書評『バナナの魅力を100文字で伝えてください』伝わる文章にはテクニックが存在する
1書籍紹介
今回は、「バナナの魅力を100文字で伝えてください 誰でも身につく36の伝わる技術」という本をレビューします。
著者は編集者の柿内尚文さん。これまで企画した本やムックの累計発行部数は1000万分以上、10万部を超えるベストセラーは50冊以上にも及ぶという。
手に取った理由は、いつも通り、本屋巡りで立ち寄った「文章術系」コーナーに新刊が置いてあったから。
非常に惹きつけられるタイトルだと思いませんか?
題名が「バナナの魅力を100字で伝えてください」。
この本には、物事の魅力を100文字で伝えるテクニックが書いてあり、読めば伝わる文章力が身につくだろうって感じますよね。
巧いなぁ…と思いました。(ちゃっかり購入)
この本で主張されていたのは、
1.人は伝えてもらわないと分からない
2.ただ伝えるだけでは伝わりにくい。うまく伝えないと伝わらない。そして、伝え方には技術がある。
3.言葉だけでなく、「態度+表情」も伝わるための大きな要素
どんなに魅力的な商品があっても
「ここにあります」「こんなところが素敵ですよ」
と相手に伝わらないと気付いてもらえないですよね。
認識されてないって存在していないのと一緒。
魅力に気付いてもらうには価値を伝える必要があります。
価値を可能な限り伝える技術を詰め込んだのが本書です。
2内容
本書では、伝えたいことを相手に伝えるためのテクニックがたくさん書かれていました。大事な個所をピックアップして紹介しますね!
伝わる構造とは
1ゴール設定
2納得感
3相手ベース
4見える化
5聞く力
6親近感
7信頼感
の7つ!解説します。
1伝わるにはゴール設定が必要。
なんのためにこの話をするのか、この文章を書くのか、明確にする。
よく言われている「1記事1メッセージ」に似ていますね。
2納得感
納得感とは理解する、腑に落ちるということ。
相手の納得感がないと伝わったことにならない。
3相手ベース
「伝える」=「伝わる」ではない
自分が言ったと思っていても、相手が理解し腑に落ちていないならばそれは伝わったことにならない。
自分ではなく、相手ベースで考えること。
理解する、腑に落ちるって「相手」が主語ですよね。
4見える化
相手の頭の中に見える化させること
頭の中にイメージが浮かばないとそれは伝わっていない可能性が高い。
小説を読んでいて、頭の中に勝手に情景が浮かんでくることがありますが、これは「伝わっている」ってことなんでしょうね。
5聞く力
相手の話をよく聞いて、相手にとって自分たちの商品のどこに必要性があるのかを見つけ出す
商品を買う時、一方的に商品の良さを語ってくる販売員より、自分の話を親身に聞いたうえで自分に合った商品を進めてくる販売員からの方が「買いたい」って思います。
「返報性の法則」「親近感」を引き出せる
6親近感
嫌いな人が話した内容は素直に頭に入ってこない。
例えば、嫌いな先生の話は、どんな良いことを言われてもすんなり受け入れられない。反対に、好きな先生の話は、少し説教されてもいうことを聞いてみようかなと思う。
伝わるにおいて好感度は大切ですよね。
「親近感」があれば、体と脳は相手を受け入れるモードになります。
【親近感を沸かせるコツ】
1共通点を見つける
2相手に興味を示す
3自分のダメさをさらけ出す
4笑顔
相手の話を聞いて距離を縮め、親近感を生むことで、相手はあなたの言うことを聞いてみようと思う
7信頼感
例えば、大手企業の社長とパチンコ店員の言う「日常をポジティブに生きよう」には言葉の重みが違います。
「社長が言うのなら間違いないだろう」って信じてみようと思いますよね。
このように、伝わるには「信頼感」が大切。
信頼感とは、「誠実さ、素直さ」「スキル、能力」「結果、成果」「接触頻度」「モラル」「関心」
逆に言えば、上記7つを満たすことで、内容が人に伝わる可能性が高まる。
フリとオチ
同じ情報でも、ちょっと工夫を加えるだけで格段に面白い文章に変わるコツがあるんですけど知っていますか?
答えは、「フリとオチ」です。
伝え方のフリとオチとは、「振れ幅を大きくして、より価値を見える化する」ための手法。
本書で紹介されている例を引用します。
このようにフリがあるかないかで伝わる印象はずいぶん変わります。
フリとオチの間に意外性、驚き、新奇、憧れがあると人に関心や興味が生まれます。
では、どうやってフリとオチを作ればよいのでしょうか。
例えば、オチの前に足し算として価値までのプロセスを見せるやり方です。
このように、情報の前に「かけた苦労や過程」を付け足すと、伝えたいことの価値が高まります。
ファクトメンタル
見落とされがちですが、「伝える」とはこの2つに分かれます。
①「ファクト(事象・事実)を伝える」
②「メンタル(感情)を伝える
「ファクトを伝える」と「メンタルを伝える」は分けて考えなければなりません。
ファクトとメンタルを一緒にしたことで、言葉が相手に伝わらなかった例を紹介します。
相談に対する不要なアドバイスで、男女間のトラブルに発展しそうな会話ですが(笑)
女性は「ミスをわたしのせいにされた」というファクト(事実)と
「信じられない」のメンタル(感情)を同時に伝えています。
それに対して男性は「原因はコミュニケーション不足」というファクト(事実)に対するアドバイスのみを答えている。
しかし、女性が本当に伝えたかったのは、「信じられない」というメンタル(感情)の部分だったんじゃないでしょうか。
もし男性がメンタルにフォーカスして「それはひどいね、大変だったね」と共感していれば適切なコミュニケーションがとれたでしょう。
このように、伝えるためにはファクトとメンタルを分けて考えなければなりません。
ファクトとメンタルを分けて伝えた良い例はこうです。
かけ合わせて伝えれば、多くの人に伝わる言葉が浮かぶはずです。
脳内チューニング
家族や友人と話していて、「なんだか会話がかみあっていない気がする…」と感じたことはありませんか?
