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もくめ文庫備忘録

2024年5月~7月の3ヶ月間、札幌のSeesawBooksさんという本屋さんでオーナー制の棚を借りて、「もくめ文庫」という小さな本屋さんを経営しました。
もしかしたら、「自分もやってみたい!」と思っている方がいるかもしれないので、私がどういう経緯で始めて、経営して、終了したのかを簡単に書いてみたいと思います。

1.きっかけ

棚を借りることになったきっかけは、2024年3月末に東京に遊びに行った際に、「渋谷Longbooks」さんという棚を拝見し、「札幌にも短歌の同人誌や歌集が置いてある棚があったらいいのにな~」と思ったことです。
札幌に帰ってからそういう書店さんはないかなと探したのですが、私が探した限りは札幌には見つかりませんでした。
「ないなら作るか!」と思い立ちまして、一箱本棚を貸している場所が札幌にないか探すことにしました。

2.棚探し

私は札幌に住んでいるので、また札幌の話になってしまうのですが、検索してみると、SeesawBooksさんという本屋さんがオーナー制の棚を貸していることが分かりました。

まずは、SeesawBooksさんに足を運び、どのような雰囲気なのかを確認しました。
店内は静かで、木の本棚の匂いがして、新刊書だけでなく、ZINEと呼ばれる同人誌なども置いている本屋さんでした。
ここの雰囲気ならマイペースにやっていけるのでは?と思い、お店の方に声をかけ、オーナー制の棚を借りることを検討していることを話しました。
その日は、説明のチラシを頂いて、検討しますということで帰りましたが、ほとんど借りることを決めていました。

後日、メールのやりとりをして、正式に借りることが決まりました。

3.契約について

SeesawBooksさんの棚は、3ヶ月契約で更新していきます。
最初に3ヶ月分の「家賃」を支払って、3ヶ月の終わり頃に、更新するかどうかをお店の方に連絡します。
私は、初めの頃は更新して長く続けていけたらと思っていたのですが、3ヶ月の終わりごろには気疲れもあったため、無理せずに3ヶ月で終了することにしました。

4.本集め

棚を借りることが決まって、本を集めることにしました。
まずは、私家版歌集を置きたかったので、Xでオーナー制の棚を借りることを宣伝し、私家版歌集を出している方からの連絡を待ちました。
結果的に、3ヶ月を通して、7名の方から声をかけて頂くことができました。

XのDMで個別にやり取りし、以下の内容をお伝えしていました。
・買い切りで対応すること
・納品価格で買わせて頂くこと
・支払いは銀行口座を伺って支払わせて頂くこと
・振込手数料は私が負担すること
・郵送料は著者様に負担して頂くこと
・冊数は4冊ほどを想定しているが、希望があれば承ること
雛型のようなものを作っておいて、相手に合わせて内容を変えるようにすると、楽だと思います。

また、私家版歌集だけでは棚がまだ空いていましたので、自分の好きな本も置くことにしました。
歌集や句集、エッセイなどを古本で購入し、基本的には中身をすべて読んで、「これは人に薦めたい本だな!」というものを置くようにしました。
手書きの帯を付けて、ちょっとした書店員さん気分を味わったりもしました。

5.値付けについて

自分がオーナーとなるため、一冊一冊に値付けが必要になります。
私家版歌集は、文学フリマというイベントで売っている方が多いので、その時の値段で売らせて頂きました。
自分の好きな本は、古本で買った値段と、もともとの定価を比べて、「このくらいだったら自分は買うかな?」と感じる値段を直感で付けさせて頂きました。

6.本以外に買ったもの

ブックスタンド、本の表紙を見せて飾るスタンド、段差をつけるための小さめの箱を買いました。
あとは、ポップを飾るため、イガラシプロさんの「ポップ君」という商品を買いました。

7.本の管理

本を納品したら、エクセルで管理するようにしていました。
冊数が増えてくると、自分の記憶だけだと不安でしたので、エクセルに書名や値付けした金額を記録していました。
SeesawBooksさんでは、商品が売れるとネットで共有して頂いている表に載せてくださっていました。
エクセルと表を見比べて、「今これくらい棚が空いてるはずだから、もう少し本を増やそうかな?」などの検討を行いました。

8.宣伝活動

棚を準備したら、人に知って頂く活動をしました。
Xで宣伝したり、Discordのコミュニティで宣伝したり、家族や友人に言ってみたり、名刺を作ってイベントで配ったりもしました。
宣伝の効果があったのか、月の精算の際にお店の方から「棚オーナー制でこんなに売れるのは珍しいですよ」と言って頂くこともできました(ちなみに、3ヶ月で28冊が旅立っていきました)。
読んで頂いている方で、宣伝に協力して頂いた方や、実際にお店に来て頂いた方がいたら、改めましてありがとうございました。

9.終了について

「3.契約について」でも書きましたが、契約した当初は長く続けていけたらと思っていたのですが、3ヶ月の終わりごろには気疲れもあったため、無理せずに3ヶ月で終了することにしました。

気疲れの具体的な内容としては、実際に本を買ってくださる方がいて、私にお金が入ってくるという状況が、緊張をもたらしていたことに起因する気がします。

本が売れるととても嬉しいです。
私家版歌集が売れると、札幌にもニーズがあったんだなと思えました。
自分が帯を書いた本が売れると、もしかしたら私のお薦めしたい気持ちが伝わったのかもしれないと喜びました。
でも、お金を払って頂いているということは、私は責任を負っているのだと、本が初めて売れた日から実は緊張も生じていました。
その緊張は、ずっと続けていくには、私にはちょっと疲れすぎてしまうなと思ったため、3ヶ月という短い期間ではありますが、終了することにしました。

本当は、「札幌にこういう場所があるよ!いつでも来ていいよ!」という場所にしたかったのですが、ここで無理をしても私が楽しくなくなってしまうと思いました。
実際にお金のやり取りをすることは、とてもやりがいがありました。
ただ、「趣味の範囲を超えていないか?」とも思ってしまう瞬間もありました。
もし、実際に棚を借りてやってみようという方がいたら、こういうところで心に負担を感じる可能性もあるんだなぁと参考にして頂けたら幸いです。

10.おわりに

気疲れしたとは書きましたが、本が売れたと分かった時は思わずガッツポーズをしてしまうほど嬉しかったですし、本屋さん体験をすることができたのは楽しかったです。
また、私家版歌集を置いていいよと声をかけて頂いて、普段だったらお話する機会のない方とも交流できたのも、とても楽しかったです。
自分もやってみようと思っている方がいらっしゃったら、自分の出来る範囲で工夫をして、無理せず楽しく活動して頂きたいです。

読んで頂きありがとうございました。
この記事が少しでもお役に立ちましたら幸いです。

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