防災士が考える災害対策④ 水害対策編(避難について)
今回は備蓄品についての+αの記事を予定していましたが、大阪地震の被災地で大雨が降るという状況ですので、投稿内容を変更しました。
今回は、水害対策(避難)について。
現状を踏まえて、事前対策というよりは、危険が迫った際の行動の注意点について書いていきたいと思います。
水害対策(避難について)
まず、水害・土砂災害についてですが、
災害が差し迫るような豪雨が降っている場合、自治体の屋外スピーカーによる防災アナウンスや、消防・警察による巡回放送はあてになりません。
(内容がではなく、豪雨の時には雨音に放送がかき消されて聞こえない)
自分が住んでいる地区に避難に関する情報が出ているかは、ラジオ・テレビ・インターネットで情報を集めるようにしましょう。
以下、「避難準備・高齢者等避難開始」・「避難勧告」・「避難指示(緊急)」がどのような意味を持つのかまとめてみます。
☆避難準備・高齢者等避難開始
被害が予想される地域の住民、特に高齢者ら避難に時間がかかる人に、早めの避難を呼びかけるものです。
☆避難勧告
災害による被害が予想され、人的被害が発生する可能性が高まった場合に、発令されます。
指定された避難所など安全な場所への避難を勧めますが、避難を強制するものではありません。
☆避難指示(緊急)
災害によって人的被害が出る危険性が非常に高まった場合や、既に人的被害が発生している場合に発令されます。直ちに避難しなければいけません。
※ただし、避難しなかった人に対する罰則規定などはありません。
しかしここで、「安全な場所への避難=指定緊急避難場所(公民館など)への移動」という勘違いがよく起きています。
正確には、「安全な場所への避難」とは
①指定緊急避難場所への避難
②「近隣の安全な場所」:指定緊急避難場所ではないが、近隣のより安全な場所・建物等への避難
③「屋内安全確保」:その時点に居る建物内において、より安全な部屋等への移動
のいずれかを指しています。
つまり、屋外に出て別の場所に避難する(「立ち退き避難」といいます)必要は必ずしもないということです。
実際に、水害・土砂災害は、「立ち退き避難しようとしてかえって災害に巻き込まれる」というケースが意外に多い点が特徴です。
そのため、まず「立ち退き避難をするべきかどうか」という判断をする必要があります。
以下に、立ち退き避難をするべきかどうかの基準をまとめてみます。
・避難路の状況
(膝上に水が来ていたら、流れがない状態でも水圧で歩行は困難)
流れが速ければ、水深が足首程度でも歩行が難しい可能性もあります。
水が流れている様子が見える状況であれば、外に出ない方が賢明です。
・今いる建物の構造・材質
(鉄筋コンクリートの建物がベスト)
・防災用備蓄品の有無
(あるなら、最悪の場合孤立しても問題ない)
一番大切なのは、避難路の状況です。
「水が膝上まで来ていたら、立ち退き避難はしない」
「たとえ水深が浅くても、流れている水には近づかない」
これは鉄則です。
実は、水は水面と水底では流れの速さが違います。
水面はゆっくり流れているように見えても、水底の速い流れで足元をすくわれる危険性は十分にあります。
水深が膝上であれば、体力に自信がある男性でも流される危険が高いです。
体力がない人であれば、足首程度でも足元をすくわれて転倒する危険性があります。
その場合には、建物の上層階に避難する方が安全です。
次に、立ち退き避難時の注意点をまとめます。
・「長靴」ではなく「運動靴」を履く
長靴は脱げやすい。脱げた場合には裸足になってしまうため非常に危険。脱げにくい運動靴がお勧めです。
・棒を持っていく
マンホールや水路の蓋がなくなっていることがあるので、棒などで足元確認をしながら歩く。傘などでOK。
・道路の端を歩かない
側溝と道路の区別がつきづらくなっているため、道路端は危険です。
・引き返す勇気を
流れている水には近づかない。膝上まで水が来ている様子であれば、流れがなくても歩行は難しい。
歩きづらいと判断したら、無理に進まず自宅に引き返す。
・できるだけ車は使わない
車が水没して逃げ場を失う危険がある。また、放棄された車が救助活動の妨げになる危険性があるため。
・子どもの安全確保
子供はわずかの水深でも流される危険があるので、ロープでつなぐ、浮き輪をつけるなど安全確保を。
浮き輪は、状況によっては大人でもあった方が良い
※浮き輪の豆知識
浮き輪は、ふたを閉めた空のペットボトルでも代用できます。
浮力の計算は、だいたい1リットル=体重10kgです。
※静かに浮くだけであれば、その半分でも何とか浮力は確保できる
浮き輪になるその他の代用品は…
服(ズボンなど):裾など、開いている部分を閉める。
ビニール袋:目一杯空気を入れ、口を縛る
つまり、空気が入って口が縛れるものは何でも代用品になります!
