残暑 鬼頭莫宏短編集【「あ。」それから僕はマンガ紹介を止めた】
鬼頭莫宏のデビュー初期短編集。
この人は、グロいエグイ展開を描かせたら、
右に出るものなしと恐れられるマンガ家の先生。
以前紹介したこちらも、
グロテスクで救いようがなくて、
でも感動できる作品という。
特殊なジャンルだ。
心臓破りな展開が多いので、
そういうの苦手な人には本気でお薦めしない。
トラウママンガの専門家。
しかし、トラウマじゃないマンガも普通に描ける。
自転車マンガとか。
要するに何でもやれる。
これは初期短編集だから、
どちらかというと、トラウマじゃない路線。
助かったね。
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まあデビュー作から刺激的な作品ばかり書いていたわけでもないみたい。
ただ、なんとなく尖がった部分の予兆が見える。
短編マンガなんて、形式に従って描くだけで、
あんまり尖ったものは描けない(ような気がする)
あまり変なのを描いても、リジェクトされちゃうし。
そういうのは、ある程度の知名度が出てからじゃないとやれないのだろう。
(と思ってる)
ただそれでも、血は隠せないというか。
この人の特技は、心に引っかき傷を残すようなドラマ展開なんだ。
どうやったら引っかき傷を残せるか。
そこらへんにこの人の強い関心がある。
後年、引っかき傷どころではすまず、ざっくり行く場合も出てくる。
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例えば一番最初の作品。
表題作の「残暑」
亡くなった妹が、幽霊になって出てきて、恋の仲立ちをしてくれる話。
妹は仲立ちをしてくれた後に消える。
こんな簡単なお題でも、他の人とはもう違う。
最後にあの「会話」を入れるところとか。
藤子不二雄Aが推薦文を書くだけはあるわ。
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