坂上田村麻呂2

日本史のよくある質問 その4 征夷大将軍って何者?①

このシリーズでは、日本史を教えてきて比較的多く寄せられた質問を、ちょっと掘り下げながら記事化しています。

主に大学受験~大人向けの内容ではありますが、冒頭のまとめ部分だけを使えば、中学生以下向けの説明にも使えるように書くことを心がけています。


さて、今回の日本史のよくある質問は…

生徒:質問です!
   「征夷大将軍」ってどういう人ですか?
   幕府を開く人…??武士のリーダー??

 私:まあ確かに、鎌倉時代以降の征夷大将軍は幕府開いてますね。
   でも、武士が出てくる前にも征夷大将軍はいますよね…。


というわけで、今回は

征夷大将軍って何なの?

がテーマです。


結論から書いてしまうと、

征夷大将軍とは、元々は、奈良~平安時代にかけて、
東国(主に東北地方)の朝廷に従わない人々(蝦夷)を討伐するために設けられた特別な将軍職です。

討するための大将軍なので、征夷大将軍ですね。
普段からいたわけではなく、蝦夷との大きな戦いが発生すると任命されました。

当時の政治システム(律令制度)に、後から付け加えられた特別職(令外官)のひとつです。


ちなみに、源頼朝(鎌倉時代)以降はいわゆる「武士」の棟梁(リーダー)を象徴する役職として、源氏が任命されるようになります。
日本史で出てくる「幕府を開く」という流れですね。

平安時代くらいまでの「蝦夷」は非常に強力な軍事力を持っていて、ヤマト政権はその平定に苦労していました。
蝦夷のリーダーの代表例は阿弖流為(あてるい)です。

平安時代はじめ(8世紀末)ごろ、紀古佐美(きのこさみ)率いる朝廷軍をを散々に打ち破るなど活躍しました。

ちなみに、紀古佐美率いる朝廷軍10000に対して、阿弖流為率いる蝦夷の軍勢はおよそ1000。
阿弖流為は、10倍近い軍勢を相手に、蝦夷の精鋭部隊を率いて森の中から騎馬と弓矢を用いた神出鬼没のゲリラ戦を展開し、最後は朝廷軍を包囲した上で総崩れに追い込みます。

この戦闘スタイルは非常に強力だったため、後の「武士」の戦い方のお手本になっていきます。


阿弖流為討伐のために、朝廷期待のホープであった坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が、38歳にして征夷大将軍に大抜擢されます。

坂上田村麻呂は、渡来系・東漢氏の末裔です。
こちらの記事を読むと、こき使われる系の家柄ですね)

父は「恵美押勝(藤原仲麻呂)の乱」を鎮圧した「坂上苅田麻呂」です。

坂上氏は物部氏や大伴氏と同じく、軍事的な役職に就くことが多かった家柄で、田村麻呂の兄も蝦夷征討の司令官を務めています。

田村麻呂が征夷大将軍になったのは先述の通り38歳。超異例のスピード出世です。
彼に対する桓武天皇の期待と信頼の高さがうかがえます。


彼の外見は「身長5尺8寸、胸の厚さ1尺3寸」とされています。
だいたい身長170センチ弱、胸板の暑さが35センチくらいですね。

イメージとしてはこんな感じです💦
当時の日本人は、男性でも150センチ弱くらいが平均身長だったと言われているので…。

さらに、田村麻呂について書かれた資料を見ると

①目は鷹の蒼い眸のように鋭く、鬢は黄金の糸を紡いだように光っている。

②行動は機敏であり、立ち振舞いは理にかなう。

③怒って眼をめぐらせば猛獣も忽ち死ぬほどだが、笑って眉を緩めれば稚児もすぐ懐に入るようであった。

④真心は面に顕われ、 桃花は春ならずして常に紅い。 生まれながらに勁節(強い意思)を持ち、 松の色は冬を送りてただ翠なり

⑤策は本陣でめぐらせ、勝ちを決するのは千里の外であった。華夏に学門を学び、張将軍のように武略があり、 簫相國のように奇謀があった

こんなことが書いてあります。

今風にまとめてみると、
・高身長でマッチョ
・鋭い眼光にサラサラの髪(つまりイケメンである)
・金髪碧眼(←ん????)
・運動神経抜群で、動きは常にムダがなく優雅

・怒れば、猛獣ですら目力だけでショック死
・笑顔になると、誰もが虜になってしまう
・誠実で意志が強く、純粋な人柄
・学問に優れ、戦いでも知略を駆使して勝利を収めることができる

ちょっと気になる部分はありますが、いや、どれだけ凄いんでしょう…。


ところで、上の人物像を見ていると、坂上田村麻呂は軍人としての能力が高いだけではなく、学問にも通じていて、人物的にも優れていた、と考えられます。

実際、彼は晩年には大納言(上級貴族)として朝廷で政治家としても活躍しています。


ちょっと長くなってきましたので、古代史における2人の天才将軍、阿弖流為と坂上田村麻呂の関わりについては次回の記事で見ていくことにします。

そして、この2人の関わりを通して「征夷大将軍」とは何なのか、もう少し掘り下げていきたいと考えています。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


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瀧波一誠
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