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読書日記・甘えで発生する不平不満

7月15日(月)

藤野千夜さんの『団地のふたり』を読む。幼いころから同じ団地で暮らしてきた、奈津子とノエチ。50代になっても、毎日のように一緒に過ごす二人がすごい。

どれほど仲が良かったとしても、毎日一緒にいるとなると距離の近さでケンカにならないのだろうか?などと、いらぬ心配をしてしまう私は距離感迷子でケンカしがちな人(相手は夫)。

状況は違うんだろうけど、この本を読むとどうしても阿佐ヶ谷姉妹が頭に浮かぶ。阿佐ヶ谷姉妹を詳しくは知らないけれど、醸し出す空気がお二人に似ている気がした。

他者と心地よく過ごせる人は、ほんわかとした空気があって、つねに相手を思いやる気持ちを忘れないんだろうな、なんてことを考えていた。阿佐ヶ谷姉妹から連想した、勝手なイメージを小説に合わせて読んだけど、不思議な心地よさがあってよかった。





7月17日(水)

SNSでネタバレを見てしまう前にと、『バチェロレッテ3』を数日かけて見終わる。そうか、こういう展開もあるんだな。なるほど。

(ネタバレ回避するためにサラッとした感想)




7月19日(金)

近藤史恵さんの『山の上の家事学校』を読む。離婚をきっかけに、家事を学ぼうとする男性の話。

結婚していたころは、妻に家事も育児もまかせっきり。そのことに疑問を抱くでもなく、仕事ばかりの日々を過ごしてきた幸彦。そんなある日、妻から突然離婚を言い渡され、幼い娘と離れることになってショックを受ける幸彦に、女性視点で見るとちっとも同情できなくて面白かった。


家事は女性がするものという前提や、見ている世界の「当たり前」に疑問を抱かない男性の視点など、本を通して心がざわりとする場面もあるんだけど、家事を通して日々の「甘え」に気づいていく幸彦のすがたに、学ぶことが多くて自分でもビックリした。

家族に対する「甘え」は、いつしか不平不満へと成長して取り返しがつかない事態に発生する可能性があることを、改めて教わった。気をつけたい。


そして、この本で何よりもよかったのは、男性だけに家事を教えるという家事学校の校長!!要所要所であらわれて、サラッと心に残る発言を残していく。すごくカッコイイ。

特に印象に残ったのが、学校に入学してきた幸彦たちに対しての言葉。

「せっかく授業料を払ってきているのですから、ぜひ、生活に役立つことを持って帰ってください。そして、くれぐれも、ここで得た知識を、誰か……家族でも、知らない誰かでも、別の人ができていないことや、完璧でないことを責めるために使わないでください。自分自身ができなかったときにも、できないことを責めないでください。もし、そういうことに使うなら、知識や技術は、生活を豊かにすることではなく、貧しくする方に働いてしまいます」

『山の上の家事学校』より引用


知識を得ると、それを披露したくなるのが人間。自分が知っていることを知らない人がいれば、その人に意図せずとも自慢したくなるのが人間。その自慢が行き過ぎると(わりとすぐにこうなるんだけど)、相手を批判したくなるのが人間ってもんです、たぶん、おそらく。

でもそれだと「生活は貧しくなる」んだと校長はおっしゃっている。生活も、自分自身も貧しくするのは自分だということを、この本で教わった。本の中にある校長の言葉の数々は、何度でも読み返していきたい。オススメです、この本。



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