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ラーニングコモンズ増築【Möbius Open Library Report Vol.16】

Moebius Open Library(メビウス・オープン・ライブラリー:略称MOL)は東京学芸大Explayground推進機構のラボの一つとして、図書館と知の未来を志向し、活動を行っています。昨年2021年はアウトプット少なめでしたが、実は、東京学芸大学附属図書館の増築の最終仕上げの年でしたので、図書館のMOLメンバーは本務に邁進していました。新ラーニンコモンズにはMOLの考え方が色濃く反映されています。今回はそんな図書館増築の裏話を書いてみたいと思います。

図書館増築への道のり

今回の図書館増築が決まったのは、2018年12月のことでした。私(ななたん)が東京学芸大学に赴任する3か月前のことです。「TERAKOYA☆コモンズ:教え合い学び合う」というコンセプトが掲げられ、旧図書館の東側に地下1階地上4階の増築を行うという計画でした。図書館は単に本が置いてある静かな場所ではなく、本を片手に時には仲間と会話しながら、学びを深めていくラーニングコモンズが設置されるケースが増えています。学芸大の図書館1階のラーニングコモンズは2015年に開設されましたが、学生からの人気が高く手狭になっていたため、その拡張には大きな期待がありました。

2019年度になって、新ラーニングコモンズを検討していく過程は、ちょうどMOLのラボ活動が始まった頃と重なっており、「知の循環」というMOLのコンセプトは新ラーニングコモンズの空間設計に大きな影響を与えました。おさらいしておくと、メビウスの輪は、図書館の活動(知の収集→整理→保存→提供)と学びの活動(知の吸収→活用→創出→発信)との間を循環しています。ラーニングコモンズという場所は、まさしく学びの活動の場であって、新ラーニングコモンズの「出会い、深め、作り、伝える」というコンセプトはメビウスの学びの輪に対応しています。全体をいくつかのエリアに分け、吸収のための場には知的刺激のえられる資料展示を、活用・創出の場ではグループワークもできる稼働式の机を、発信の場にはプレゼンテーションのできる設備を、といった具合に、知の吸収・活用・創出・発信のための仕掛けを準備することを第一に考えました。

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当初は2020年1月に着工、2020年12月に完成の予定でしたが、事務室の引っ越しも済ませた2020年4月、コロナ禍によって工事が中断してしまいます。影響は工事が遅れたことだけではなく、人々が集まり、密にグループワークがしやすい場所の提供だけでよいのか、オンラインの需要への対応も必要なのではないか、ウィズコロナ・アフターコロナの時代のラーニングコモンズとは如何にあるべきか、再考を余儀なくされました。予定していた什器の一部をオンライン授業用のブースに変更したり、グループワーク用の机も一人席を離したり組み合わせたりできるようにしたり、動線の確保を検討したりと、ソスとミカンが中心となって、計画を再考していきました。この状況は世界的なことなので、フランス在住のラーニングコモンズ研究者John Augeri氏と、海外動向についてのオンラインミーティングもしたりしながら、考え抜きました。

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ラボ連携の中から

ところで、コロナで対面の活動が制約されていた頃、Explaygroundでは、ラボリーダーが集まってオンライン交流会を行う機会がありました。そこで、ななたんは偶然にもGreen Tech Engineeringラボ(以下、GTE)のレンさんと話をすることができました。GTEでは中学生たちが森から木を切出し、木製品を製作するという活動を行っています。計画変更となった増築部に十分な数の什器を整備できるのかが気がかりだったななたんからレンさんにお願いして、GTEがベンチを製作してくれるという話がまとまりました。

緊急事態宣言が解除される隙間を縫って、ベンチ製作は開始され、MOLメンバーも活動を見学に行きました。中学生たちは男子も女子も協力しながら、木を板に加工し、2枚継ぎ合わせ、カンナで削り、足をつけています。出来栄えは想像以上に本格的なものでした。現在は、教科書コーナーの横に置いてありますので、荷物をちょっと置いて資料を見るのにちょうどよく、大学生の皆さんによく利用してもらっています。

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リニューアルした図書館の見どころ

リニューアルした1階のラーニングコモンズには、グループ学習用の通称ファミレス席、落ち着いた床色のカフェ風コーナー(飲食はできないけど)など「出会い、深める」場所と、ラーニングコモンズの顔である積み木箱展示、天吊りプロジェクタも配置したプレゼンテーションスペースといった「作り、伝える」場所を設けました。コロナ対応としては、オンライン授業でも利用できる個人ブース、長居しないようにちょっと座りにくい椅子のミーティングコーナー、アクティブエリアの床はソーシャルディスタンスがわかりやすい1メートル角の市松模様にし、全体に回遊動線も確保しました。また、デジタルの一層の進展を見越して、WiFiは完備。大型プロジェクタやデジタル教科書を接続して利用できる電子黒板を導入し、誰でも自由に電源を入れて使うことができるようにしています。

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一方、増築部2階のインフォメーションコモンズの整備には苦心しました。静かに電子機器を使ってもらうスペースとして、床色は青とし、ソファとポール型電源を準備していたのですが、あまり利用されません。座席と窓との位置関係も悪く、どうも居心地の悪い空間になっているようです。数少ない壁際の電源のある席だけがよく利用されていました。そこで、一人用の電源席を増やし、ソファーの配置も変え、窓際にはハイテーブルを置いたところ、多くの学生さん達が使ってくれるようになりました。まさしく、観察(Observe)→判断(Orient)→決定(Decide)→行動(Act)のOODAループがうまくいったのではないかと思います。

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なお、今回の増築では、地下書庫も拡張しており、電動集密書庫で収容能力も格段にアップし、念願だった貴重書庫も整備しました。「知の宝庫」の整備はメビウスの輪の図書館側のお話ですが、貴重資料の話はまた別の機会に譲りましょう。

リニューアルオープンを経て

工事の完成・引渡しが2021年5月、その後、半年かけて什器の搬入や地下書庫への電動集密書架の設置を経て、2022年1月11日には、学内関係者だけのささやかなセレモニーを行いました。当日の様子は図書館の公式ページにも報告記事が載っています。

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リニューアルオープンしたラーニングコモンズですが、本格的に利用されはじめたのは、大学が対面授業を原則とすることになった2022年度に入ってからです。これから、ますます学生の活動が活発になっていくことでしょう。私達MOLメンバーも、新ラーニングコモンズを舞台に活動を展開予定です。それらはまた次の機会に書いてみようと思います。(文責:ななたん)

【これまでのMOL Report(抜粋)】
No.1 Explaygroundと図書館の出会い
No.13 デジタル書架ギャラリーアップデート
No.14 オンライン読書ルーム担当者交流会
No.15 図書館の使命と目標を策定する

【Explayground URL】 https://explayground.com/


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