コミュニケーションの不一致で、喧嘩に発展する場合もありますよね。
これは、互いの脳内チューニングがうまくいっていないせいです。
脳内チューニングとは、互いの脳の中にあるゴールとイメージを共有する作業のこと。
やり方のポイントは3つ
1相手とのゴールを共有
2「質問」でチューニング
3互いの頭の中を見える化させながら進んでいく
わたしも昔友人と喧嘩をし仲たがいをしたことがあるのですが、この場合も脳内チューニングが足りなかったなぁと思います。
今振り返って友人との喧嘩をチューニングしてみるとこうです。
・お互い連絡を取り合いたいのは一緒
・友人はラインの返信を早く返してほしい。通話できるときは通話したい。という思い
・私は即返信はできない。時間が空いてしまう時もある。毎日話すのは難しい。という思い
お互い、友人として連絡をし続けたいのは同じでしたが、返信率の高さや暇な時間の確保状況などで価値観が合わず、次第に連絡をとらなくなっていきました。。
脳内チューニングとしてお互いに質問していき、どの部分に努力がいるか、見える化することで解決への道筋が見えたかもしれません。
たとえる
「○○界のユニクロ」
「○○界のスターバックス」
こういわれると、はじめて聞く情報でも理解できます。
身近なものにたとえるとは、伝わる技術の一つです。
「イメージが見える化する」「自分ゴト化する」という効果があります。
どんなものをたとえにすればよいかというと
伝えたい相手が理解しやすいものを選ぶこと。
いきなりアメリカの特産品や詳しくない昔の芸能人にたとえられても私は理解できないかもしれません。
「たとえ」は誰にでも共通して理解しやすいものが良いですよね。
ネーミング
名前をつけることは伝わる技術の一つです。
ネーミングでより魅力的になったり、目的が明確になったりします。
言葉をネーミングをすることで、身近になったり、覚えやすくなったりします。
この知識はわたしも聞いたことがありました。
例えばプレゼントを作るとき「文具詰め合わせ」より、「新生活で大活躍なドキドキ文具セット」と名付ける方が魅力度が増すんですよね。
手帳に予定を入れるとき、どうしても忘れたくない用事があるとき、ネーミングをしてみてはいかがでしょうか?
ネーミングのポイントは以下です。
1伝えたい相手の自分事となるように
2新しい発見、気付き
3キーワード
4意味が分かりやすく伝わりやすい
5テンポとリズム
6コンパクト
7少しべた
8流行りの言葉
9魅力をまとめる
10たとえる
11頭文字を使って造語に
外部メリット
自分の言葉に自信がないときは「外部力」を借りましょう。
「外部力」とは、他人の力、第三者の力を借りるということです。
このように、伝えたいことを信頼してもらう方法として、伝え上手な人は外部力を意図的に使っています。
3つのグット
人の興味・関心が高まる3要素
「自分グット」
「あなたグット」
「社会グット」
を効果的に使うと、記憶に残る伝え方ができます。
大好きな牛肉のステーキ、脂身が少なく家族も美味しく食べられそう、しかも環境にも配慮され飼育されている…
と知ったらこのお肉を買ってしまいそうですよね!
自分にとっても良い、あなた(家族)にとっても良い、社会にとっても良い
この3要素(3つのグット)を入れるのも伝える技術です。
売りてよし、買い手よし、世間よし
3要素を意図的に入れると魅力が伝わります。
自分ゴト
人は「自分に関係がある」と思った情報に耳を傾けます。
ただ、「不法投棄はダメ」と言われるより「不法投棄をすると不幸が訪れる」と言われた方が一気に自分に関係がでてきますよね。
このように、「自分ゴト」と捉えられるような書き方をすると反応率が上がります。
3感想
今回も面白い本に出会えてHAPPYです!
文章系の本はよく読むので、既存の知識が多いのですが、この本ではかなりの新しい知識を吸収できましたね。
特に、「ファクト・メンタル」「3つのグット」とかは意識したことがなかった人も多いんじゃないかな?
わたし自身も、「相手に伝える」という行為にはずっと苦労してきました。
友人に楽しかった出来事を話そうとしても、「何を言っているか分からない」という顔をされたり、大学の感想文提出では言語化に苦労したり…
「いっそ自分の頭の中をまるっと見せれたらいいのに!」って何度も考えました。(無理なので、みんな文章や言葉を工夫して伝えるんですよね)
これからも「伝え方」には苦労すると思うし、研究を続けていきたいと考えています。けれど少しずつ実践しながら、本書で学んだことを堪能にできたらいいですよね。
ここで、私も惹かれた「題名」に隠された秘訣を少しご紹介します。
バナナは多くの人になじみがあるので「親近感」を引き出す
100字で多くの人がイメージしやすい数字を使って見える化
伝えてくださいで本書に興味を持ってくれた読者に「お願い事」をして「自分ゴト」に。
本書で紹介されていたテクニックがこれでもかと使われていました!
惹きつけられる言葉には理由があるんですね!
何度も読んで復習したいです。
わたしも魅力的なタイトルを考えられるようになりたい~!