両極端な特徴を持つ超広角レンズを撮り比べ / マイクロフォーサーズ
星景写真を撮影する人によく使われるレンズにフィッシュアイレンズというものがあります。魚眼レンズとも呼ばれ、通常のレンズとは異なり景色を極端に歪曲させることにより、同焦点距離の超広角レンズよりさらに広範囲を撮影することができます。角度によってはダイナミックな表現もできるため、星景写真だけでなく個性的な表現をしたい人にもおすすめのレンズです。
意図的に歪曲収差を出す魚眼レンズとは真逆の、歪曲収差がゼロの超広角レンズというものもあります。いわゆる普通の超広角レンズというのは周辺画像が僅かに歪曲します。レンズによっては歪曲が自動補正されますが、その分画角が狭くなり画質が落ちます。しかしこのレンズは超広角レンズにもかかわらず撮影時点から直線を端から端まで歪まない直線で描写できるので、その特性を活かして建築撮影や風景撮影などに活躍できます。
今回の目的
超広角レンズの中でも特徴的なこの2種類。購入優先度からすると、まずはM.ZD7-14や8-25、パナライカ8-18など、いわゆる普通のメイン超広角レンズを所有していて、その補佐役的なものとして買う人が多いのではないかということや、若干用途が特殊ということなど、実際使いこなせるのが心配でなかなか手を出せないという人もいるのではないかと思います。
今回はこの魚眼レンズとゼロディストーションレンズで撮り比べをした作例を交えながらご紹介したいと思います。今回の記事を読んで、皆さんの今後のレンズ購入計画の参考にしていただければと思います。
魚眼レンズの種類
魚眼レンズは大きく二種類にあります。一つは「対角線魚眼」、もう一つは「円周魚眼」というものです。
M.ZD 8mm F1.8やLUMIX G 8mm F3.5など、市販されている魚眼レンズの多くは対角線魚眼にあたります。今回の主題となるレンズです。
円周魚眼はさらに特殊な写り方をするレンズで、画面全体が円形に歪んで写り、四角い画面の中に丸い写真が収まります。マイクロフォーサーズ用ではLAOWA 4mm F2.8やMEIKE3.5mmF2.8などがそれにあたりますが、今回はこのレンズについては触れません(特殊すぎて私はまだ触ったことも使ったこともないのです)。
魚眼レンズのメリット&デメリット
魚眼レンズのメリットとしては、大きな歪みを利用して空や建物などを丸く写せる、超広角をダイナミックに描写できる、近くのものをより大きく遠くのものをより小さく写せる、など通常の超広角レンズではできない独特な表現が可能になります。
デメリットとしては、周辺解像度が大きく低下したり、個性的であるがゆえに使用場面が限られるなどと言われていますが、個人的に風景写真では意外と活躍する場面は多いです。デメリット要素と言われるものは使い方や撮影シーンによってはそれほど気にならなくなることもあるのですが、こればっかりは実際にご自身が使用してみてからじゃないと分からない点が出てきます。
ゼロディストーションレンズのメリット&デメリット
歪曲収差については電子接点のついている純正レンズなどで自動補正できるものも多いですが、現像ソフトによってはその他のレンズも含め手動で補正することも可能です。しかし歪曲収差を補正することにより画像周辺部がトリミングされて狭められたりすることがあります。ゼロディストーションレンズならばその差分が無く、超広角の画角と歪曲収差ゼロのメリットを最大限活かして撮影できる、さらに動画撮影ではそのメリットが更に活かせると思います。
またゼロディストーションのデメリットとしては、周辺部の描写が引き伸ばされ平面的になりやすいので撮影する被写体や状況により不自然な感じが目立ちやすいという点です。他にも、超広角レンズのラインナップが多い事や、現像ソフトで歪曲補正も手軽にできるようになったせいもあるのか、扱っているメーカーが少ないのもデメリットとも言えます。
今回使用するレンズ紹介
PERGEAR 7.5mm F2.8 Fisheye…画角130°
魚眼レンズの多くは180°を中心とした画角が多いのですが、このレンズは130°なので比較すると狭い画角になります。個人的にはわざと歪曲収差を強めた超☆超広角レンズという感覚で使いやすい魚眼レンズだと思って使用しています。価格はなんと15000円ほどで手に入り、MFT用で最広角の魚眼レンズ(7.5mm)中では最安値になるかと思います。下で紹介するLAOWAのレンズと画角が近いので比較しやすいので採用しました。
LAOWA 6mm F2 Zero-D MFT…画角121.9°
