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インド最後の王 ティプー・スルタンの生涯【読書紹介だと思ったら、まったく違うものが描かれていたんだゾウ。す、すいません、あの、話を聞いてください】

図書館で借りた本です。
インド南部のマイソール王国の話。
インドが英国の支配下になる直前、英国とマイソールとの間で4度にわたる激戦が展開されます。
この時代は、英国がインドの覇権を握るかどうかの分水嶺。
これ以前は、英国はそれほど影響力がまだない、外来の勢力に過ぎませんでしたが、
マイソール戦争以降はイギリス軍の勢力をインド勢力が食いとどめることは不可能になります。

この時代のインドは戦国時代であり、ムガル帝国没落後、
統一した覇者がおらず、マイソールはほぼ孤軍奮闘してイギリスと戦わなければなりませんでした。
それでもマイソールの指導者、ハイダル・アリとその息子、ティプー・スルタンのふたりの時代、マイソールは善戦敢闘したと言えます。
マイソールは旧来の王家がいたのですが、ハイダル・アリは実質的に簒奪するような形ですでに権力を奪っています。
そして海岸地帯でフランスと戦っていたイギリス軍を突如攻撃。この戦いはいったん終わりますが、その後、アメリカ独立戦争で四面楚歌に陥っていたイギリスに対して再度攻撃。
第2次マイソール戦争となります。
なんとイギリスを相手に有利な条約を勝ち取ることに成功します。
これはすごいですよ。イギリス相手にこういう戦いができる国はそうはありません。

ここでハイダル・アリからティプー・スルタンにバトンタッチです。
ティプー・スルタン治世時代初期が最盛期でした。
しかしヨークタウンの敗将コーンウォリス伯が名誉挽回のためか復讐戦に出て、第3次戦争でだいぶ領土を削られます。
そしてリチャード・ウェルズリー侯爵、インド総督の時代。
この人はアーサー・ウェルズリーことウェリントン公爵(ナポレオンをワーテルローで破った名将)の兄でもあります。
このウェルズリー兄弟の時代に、強引な侵略を受け、ついにティプー・スルタンは止めを刺されます。
旧王家が復活しますが、復活したマイソールはイギリスに隷属する国となります。

大雑把にいってこういう歴史を書いた本です。
ティプー・スルタンは、父と違い、あまり謀略的な発想はなかったようで、この人の時代になってから、英国の悪辣なやり方に翻弄されるようになってしまいました。
理想化肌で、まじめに国民を豊かにして、国を強くする政策を堅実に採ろうとしていた政治家です。
平和な時代だったらその堅実さが安定した時代を築いたことでしょう。
ただ乱世の中では、他人を平然と陥れるような邪悪さが欠落しすぎていた。
そんな感じの人です。

インド史は、まだ通り一辺倒しか知らず、はっきりとは言えない状態の知識しかないので、こういったことも本の受け売り以上ではありません。
ただマイソールは、アジアにおいて欧米列強に負けないよう、近代化を目指した国家のひとつであり、その多くの例であった挫折した例のひとつです。
挫折しなかった国はほとんどありません。日本やタイは例外。
(といっても第二次大戦まで含めれば日本も挫折した国のうちに入るかもしれません)

もっといろんな人の解説を読まないと、全体像はまだ把握できないと思いますが、まあそんな時代がありました程度の紹介です。
インド映画で出てこないかな。

***
ちなみにマイソール軍では、ロケット花火のデカい奴みたいな(後ろに棒がついている)ロケット砲があって、これはイギリス軍を相手にだいぶ善戦したようです。
これを見たイギリス軍は自らも採用。
英軍のはコングリーブ・ロケット砲と呼ばれます。
1812年の英米戦争では、アメリカ軍を相手に使われ、かの国歌「星条旗よ永遠なれ」の中に出てくるロケット砲はこいつだったります。
また幕末の薩英戦争でも使われ、鹿児島の街を焼き払った焼夷弾として使用されています。
その後、第一次大戦のころまでには廃止され、忘れ去られたようですが。
今の日本でロケット花火があるのは、たぶんここつながりなんじゃないかと思います。

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