周囲の状況をよく確認し、落ち着いて行動をしましょう。
水害時の避難の基本は
一時的に高いところへ移動し、身体の安全を確保すること
であることを忘れてはいけないと思います。
万一流された場合の対応
まず、浮き輪があれば沈むことはありません!
・着衣はそのまま(長時間水中にいる場合、保温効果あり)
・暴れない(体力の消耗を防ぐ)
で、岸辺に近づいたり救助されるのを待ちましょう。
取ってはいけない行動は
・顔だけ出そうとする
・手を挙げて助けを呼ぼうとする
です。
これらの行動をとると体は水面に対して垂直になるので、体は沈みやすくなります。
体が沈むと口から水が入ります。
呼吸が苦しくなることでパニックを起こします。
そうなると、体は水平を保てず沈む…という悪循環です。
とにかく、「浮いて待て」を徹底しましょう。
ちなみに、人間は水の中にいる場合、体全体の2%程度が水面から出るようにできています。
そう考えれば、体のどの2%を水から出すかを考える必要があります。
水面から出す2%は「顔(鼻と口)」にするべきですよね。
そう考えれば、顔だけ出そうと暴れる(出るのはおでこ)、手を挙げる(出るのは手)は逆効果であることがわかります。
最も良い姿勢は「背浮き」と呼ばれるもので、少し練習をすれば誰でもできるよになります。
背浮きはこちらがとてもわかりやすいですので、ぜひご覧ください。
なお、靴には浮力があるので、背浮き姿勢の保持に役立ちます。
そういう意味でも、脱げにくい靴(運動靴)を履いていることは大事です。
また、リュックサックやランドセルは、お腹に抱えれば浮き代わりになります。
救助を待つ場合
もし救助者に位置を知らせる必要があれば狼煙という方法もありますが、より手軽な方法としてシグナルミラーを使うと良いでしょう。
上手く使えば5kmくらいは光が届くそうです。
これを見ると、かなりはっきりわかりますね。
反射物をずらしたり、手をかざして明滅させると、相手にシグナルが伝わりやすいようです。
☆シグナルミラーの使い方
①片目を閉じ、信号を送りたい相手を見る
②腕を前に水平に伸ばし、きき手の逆でVサインを作る
③Vサインの中心に、信号を送りたい相手をとらえる
④空いた手で反射物を持つ
反射物は鏡以外に、CDやDVD、カード類(ホログラムがあるもの)、iphoneなど(鏡面仕上げのスマホ)でも代用できます。
⑤反射物を目の高さに上げる
⑥目とVサインの中心の間を、反射物をゆっくり移動させる
つまり、Vサインで目標に照準を合わせ、その方向へ向けて反射物を動かすというイメージですね。
以前の記事にも投稿しましたが、世界共通のSOSは
短発信×3・長発信×3・短発信×3です。
音にすると
「ト・ト・ト・トーン・トーン・トーン・ト・ト・ト」です。
こちらを見るとよりわかりやすいと思います。
もし、マグライトなどが使えればSOSを発信しても良いでしょう。
急いで書いたのでまとまりませんが、これらの知識を上手く活用していただき、いざというときの行動に生かしていただければ幸いです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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