第七回円錐新鋭作品賞応募俳句連作『アブラツシユ』
『アブラツシユ』田中目八
狼よ夜に書かれしわが名呼ばふ
幻想に飢ゑて朧を硏ぎにけり
陰影にみづのおとみる光悅忌
水の記憶花の夜想に取り憑かれ
平面を破るる垂直かはづかな
表面をひらき永日への退行
絕え閒なき色の振動おぼろ影
二重虹消ゆる純然たる實體
したたり響くいのちは空閒
空蟬の投影音は去ぬるもの
減衰を持續す霧笛それ自體
秋のこゑ水平の檻から放る
鐘氷る夢も獄舍となり果てぬ
美はやみに置かるる冬の水
時雨れては時雨れては絕滅の香
遺兒のごときや冬の虹
水餠の胎兒のやうに詩のやうに
つららつららよわが墓碑銘よ
逝くときをよんぷんさんじふさんべう雪󠄁
春泥に未生の響き
俳筋力の会のパイセンたちに読書会を開いて頂きました。
皆さんの読みの鋭さ素晴らしさに改めて脱帽。