小説 本好きゆめの冒険譚 第六頁
次の朝。
母から事情を聞いたパパが、胸をドンッと叩きながら
「ゆめ、そういう事だったら、パパに任せなっさ~い!」
パパはアニメならば、「有名大学文系首席卒業」と言う文字が背景に浮かび上がってるはずのオーラで私に言い切った!
「フフフ、今夜が楽しみだね」とウィンクしながらパパは役所に行った。
幼稚園での私は、絵本を読み漁っていた。
とにかく、本が面白いのだ。
たまに、お外でも遊ぶけど、やっぱり本が面白い!
さらに、ボーッとする時間?(私なりに考えてる)が増えた。
スクールバスに乗って家に帰る。
いつものようにママが出迎える。
「今日は何して遊んだの?」とか
「今日は何食べたい?」とか、何気もない話をする。
家に帰ると「手洗い・うがいをするのよ~」のママの言葉もよそにテレビに直行!
見たいアニメがあるのだ!
魔法少女が悪と戦う話なのだが、変身シーンがキラキラしていてとにかく可愛い!
「エクスリット・フラーッシュ!」と右手を掲げ、変身ポーズを真似したり、紙でアイテムを作ったり(後に買ってくれた)して、遊んでいた。
夕方、パパが帰って来た。
「パパ、お帰り〜!」と抱きつくと、パパは仕事の疲れは何処へやら、満面の笑みで抱きしめてくれる。
今日の献立はスパイスカレー。ナン付き。
ママの自慢のカレーで、スパイスから作るサラサラのカレーは、私も大好物!最初はナンでカレーをすくって食べて、その次にカレー用?細長くサフランと一緒に炊いた黄色いパラパラのライスと食べると言う2段構え。お腹もいっぱいになる。
ご飯を食べ終え、ラッシーを飲んでいると
「ゆめ、これを見よ!」
ドンッと置かれたコピー用紙の束。
「パパ、これは〜?」
「フッフッフ、ゆめの為に書いた小説なのだよ。」
そう、ふんぞり返るパパに
「パパ、仕事はしたのよね?」ママが心配していた。
その夜。
「今夜からは、パパが読み聞かせてあげるね。」
パパは張り切っている。が、
聞き慣れない読み聞かせは騒音に近い。
ママに代わってと言ったら
「何故、僕じや駄目なんだぁ〜」と
肩を落としたパパは涙を流しながら、ママと交代した。
ママに読み聞かせてもらう…。
パパ、流石は文系首席!
始まりが「むか〜しむかし」から始まらない!
お爺さんとお婆さんも出てこない!
私は、それだけで興奮した!
その日はなかなか、眠れなかった・・・