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【認知症映画#2 】パーソナル・ソング


あなたのパーソナルソングは何ですか。

パーソナルソング
それは好きな音楽。思い出の歌。
体に刻まれたメロディ。

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監督は90歳の老女に問いかける。「あなたはどんな子供だった?」「・・・まったく思い出せないわ」「何を思い出せないの?」「・・・若いころにどう過ごしていたのかが全く思い出せないわ」そんな彼女に、iPodでルイ・アームストロングの「聖者の行進」を聞かせてみる。すると老女の目がキラキラと輝き始めた。「これはルイ・アームストロングね、学生時代を思い出すわ。母に内緒でコンサートに行ったの!」ひとつの歌から紡ぎだされる思い出は次々にあふれ、彼女は記憶を呼び覚ました。(C)ALIVE INSIDE LLC 2014

(引用:Amazonプライムビデオ)

アメリカの現状

アメリカでは500万人が認知症と言われ、介護に関わる人々は倍の1000万人いるとされている。

ドキュメンタリー映画「パーソナル・ソング」ではそうした人々の、介護施設での無気力さと音楽療法の効果について語られている。

介護施設の中で、高齢者たちは薬物療法で管理され、孤独と無気力さにさいなまれ、内向的に陥りがちだと言う。

発展した社会の中で最も豊かな時期は青年期とされ、自立を促す社会の中で、高齢者は社会の枠組みに当てはまらず、目を背けられた存在だ。

そんな状況を変えようと、ソーシャルワーカーのダン・コーエンが、その人に合った音楽を聞かせようとある取り組みを始めた。

それぞれのパーソナルソング

人は、母親のお腹にいる時に、母親の発する声を通じて、音やビートを身につけ、産まれた時には、歌う技術が身につけられているのだと言う。

私の母は、私がお腹にいる時にどんな生活をし、何と声をかけて慈しんでくれたのだろうか。

10代、20代、30代、長い人生を通して、その時々に流行った歌や好きな曲。
音楽に興味がないとしても、生活する中で耳にした音は、体に刻まれ、その音を再び聞いた時に、その当時のことが思い出されることはないだろうか。

過去を思い出し、リズムにのることで、心と脳が刺激され、傷付いた心が癒される。

内向きになっている認知症患者の嗜好や、過ごした地域、年代からその人の人生を紐解きつつ、オリジナルのプレイリストを作り、本人に聞かせるのだ。

すると、まだらな世界にいる身体が刺激され、日常会話もままならない人々が、体を揺らし、メロディを口ずさむ。目に精気がやどる。

音楽療法がどんな薬よりも効果的であることは、認知症を長年研究し、アリセプトやエクセロンを開発した研究者からも支持を受けている。

普及への険しい道

しかしながら、"霧につつまれた介護施設"からは、音楽療法は最初難色を示された。

ダンの推し進めるパーソナルソングは、一人一人に合ったプレイリストを作成し、個々にヘッドフォンとiPodを渡すため、利用者全員に与えられない資金的問題や、パーソナルソング療法の実用性への疑問視する声が根強かったのだ。

日本の介護施設では、デイサービスの活動の中にカラオケがあるが、マイク争奪戦があったり、人前で歌うことが恥ずかしいことがある。

ダンのパーソナルソング作戦は、映画が撮られた2014年時点で当初56の施設にしか受け入れられなかったのが、650ヶ所にまで広まった。

目覚めたその先

音楽によって心が開かれ、再び目に力が宿るようになるのはとても素晴らしい。

ただその先が少し気になった。

脳が刺激され、開け放たれた心を持った高齢者たちは、その後どのように生活が変化するのだろうか。

音楽ではないが、私の母は認知症のためのリバスチグミンという貼り薬を使用し出してから、意識が少しはっきりとするようになった。

すると、これまでぼんやりした哀しみに覆われていた意識が、自分が認知症であることを理解し苦しむようになったのだ。

苦しい、つらいと漏らすようになった母を見ると、まだらな世界のままで良かったのではないか、何のために治療をするのだろうかと悩む日々が今も続いている。 

最後に

音楽で開け放たれた心は癒しにもなるが、変に本人を苦しめないか。

映画を見ていて、そんなどうしようもない心配が心をよぎった。だが、それは私の勝手な杞憂である。

母のプレイリストを作ってみて、聞かせてみよう。そして一緒に歌ったり、どう感じたのか尋ねてみよう。

母がその時浮かべる表情や声色で、音楽療法をどう取り入れるか考えよう。

お母さん、あなたのパーソナルソングはなんですか。

私は、あなたと父が家でかけて、一緒に歌ったSimon &Garfunkleの歌の数々が、私のパーソナルソングです。

追記:母のパーソナルソング作成してみました。母と話しつつ内容を充実させたいと思います。

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