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気分は石油王のハーレム??トルコの伝統菓子「ロクム」が美味しいという話。

 
 石油王――。
それは、中東付近で生活をしているめちゃくちゃお金を持った偉い人のことである。乙女が一度は夢見る恋物語のスパダリとして、真っ先に挙がる名前と言っても過言ではない。エキゾチックな美貌を持つ男と半ば強引な形で始まる恋は、砂漠の熱帯夜よりも熱く燃え上がる。その需要を証明しているのは、誰もが知るロマンス小説の有名レーベル「ハーレクイン」だろう。「シーク(石油王)」が、ヨーロッパ王族の「ロイヤル」やギリシャ系の「ラテン」と並ぶ定番ヒーローの一つとして扱われていることから、多くの人々の支持を得ていることがわかる。
 色々な意味で”規格外”な石油王に愛される物語は、いつだって私たちを魅了しているのである。
 一口に「石油王」と言っても様々あるらしいが、「スルタン」が代表的なのではないだろうか。ハーレクインにもこの称号を冠した作品がたくさんあるので、興味がある人は調べてみてください。日本大百科全書によると、「スルタン」の意味は以下の通りである。

イスラム教最高権威者であるカリフが授与した政治的有力支配者の称号。コーランでは、宗教的に重要な証示、または権威の意味で使用され、非人格的なものであったが、のち特定の地域を支配する個人の称号となった。

 要するにとてつもなく偉いお方である。ロマンス小説の中で「闇オークションにかけられた主人公をとんでもない額で落札する」というのは結構あるあるなのだが、そりゃあこれくらいすごい方ならできるよなという感じ。それでこの「スルタン」は、トルコ系遊牧民が11世紀に建てた「セルジューク朝」から使われているという。
 筆者は学生時代世界史を専攻していたので、この名には聞き覚えがある。受験の時に複雑な王朝の図に翻弄された気が……。かつての教科書を開いてみると、あったあった。11世紀頃に中東一帯を支配しているデカい王朝が。この頃日本では『源氏物語』が書かれ、ヨーロッパには神聖ローマ帝国とかがあった。


 本題はここから。

 このセルジューク朝から始まった「スルタン」に、15世紀頃から愛されているお菓子があるらしい。え?絶対石油王のハーレムで食べられているやつじゃん……?
 それは、「ロクム」。またの名を「ターキッシュディライト」と言い、その意味は「トルコの悦び」を表している。材料は主に砂糖とコーンスターチ、でんぷんなど。参考までに、2014年放送の「グレーテルのかまど」に掲載されているレシピの一部を抜粋すると

・水
・グラニュー糖
・レモン汁
・コーンスターチ
・ローズウォーター etc……

となっている。
 このお菓子は現在でもトルコの伝統菓子として愛されているそうで、街中にたくさん売られているそうだ。
 また、このロクム。あの『ナルニア国物語 ライオンと魔女』にも、登場する。女王が主人公一家の次男坊エドマンドを誘惑する時に食べさせたやつ。翻訳では、日本人に馴染みのないお菓子ということで「プリン」に変えられている。15世紀頃に作られたロクムは、19世紀頃にはイギリスに渡っており『ナルニア』にも取り入れられたのだろう。


……なにそれ、食べたい。



 その思いが膨らむと同時に、むくむくと空想が立ち上がる。
 

私は憤慨したが、いくら怒りをぶつけても扉はびくともしなかったので、仕方なしにベッドに横たわった。
 かつて自分が暮らしていたワンルームと同じくらいの大きさの寝台。頬をなでるシーツは、肌ざわりの良いシルクで出来ている。その広さが持つ意味をハッと自覚して、私は赤くなった。
「私は……買われたんじゃないわ。私が買ってやったのよ。病気の母のためだもの。あんな男には負けられない」
 強気な口上とは裏腹に、心は酷く乱れていた。ここにやって来るまで受けた散々な仕打ちは、彼女が名ばかりの花嫁だと証明しているように思われた。
 ふと、甘い香りが漂ってきた。香でも焚いているのかと、体を起こして見回す。すると、中央の豪奢なテーブルの上に、何かが置かれているのに気が付いた。
「なにこれ。お菓子?」
 近づいてみると、それは小さな菓子だった。

