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【介護日記】私の夜明け前
The darkest hour is just before the dawn.
夜明け前が一番暗い
私の夜
私の夜はトイレ介助からはじまる。そして、母の徘徊する物音で、朝が来たことを知る。
夜、浅い眠りの中、少しの物音でもがばりと起きて、母の寝台に目をやる。
時には近くまで行って、ああ、呼吸をしているなあ、と安心することもある。
夜。
それは長い闘い。
夜明け前
私のうつがまたひどくなって数ヶ月。
1月から今にかけて特にどん底だった。
派手なODをしてしまったし、腕に切り込みをいれたり、首をくくろうともした。身体が動かずに仕事を何度か休んだ。
母にてをかけようともした。
また恋人に別れを切り出し、結果、めちゃめちゃ怒られた。
LINEも消して関係をいろんな人と絶った。
でも電話や直接訪問など色んな方法で、たくさんの人から連絡が来た。
ただ絶望的にどん底にいるため、そのどれもが、優しさが煩わしく、放っておいてくれと耳を塞ぎ布団に潜り込んでいた。
実際起き上がれなかった。
もう、私は本当にだめかもしれない。
母を置いて逝ってしまいたい。
何度も思い、幾度となく涙した。
それでも、なんとかどん底から、少しずつ、それこそナメクジのような遅さで、ゆっくりと這い上がってきている。
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白み始めた空
母の認知症はゆるやかだが、少しずつ進行し、ため息をつくことも増えた。
まどろみの世界にいる母相手に、上手くやれず、その度に苦しくなる。
きっと一人でいたら仕事は辞めてずっと引きこもって、この夜明け前の暗さを独り耐えていただろう。
でも私には母という経済的にも、身体的にも守らなければならない存在がある。
それでも苦しくて、白み始めた空をカーテンの隙間から見ながら、母の寝顔を幾夜も眺め、泣いては眺め、ある日、決心をした。
母を私という夜に引き込んではいけない。
母を手放そう、と。
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まぶしい朝焼け
先週から母はロングショートステイに旅立った。
そして私は再び入院することになった。
入院前に一度母に面会しに行った。
手にはたくさんの差し入れのおやつと薬をもって。
私をみた途端、顔をしわくちゃにさせ、泣きながらハグをしてくる母がいた。
母には寂しい思いをさせてるだろう。
でも、鬱々とした夜明けが去り、眩しい朝焼けが私たち二人に降り注いでいる。
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カゴの中の鳥
かつて同僚に言われた。
「あなたがしていることは、お母さんをカゴの中の鳥にしてしまってるんじゃないの」と。
なので、朝がきて、私は母のゲージを開けた。
母は我が家の陰鬱とした空間から飛び立った。
そして私もまぶしさに目を細めつつ、入院先の病院にたどりついた。
また夜明け前の暗さの中に、私はうずくまる時がくるかもしれない。
でも飛び立った母を再びケージに戻そうと思わない。
美しい鳴き声を人々に聞かせる母を、
私は遠くからずっと見守ることにしよう。
我が家の夜は明けた。
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