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自分と同じ人はいない
小説が読みたいと思った私が手に取ったのは『八本脚の蝶』だった。
ずっと欲しいと思っていたのだけど、この本の著者である二階堂奥歯さんはもうこの世にいなくて、その最期の日は言葉として本に残っている事実が辛いような気がして、今まで購入を躊躇していた。
しかし何年経っても気になる。二階堂奥歯さんが気になる。定期的にネットで名前を見かけることを何度もくり返しているし、これはもう本を買え!というお告げだろう、と勝手に考えたので本を購入した。
『八本脚の蝶』はもともとブログなので、ネットで検索すればそのブログを今でも見ることは出来る。けれどネットで見るものよりも、紙の本として存在してもらえると途端に読みやすくなるし、私はどんな文章でも紙で読みたい。最近はnoteで読ませてもらっている方々の文章も、紙にで読めたらどんなに良いかと思ったりしている。どんどん出版されないかしら。
二階堂さんの文章を読みながら、同じ日本語でも表現の仕方はさまざまだな、と言ってしまえば当たり前のことを考えていた。
人と違う視点とか、人とは違う表現とか、そういったものを目指せば何者かになれるのだろうかと焦りを感じたこともあった。しかし最近は「人と違うって何だろう?自分と同じ人はどこにもいないのに」と思うようになった。
見ているもの、考えていること、言葉の使いかたなど、自分とまったく同じ人間はどこにもいない。だったら自分が感じるすべてを思うがままに言葉にすればいい。だってそれはもう、唯一無二のものなんじゃないの?と思ってしまう。
自分と同じ人はいない。だからこうして本を読んだり、ネットでも文章を読んだりSNSを眺めたりする。そこで共感も反感もあったりするだろうけれど、それもまた面白い!!と、楽しめる人に私はなりたい。
ところで、小説が読みたいという冒頭の思いは、いったいどこへ行ったのだろうか。謎だ。