MFT用レンズの中でも最広角を誇る超広角レンズ。それだけでも凄いのに更に歪曲収差ゼロという特徴を兼ね揃えています(正確に言えばほんの僅かに歪みは有る)。上に紹介したPERGEARの魚眼レンズと同じくマニュアルフォーカスレンズですが、こちらには電子接点が付いているので絞り値を含めたExif情報が保存されます。しかし価格は約94000円ほどするため、MFT用マニュアルフォーカスレンズとしては高額の部類に属します。コスパとしては価格相応な印象です(過去のLAOWA記事参照)。
比較描写作例
PERGEAR 7.5mm F2.8 FisheyeはOM-1 MARK IIに、LAOWA 6mm F2 Zero-D MFTはOM-1に装着して、同じポジションから絞り値を変えて撮影。
①開放F値 ②f/4 ③f/8 ④f/16(LAOWAの最大絞り)
Mモード撮影
ノイズ除去無し
トリミング無し
露出補正無し
全て補正無しの撮って出し
写真が見にくい場合は画像をピンチアウトで拡大できます
各レンズの特徴
PERGEAR 7.5mm F2.8 Fisheye
開放時の周辺減光はややあるものの、少し絞れば目立たなくなります。中心部の解像度はそれなりに良いですが、周辺部の解像度は魚眼レンズに求めてはいけないので言及しません。シーンによって倍率色収差や軸上色収差が目立ちます。逆光耐性は弱目。レンズコーティングされていないせいなのか、汚れが付着するとクリーニングに手間取ります。出目金構造でレンズガードフィルターが装着できないので清掃時は慎重に。派手さは無いが10枚絞り羽根の10本光条は個人的に好み。レンズ口径が大きいので明るさは問題ないが、ボケ量(開放時F5.6相当)としてはあまり期待できないですが、15000円という価格を考えれば全体的な描写は悪くないと感じます。描写画角は一般的な魚眼レンズの180°と比べると130°と狭いので、大きく歪ませたい人にとっては少し物足りないかも知れません。
LAOWA 6mm F2 Zero-D MFT
このレンズ、F2と謳っておきながらその口径の小ささからか全然明るくないです。また周辺減光も強く、絞ってもほとんど解消されません。ボケ量(開放時F4相当)は、よほど近くに被写体を置かない限り期待してはいけません。解放時の描写はややシャープさに甘さが出るが、F4くらいまで絞ればほぼパンフォーカスになり、直線に歪みのないシャープな解像感が際立つ描写になります。逆光耐性はPERGEARほど弱くはないがそこまで強くはなく、強い光源に向けるとフレア・ゴーストは破綻レベルで目立つケースも出てくる。5枚羽の10本光条は先尖りで長く出てくるのは個人的に好印象。ズイコーPROレンズ並の94000円という価格を考慮すると倍率色収差や軸上色収差が目立つケースもあるので、描写力は悪くはないが飛び抜けて良いというわけでもないという印象です。
このレンズの売りである「換算12mmの超広角」と「ゼロディストーション」に購入者がどれだけ価値を見出すかが重要になるレンズだと思います。
応用編
これからは前述までの各レンズの特徴を考慮した上で最適なシーンを選び、レタッチした作例をご紹介します。ある程度現像ソフトを使いこなせれば、これらレンズの良さをさらに引き出すことができると思います。
LAOWA 6mm F2 Zero-D MFT
総括
今回はわざと歪曲させる魚眼レンズと、歪曲を許さないゼロディストーションレンズと、相対する2本のレンズを撮り比べてみました。
公表されている画角ではややPERGEARが広い画角数値でしたが、撮り比べをしたものを見てみると数値ほどの差は感じられませんでした。ただしこれがズイコーの8mm F1.8 Fisheyeなど他のレンズになると画角の差や描写力の差が出てくるかと思います。
今回の目的はこれらレンズが若干用途が特殊ということで、買ったはいいけど使いこなせるかが心配になる方が居るのではないかということで語ってきました。個人的には個性が出て使いやすいのは魚眼レンズの方ではないかと感じました。
LAOWAの超広角ゼロディストーションは近距離スナップではやや描写に違和感が強い印象ですが、シャープさのある直線描写や風景描写はビルなどの建造物撮や物撮りなどで活躍できそうな印象です。残念ながら私は田舎に住んでいることもあって作例に特性を活かしきれませんでした。
これまで両者のメリット・デメリットを語ってきた上で共通して言えることは、風景や星景といった場面では普通の超広角レンズ並に活躍してくれるということです。そのためこれらレンズは風景写真、星景写真、夜景写真などを主に撮影している人にとっては特に有用なのではないかと思いますので、まだ所持していない方は今後の購入プランのひとつに検討してみてはいかがでしょうか。
それでは今回はこの辺で。
(・ω・)ノシ
今回ご紹介したレンズ⬇
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