第七回攝津幸彦記念賞&第三回RANGAI文庫賞落選作 俳句連作『靑の儀式』
『靑の儀式』田中目八
てふ壞る醒めるものみな肉を持ち
半仙戲たれも探しに來ぬのなら
幻想の襞に分け入り古雛
海市より齎されたる靑を刺す
蜃氣樓獨りを生きて獨り舞
百年を醒めても獨り花の冷
砂を來る皇帝の跣の陰す
はだし視る童子のひづます血の渦
沈鬱と肥沃を蛇のめぐりかな
音樂の濡れて地上へ靑蜥蜴
鯰來る一段階上がる世界 だ
肉塊を運ぶ喘ぎや赤子干る
裸身てふ死の領域を蹂躙す
切りひらく心臟火蛾の生まれ死ぬ
空蟬や遊戲の跡は散らかりて
這ずりの女王の裳裾靑蓮華
生贄の還りて神やいづみがは
わが首に靑のみなもと泉かな
夕燒の靑きところにゐるはたれ
暗闇淵にをどりの赤を點しけり
星隕や母を妖女を切割りぬ
血塊の月より來る震へかな
曼珠沙華鎖の底の擦り止まず
落かいずわれだけの靑を求め
寒卵豫言の如く待ちゐたる
たま風や天使の干物竝ぶ岬
靑寫眞天使默して子を攫ふ
名を捨てしものたち集ふ冬館
神の留守ごつこあそびを始めやう
墜落の白鳥「見て!僕らの燈臺!」