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小説 本好きゆめの冒険譚 第十三頁
「さぁもう眠りましょうね。」
「ママぁ~、今日は一緒に寝てくれるの?」
そうよ。と優しい笑みをゆめに向ける。
ゆめに何かがあっては大変とパパにお願いしたのだ。
「ねぇ、ママぁ。」
「な〜に?」
「桃太郎、読んで欲しいな。」
桃太郎。ゆめが話や登場人物の設定まで変えてしまって、最早原形がない状態。最近のゆめは、パパが書いた小説に夢中だったから、長い間、読んでいない…
覚えてたかしら?
「いくわよ〜、むか〜しむかしある所に…」
「ママ、昔は良いけど、「ある所」はやっぱり「お城」が良いと思うの。」
「そうね。…むか〜しむかしそれはそれは豪華なお城に、お爺さんとお婆さんが暮らしていました。」
「ママ、大きなお城にお爺さんとお婆さんの2人でしか住んでないって、寂しいと思うの…」
「そ、そうね。…とても豪華で大きなお城にお爺さんとお婆さんが、兵隊さん2.000名、執事・メイド合わせて500人、その他諸々で205.000名で楽しく暮らしていました…」
こんな感じで、ゆめの「カスタム桃太郎」が始まる。
えっと、メイドの1人が川に水浴びに行くと、桃が2つ流れてくるんだっけ?1人では持てないと、近衛兵を呼んで桃を確保、王、王妃である、お爺さんとお婆さんに献上…
王国で一番の剣士が一刀両断(何で桃太郎は無傷なのと聞かれたが、桃太郎が太刀筋を見切ってかわしたからと言った。)すると、ひとつの桃から、男の子の赤ん坊が、もう一つの桃からは男の子と女の子、双子の赤ちゃんが産まれたんだよね?
で、それぞれに、「桃太郎」「桃次郎」「桃子」って名前が付いて、3人は王様の養子として引き取られ、次期王とされて育ったんだっけ?ゆめは名前も変えようとしたけど、そこだけは譲れなかった記憶がある。
それから、桃太郎は剣の道を歩んで、桃次郎は合体ロボに改造されて、桃子は何故か魔法少女になるのよね?
そして、鬼殲滅の旅に出るんだけど、途中の火山地帯で襲ってきたドラゴンを討伐、次に迷いの森に住み幻惑を操る巨大な体、鋭い牙と爪と角を持った狼も討伐、何故かサルは猿のままだったような…
瀕死の魔物に回復魔法をそれぞれに施し、王国から同行させた宮廷料理人が腕をふるった豪華なディナーを振る舞い、魔物が食事を食べた事を確認した桃太郎達は不敵な笑みを浮かべ魔物共に「飯を食ったのであれば我らに恩を返すために働け!さすれば、殺さずに生かしてやる」と脅し強制的にお供にしたはず…
ドラゴンの背中に乗って「何も悪さをしていない鬼達が住む」鬼の国に着いた「桃太郎御一行」(料理人は?と聞かれたので、走って追いかけてると言った)は、まずドラゴンの炎のブレスで焼き払い、狼の背に乗った桃太郎は、聖剣エクスカリバーで鬼を真っ二つ、桃次郎のロケットパンチで翻弄、逃げる鬼達を桃子の聖なる光で軽々殲滅して、鬼の宝をゲット!と思いきや「こんなシケた物など我が王国には腐る程あるわ!」「あ~あ、つまんない。」「無駄足だったな。」と、金銀財宝は周辺国家に友好の証に献上するという建前で取りにこさせて…
え〜っと、あっ、そうそう!宝を取りに来たその周辺国家の兵隊が国にいない隙をついて国を強襲、「民を皆殺しにされたくなければ我が軍門に下れ!」と各王を脅して無理やり属国にした!合ってるはず!
王国に戻った桃太郎御一行は周辺国家を属国にし巨大国家を築き上げた英雄として、末代まで王国民に讃えられたと言う話。
めでたし、めでたし…。
ママは「やり切った!」ガッツポーズ!
「どう?面白かった?」笑顔でゆめを見るが
すでにゆめは、眠りについていた・・・。