍テレコン
SS1/1250 f/8 ISO800 -0.7EV
 a~cの条件がギリギリ合った一枚
手持ち撮影だったが何とか運良く飛行速度と同調して顔に合焦



2倍テレコン検証まとめ

 1.4倍テレコン使用時は性能低下があまり感じられない分、2倍テレコンを使用した時の性能低下の落差が大きいと私は使用当初感じていたのですが、その理由と原因と解決策を私なりに色々と試してみた結果、

撮影条件さえ揃えばそれほどの画質低下は無い


という結論に至りました。

 2倍テレコンは画質劣化が酷くて使えないと思い込んでいたので、この結果には私自身も意外に感じました。


 2倍テレコンが使いにくいと思っていた主な原因を簡単にまとめると、 

・F値が上がってもSSを落としきれずISOが上がってしまい画質が低下した

・画質を優先しすぎてISO1000以下を頑なに守った結果、SSが下がりすぎて被写体ブレを起こした

・2テレを使うとカメラのブレ(手ブレ含)が画質に影響するのも2倍になるが、ブレを止める為に必要なSSが足りなかった

ということなどが考えられます。

 OM SYSTEM機での2倍テレコンは基本的に上記のことを理解して使用すれば留まりものなら普通に良い画質で撮影できると思います。飛びものや動きものも撮れないことはないものの、解像感を求めるなら快晴の日を選びましょう。

でもまあ、それでもハッキリ言うと

理屈や理由を分かっていてもやっぱり使用していてストレスはあります

 無理やり2倍テレコンを使ってシャッターチャンスを逃すくらいなら、1.4倍テレコンを使って後からトリミングする方が歩留まりも画質も良いケースもありますので、使用場面はよく選んでください。


総括

 いくら快晴の日が良いとは言っても、遠い被写体を撮影しようとすると陽炎の影響で画質がゆらいでしまうので、野鳥撮影に対してカメラの性能ではどうしようもできないこともあり、遠くまで写せることは良いことばかりではないとも思います。
 また、マイクロフォーサーズセンサーを搭載するOM SYSTEM機がいくら野鳥撮影に向いていたり、機材に撮影性能が備わっているとしても、それを理解して使いこなす使用者の技量や習熟度などが必要なケースも多いと感じます

 今回の記事のタイトルで、2倍テレコンは"使える"のか、というのはそういう意味を含んでおります。そういう意味で言えば「使える」とは思います。

が、

ぶっちゃけ言うと

個人的な
あくまで個人的な意見ですよ?
あくまでも…(予防線)


他の方がどう感じるかは置いておいて、


1.4倍テレコンも2倍テレコンも「解像感」に重きを置いた場合、対応できる焦点距離はどちらも変わらないかな…と。

だったら1.4倍テレコンだけでも…(( ;*д*))o=3=3 ゴホゴホ


今回の記事はYouTubeにも投稿しておりますので、こちらもぜひご覧下さい🙇🏻‍♂️



それでは今回はこの辺で(汗)

(。・ω・)ノ゙




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