
十月の俳句など


曼珠沙華ふいに辺りのかき曇り
まんじゆさげ白に汚れてみたきかな
つかめずや白花曼珠沙華ひとつ
けふ帰る道の今日のみ曼珠沙華

珈琲の充実したる秋うれひ
秋うららカツプの底に残りたる

保護犬のしつぽの繁き秋うらら

帰宅して弁当つくる秋の朝

天高し人の身体の重かりき
川のごと電線ありぬ鳥風来

メロンパンの筋目せんねん穴惑

あたらしき国のかほりや蜻蛉捕り
蜻蛉や電動自転車重くなり
衛星のやうにとびだす遠足子
●13日のアレ。
暖房や今日十三日金曜日 久保田万太郎
髪もて吊るす乾し首の十三日の金曜市場 高柳重信
秋風鈴十三日の金曜日 目八
高楼の冷えて金曜十三日

西ノ宮殿下三ノ宮殿下秋ノ海
若者二人が愉しそうに手話で愉しい(荻原井泉水風)
ティッシュに鼻を被せてマスクを被せて
海に出たから帰れない君も海
ホームでともだちだと思う人を見かけて見送った
弁当持ったキケンな男である俺に誰も気づかない

水餃子ほどなたましひ秋うらら
大盛り炒飯くわうえふ浄土踏みゆきぬ
胃の中を中国料理もみづるや

鴨鍋に与り損ねかわくかな
鴨道のなかばを寄りて差し入れ来
おむすびのほぐれて鴨のこゑ消ゆる
鴨鍋へゆかず快復してしまふ
鴨やめろやめろと揺るる目覚たる

金風の姉より生れミルネージユ
冬来るミルネージユ君だつたのか

目につけば心変りや牡蠣フライ
はやかりしくらのすけてふ牡蠣フライ
今どきはソースも付いて牡蠣フライ
牡蠣フライ絞つたレモン食ひにけり
タルタルのゆるき赦すや牡蠣フライ
牡蠣フライ四ツで足りぬ大盛無料
ほんたうのさいはひ牡蠣フライの膳