 王のハーレムに嫁ぐことになった乙女への、歓迎の菓子……(妄想)。
食べるしかない。

ということで、買ってきた。「divan」さんのロクム。

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7.5cmの高さをした缶の中にロクムが入っている。味はローズとレモンの2種類。値段は700円くらい。
 やはりまだ日本では、ロクムは周知されていないみたいで、検索しても店があまり見つからなかった。実物を見て買いたかったので、対面販売をしているところはないか調べるとこちらの「divan」さんがヒット。どうやら六本木に店舗があるそうですが、グーグルマップに聞いても道を表示しませんでした。しかし、ポップアップストアが全国で行われているとの情報を得て向かう。
 店員さんはトルコの方なのかしら。試食もいただき、とても親切にご対応してくださる。
聞くと、一番人気はザクロとピスタチオ。二番人気はローズとレモン。チョコがかかったのも人気。トルコではザクロはメジャーな果物。ほう……。
 悩んだ末、ローズとレモン味を購入。ザクロ味のお菓子をあまり食べたことがないので、ローズが無難かなというチキン思想。これではハーレクインのヒロインにはなれない。

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帰宅し、開封。

 開けた途端、むわりとバラの香り。レモン味も入っていますが、バラの香りが強い。

 中身はこんな感じ。一缶70gでローズ5つ、レモン6つ。グラム表記なので、その時々につれて数は変化するのでしょう。

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 十円玉と大きさを比較する。小さめサイズ。ネットでロクムを調べると、本場のやつはかなり大きいものもあるっぽいが、このロクムは一口サイズ。缶の底に原材料があるので一応そちらも明記する。

砂糖、コーンスターチ、香料(ローズアロマ、レモンアロマ)、着色料(アントシアニン)、着色料(カロチン)、クエン酸(酸味料)

シンプル。現代日本におけるジャンクなフードに比べると拍子抜けするほどシンプルな原材料。賞味期限は一年ほど。保存料が入っていないのにそれくらい持つのは、やはり砂糖の力なのか。エネルギーは100gで360kcal。この缶は70gなので、全部食べても252kcal。単純計算一個当たり22kcal。低い。

そして待望の試食。私はハーレムの女王じゃ。

恐る恐るかじる。ローズ味。

 第一の感想「バラ!!!!!!」
濃厚なバラの香りがガン、とくる。食べ終わってもほんのりバラがどこかにいる。あとすごく甘い。甘いバラの寒天ゼリー(和菓子)を食べている感じ。ほかのサイトとかを見ると、ボンタンアメに近いと書かれている人が多いが、まさしくそういう感じ。ボンタンアメ。甘いバラのボンタンアメ。ねっとりしてる。歯の矯正している人は気を付けた方がいいかも。
 ロクムはものによってはあまり美味しくないという事前情報があったので少々ビビッていたが、これはちゃんと美味しい。いや、これはなんて言い方は失礼かもしれない。美味しいです。一つ一つの甘さが強いので、一気に口に入れてシャクシャクすると濃すぎてしまうが、ちびちびお茶と一緒に食べると最高。一粒の満足感が大きいから、食べ過ぎてしまうデスクワーク中に最適かもしれない。私は強欲なので「もう一個」してしまうが。
 レモン味も食べてみる。美味しい。これは完全にボンタンアメ。甘いボンタンアメ。好き。
 もわもわ、と妄想。

 彼が彼女を連れてきたのは、小さな日本風の庭園だった。眼下に広がる光景に、彼女は故郷を思い出す。昔母の膝に寝転んで見た、庭の草木を。無意識に口をついて出たのは、幼い頃に遊んだわらべ歌だった。
「……おおきな栗の木の下で」
「……」
「あなた、と私……」
 ポロポロと涙がこぼれる。ずっと勘違いをしていた。この男は、私を金で買ったのだと思っていた。
「……仲良く遊びましょう」
 かすんだ視界で、隣を見上げる。彼がどんな表情をしているのかわからなかったが、泣き出した彼女の代わりに歌を続けていることが、何よりの証拠だった。
「あの頃結婚を約束した男の子って、あなただったのね」
「……君が全然気づいてくれないから、焦ったんだぞ」

 契約の結婚相手は、ただの非情な石油王かと思っていたら、実は幼い頃日本で出会っていた初恋の男の子だったという話。
ロクムの味はこんな感じです。

まとめ

異国のお菓子「ロクム」は、石油王の国の伝統お菓子でありながら、どこか懐かしい親近感を漂わせている。かつて居間のお盆に乗っていたあの和菓子のような……。トルコでは大体ブラックコーヒーを合わせるらしいですが、緑茶にも合うし、おじいちゃんおばあちゃんも絶対この味好きだと思う。
包装もおしゃれで、プレゼントにも◎。歴史好きや児童文学好きな方だったら余計に喜ばれるかもしれない。みなさんもぜひご賞味ください。


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