たまには俳句鑑賞
●髙鸞石『琵琶法四』より
眠るとき山海わかれ風葬(あのもどり)
「あのもどり」はサンカの風葬儀式で魂は太陽に帰るものとしている。
連作内に散見される火傷、崩れた、割れた、ゆがむ、苛める、断絶など、苦しみや痛みが天、日、太陽など上方向を求めるような印象。
他に
日の編者 塔の断絶
個人の吐瀉の中の眼は太陽へ
http://evilspiritlab.livedoor.blog/archives/20652845.html
●第40回兜太現代俳句新人賞応募作
『鏡と鳥』さ青 より
ももいろは殯のやうな日の反射
ももいろと殯の意外性がよい。
死者の復活を願う殯、その殯のような日の反射(反魂、復活)、身体に血が通い赤みがさした桃色の肌、または新鮮な肉そのものも想起されてくる。
他に
鰓裂が柱に殖えてゆく午睡
内は虚無外は金魚の地獄詰
たましひに水着をきせて追放す
壁から剥がせば婦人砕けて胞子
手燭提げ葡萄に映す鳥の睡り
喉笛集めて月の林の縄ほどく
薔薇襲牝鹿駈けつつ朽ちてゆく
●新潟大学俳句・短歌会ネットプリント海門2023より
嬉しきは待たさるること西行忌 舘野まひろ
私も待つの大ファン。
待たせるのはシンドい。
一瞬『ゴドーを待ちながら』が過る。
一本の花の木の下で永遠に西行を待っているのかもしれない。
ちなみに私も奎に出した句に
西行忌待てばそれだけ腹が減り 目八
というのがあったのでした。
●角川俳句令和5年3月号俳人スポットライト
「昼過ぎ」田中泥炭 より
宦官に不眠の踊り天花粉
ツイッターで引用されてるのを見て一読ファン!となって泥炭さんの作品を読むためにめちゃくちゃ久しぶりに角川俳句を買ってしまった。
他の4句も素晴らしく後悔はしていない。
まず上五中七に完全に持っていかれるが、更にここに季語「天花粉」が来るのかと驚いた。
宦官は大量の汗をかいたらしい。
また天花粉は堕胎にも使われたとか。
生殖機能を失った宦官と堕胎にも使われたという天花粉。
宦官の白い肌と天花粉の白。
宦官の殆どが奴隷と同等の扱いであったという。
不眠の踊りの果にあるのは後宮の陰謀か。